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腎盂がん CT&エックス線造影検査
造影剤を入れたCT検査で黒い影があればがんを疑う

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
発行:2010年11月
更新:2013年4月

  
森山紀之さん

もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断

患者プロフィール
50歳の女性Wさん。トイレで尿がうっすらと赤いことに気付く。血が混じっているように思えたため、近くの泌尿器科を受診すると、がんの疑いがあるということで、国立がん研究センター(現国立がん研究センター)を紹介された。CT検査や造影剤を入れるエックス線検査、および細胞診で、泌尿器系のがんでは割と少ない腎盂がんであることが判明した。

自覚症状で多いのは薄い赤色の血尿

腎盂は腎臓で作られた尿を集めて、尿管に流す尿路の始まりの部分です。位置としては腎臓の中心部にあって、漏斗状に腎臓とつながっています。腎臓と尿管の橋渡しをする部分といってよいでしょう。

「腎盂にできるがんの自覚症状としては、血尿が多いのですが、膀胱がんのように真っ赤になることは少なく、尿で薄められるため、たいていは薄い赤色です。痛みなど顕著な症状は出ないことが多いですね」(森山さん)

Wさんが近くの泌尿器科で最初に行ったのは腹部超音波検査。外来で行える簡便な画像検査で、腎盂に腫瘍らしきものがありました。

国立がん研究センターでは、まず尿を採ってがん細胞の有無を調べる尿細胞診検査をしたのですが、1回目では見つかりませんでした。

「こうしたことはよくあり、結局、3回目の尿細胞診でがん細胞が見つかりました」(森山さん)

初回の診察時にはCT検査も行ったのですが、こちらにははっきりとしたがんの所見がありました。

ちなみに、CTやMRIなどの検査機器がない医療施設では、内視鏡検査が行われることがあります。尿道から内視鏡を入れ、病気のある側の尿管口を見ると、血尿の排泄が見られることがあり、その場合、その上流に病変があることが確認できます。さらに、尿管口から細い尿管鏡を入れて、腎盂や尿管を直接観察することも可能です。腎盂がんでは膀胱がんを併発することも多いので、その有無を内視鏡で確認できるメリットもあります。

排泄性腎盂造影という検査を行う場合もあります。この検査では、静脈に造影剤を注射し、腎臓で濾過されて排泄されるころあいを見計らって、5分おきにエックス線撮影をします。病変を撮影するのと併せて、造影剤の排泄の具合によって、病変による尿路の狭窄の程度も知ることができます。

尿路がふさがれて造影剤が行かない

さて、WさんのCT検査画像をご覧ください。このCT画像も静脈から造影剤を入れて撮影されました。脊椎の左右に腎臓があります。向かって左側が右の腎臓、右側が左の腎臓です。

「右の腎臓は造影剤によって真っ白になっています。しかし、左の腎臓では2カ所が黒くなっているのがよくわかります。そこが腎盂なのですが、病変によって尿路がふさがれて、造影剤がそこには行かないので黒く写っているのです。あたかも臓器が欠けたように見えるので、これを欠損像と私たちは呼びます。造影検査によるこの欠損像は、がんを疑う有力な特徴の1つです」(森山さん)

森山さんは「強いていえば、見分けなければならない影もある」と言います。

「がん以外の疾患によって起こる出血により、血の塊が腎盂に溜まることがあります。それも黒く写るのですが、影の位置や不整形な輪郭の形状からして、その可能性は低いと見るのが普通です」(森山さん)

CT検査画像
CT画像に写し出された腎盂がん
CT検査画像解説図

尿管も含め広い範囲を写せる造影エックス線検査

もう1つの検査画像は逆行性腎盂造影検査によるものです。尿道から膀胱鏡を入れ、その画像を見ながら尿管口より腎盂に向けて細いチューブを挿入。造影剤を注入してエックス線撮影をします。排泄性腎盂造影検査よりも鮮明に病変を撮影できます。

「点線で囲んだ部分が腫瘍ですが、このエックス線撮影では造影剤が黒く写っており、病変部は白っぽく写ります。この検査とCT検査の結果も併せて見ると、影の位置や形状から、がんであることが、ほぼ確定的です」(森山さん)

この検査のあとに3回目の尿細胞診でもがん細胞が見つかりました。これらの検査結果を受けて、治療方針は左の腎臓と腎盂、尿路を全部切り取る手術と決まりました。患者の立場からすれば、「腎盂だけを取って腎臓や尿路は温存できないのだろうか」という疑問が生じがちなのですが、尿路系に発生するがんは再発しやすいので、経路の臓器は全摘するのが基本だそうです。それでも、もう一方の腎臓や尿路が残されているので、日常生活には支障はありません。Wさんも元気に暮らしているそうです。

逆行性腎盂造影検査画像
逆行性腎盂造影検査でもがんが写し出された
逆行性腎盂造影検査画像解説図


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