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膀胱がん CT検査
膀胱壁の輪郭の滑らかさからがんの浸潤を見分ける
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
70歳の男性Eさん。突然、尿が真っ赤になって、近くの病院の泌尿器科外来を受診。尿検査と腹部エコー(超音波)を行い、膀胱がんの可能性が高いということで、国立がん研究センターを紹介された。内視鏡の1種である膀胱鏡による検査でがんが確認されたが、CT検査で比較的、初期のがんとわかった
サインで多いのは真っ赤な血尿
膀胱は、内側から粘膜、筋層、しょう膜の3層から成っています。膀胱にできるがんの約9割は粘膜から発生します。膀胱がんが見つかるきっかけとして多いのは、Eさんもそうでしたが、肉眼でもすぐわかるほどの真っ赤な血尿。痛みなどの自覚症状を伴わないことがほとんどで、連続して血尿が出るとも限らず、次に出るのは2~3カ月後ということも珍しくはないようです。
「血尿は、膀胱がんの初発症状としてよくあるものですが、特有の症状ではありません。腎結石や尿管結石、あるいはその他の疾患のほうが血尿の出る頻度は高い。そこで、Eさんのように血尿が受診のきっかけとなっている場合、原因を調べるために、画像検査の中では最も簡便で、外来でも行える腹部エコーを行い、併せて尿検査を行うのが一般的です」(森山さん)
腹部エコーは、腎臓や尿管などの形の異常を見る検査で、結石や腫瘍の有無を調べます。尿検査は、その成分を分析して病気を推測します。それとは別に、尿の中のがん細胞の有無を調べる検査=尿細胞診も行います。尿細胞診は、身体的負担はほとんどないので、膀胱がんを見分ける検査としてよく行われます。
膀胱鏡検査でがんと確定
それらの検査をした後、あるいはそれらの検査と併せて、よく行われるのが尿道を経由して膀胱にカメラを入れる膀胱鏡検査。検査は泌尿器科で行われます。
「膀胱鏡は膀胱の中をくまなく見ることができます。腫瘍があれば、大きさや発生部位、数、形状、周囲の粘膜の性状などを見て、がんかどうか、がんであればどんなタイプかなどを見ます。この検査を得意とする施設では、優先的にこの検査を行うこともあります」(森山さん)
Eさんもこの検査によって、膀胱がんの存在が確認されました。画像の観察で、がんであることはほぼわかったのですが、最終的には、膀胱鏡によって採取された病変組織を調べる病理検査によって、確定診断がなされたのです。
がんの存在が明らかになって次に行うのが、治療方針を決めるための検査で、がんの深さ、転移の有無を調べます。よく行われるのは以下のような画像検査です。
静脈より造影剤を入れ、造影剤が腎臓から排泄されるタイミングを狙ってエックス線撮影を行い、腎臓、尿管、膀胱の形状異常を見つけるのが尿路造影検査。
「尿路全体の形状異常の有無を、1度に見ることのできる有用な検査です」(森山さん)
がんの深さや浸潤の様子、近隣臓器への転移の有無を見るのに有用なのがCT、もしくはMRI検査。EさんはCT検査を行いました。画像中央の風船のような丸い影が膀胱です。
壁の外には浸潤していなかった
CT画像に写し出された多発性骨髄腫
「尿が溜まっていて、全体に黒っぽく写っていますが、向かって左側、膀胱内壁に沿って色が少し抜け、やや白っぽくなっている部分があります。これががんです。内壁に張り付いているように見え、厚い部分があったり、薄い部分があったりして不整形で、表在性の膀胱がんの特徴がよく現れています」(森山さん)
ただし、がんは膀胱の中に収まっていて、壁の外には浸潤していないようです。
「がんが壁の外に出ることを壁外浸潤といい、転移が起こる確率が高まり、治療は難しくなるのですが、この画像ではそれは認められません。壁外浸潤が起こっていると、輪郭のカーブはこのように滑らかではなくなります。どこかつっぱった感じになり、カーブもよく見ると、部分的にゴツゴツした感じになります」(森山さん)
その他の検査も併せて、Eさんの膀胱がんは初期と診断されました。そこで、膀胱鏡の映像を見ながらがんを削り取る経尿道的腫瘍切除が行われ、Eさんは1週間後に退院しました。膀胱を残せたので、排尿もほぼ元どおりに行えるようになり、再発もなく、今でも元気に暮らしています。
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