鎌田 實「がんばらない&あきらめない」対談
こちらの世界だけで 考えているからつらくなる 矢作直樹 × 鎌田 實
東大病院救急医療のトップが語る「人は死なない」ということ
日本の救急医療の最前線をリードする東京大学病院で、救急医療の責任者として活躍している矢作直樹さんは、「魂と向き合う臨床医」として知る人ぞ知る存在だ。霊魂とのつながりの重要性を説く本も相次いで出している。最近、医療とスピリチュアルなものとの関係にも着目している鎌田實さんと語り合ってもらった。
1956年、神奈川県生まれ。1981年 金沢大学医学部卒業。その後、麻酔科を皮切りに救急・集中治療、外科、内科、手術部などを経て、1999年 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻及び工学部精密機械工学科教授、現在、東京大学大学院医学系研究科・救急医学講座教授及び医学部附属病院救急部・集中治療部部長。主な著書に『人は死なない』(バジリコ)『天皇』(扶桑社)『ご縁とお役目』(ワニブックス)『いのちが喜ぶ生き方』(青春出版社)など
1948年、東京に生まれる。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。長野県茅野市の諏訪中央病院院長を経て、現在諏訪中央病院名誉院長。がん末期患者、高齢者への24時間体制の訪問看護など、地域に密着した医療に取り組んできた。著書『がんばらない』『あきらめない』(共に集英社)がベストセラーに。近著に『がんに負けない、あきらめないコツ』『幸せさがし』(共に朝日新聞社)『鎌田實のしあわせ介護』(中央法規出版)『超ホスピタリティ』(PHP研究所)『旅、あきらめない』(講談社)等多数
小学校に入る前から 霊魂の存在を感じた
鎌田 矢作さんの最新著『いのちが喜ぶ生き方』(青春出版社)の中に、「悩みを解決する最も有効な手段は『霊性を理解すること』です。霊性とは、見えない存在や見えない世界とのつながりを感じることであると、私は解釈しています」と書いてあります。
私はこの10年間、がんとの闘いにチャレンジしながらも、心に深い悩みを抱えているがん患者さんたちの苦悩を少しでも軽減できないだろうかと考えながら、この対談を続けてきました。矢作さんの言葉に接して感じたのは、私は長年地域医療に携わり、人間のヨコのつながりを大切にしてきましたが、それとは別に、人間には父母、祖父母をはじめとする、ご先祖からのタテの流れの中で生かされている部分もあるということです。そのタテのつながりを意識することによって、がん患者さんの悩みを少しは軽減できるかもしれない。そう考えてどこかラクになった自分がいます。矢作さんはどのようにしてそういうことに気づかれたのですか。
矢作 実は、私は小学校に上がる前から、人間が生まれて死ぬというのは、世界の面がいくつもある中の1つの面の出来事で、死ぬことはその面の出口から出て、別の面に行くようなものではないのかという感じを、直観として持っていました。そして、こっちの世界はこっちではない世界と合わせ鏡のようになっているのでは、と考えていました。さらに、祖霊とのつながり、すなわち祖先との肉体的なつながりと、魂としての転生といったことも、直観的に感じていました。
鎌田 へぇーっ、小学校へ入る前から、そんなことを考えていた!
矢作 はい(微笑)。私の弟は昨年9月にがんで亡くなりましたが、そういうことをまったく信じない人間でした。ただ、弟は大学のとき競技スキーをやっていて、滑降の事故で頭を打ち、3日間ほど昏睡状態だった経験をしており、死ぬことに恐怖感は持っていなかったのですが、若い奥さんとふたり暮らしでしたから、若い奥さんを1人残して逝くことは気に掛けていました。
弟が亡くなる前、霊的に非常に優れた私の友人に、奥さんのことを心配している弟のことを話したところ、「全然心配ないよ」って言われました。なぜそんなことが言えるのかと思ったら、弟が死んだ後のことを正確に予知していたんです。「弟さんは亡くなったあと、非常に例外的なことだが、奥さんの守護霊として高級霊に認められますよ。そうなれば、奥さんは死んだ弟さんと話ができるようになります」と言うんです。
亡くなった弟の魂と 奥さんは会話できた
鎌田 まるで映画の『ゴースト』ですね。
矢作 それから『シックスセンス』ですね。実際、奥さんは弟が死んで1週間後、亡くなった弟と話ができるようになり、精神的なショックからも立ち直って、早々に職場復帰できました。
鎌田 亡くなったご主人と話ができたことによって、奥さんは魂がつながっていることを実感されたんでしょうね。
矢作 肉体はなくなったけれど、精神的につながっていることがわかったんですね。電話で話して癒やされるという感じかもしれません。
鎌田 どうしてそういうことが起こるんですか。
矢作 やはり魂の働きだと思います。それと魂への気づきでしょうか。
鎌田 奥さんの側にその力があった。
矢作 奥さんは霊的な関心はなかったようですが、夫への思いは強かった。その思いが弟の魂と同調したんでしょうね。
鎌田 奥さんは、矢作さんの友人の霊能力のある人の予言を聞かされていたんですか。
矢作 いや、言ってません。
鎌田 言ってない!
矢作 これはそれほど驚くべきことでもありません。高次元というのは夜空を見るようなものです。月のようにごく近くから光が届くものもあれば、アンドロメダのように何億光年もの向こうから光が来るものもある。私たちはそれを同時に見ているわけです。霊とのつながりもそんなもので、時間に関係なく見ようと思えばわかるのでしょう。この世の中には降霊とか憑依といった、肉体を持っていない魂と接する現象がいろいろ起きますが、それは私たちにとって決して不思議なことではありません。
鎌田 今対談している場所は東京大学病院の中で、矢作さんはここで救急医療の最高責任者として仕事をされている。その立場でそういう話って、言いづらくはないですか(笑)。
矢作 まったく。だって、真理って周りにまったく関係ないですから。魔女狩りの時代じゃありませんし(笑)。
鎌田 3年前にベストセラー『人は死なない』(バジリコ)を出されていますが、東大病院内で「エエッ!」って言われなかったですか(笑)。
矢作 何も言われませんね。霊魂の存在などは、古来、日本人がみんな心の中で思っていたことでしょうし、実際に体験されている人も少なくないわけですから。誰の迷惑にもならない程度に昔の人たちは知っていましたよね、というところから入れば、なんてことないですよね(笑)。
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