濾胞がんの疑い。今後の治療法と転移の可能性は?

回答者・杉谷 巌
日本医科大学付属病院内分泌外科部長
発行:2015年7月
更新:2015年10月

  

2年前、頸にしこりがあり受診したところ、甲状腺の右葉に結節が見つかり、超音波検査と細胞診の結果「濾胞腺腫でしょう」と言われ、経過観察となりました。ところが今年に入って、別の病院を受診したところ、「3.3cmの濾胞がんの可能性がある」と診断されました。今後の治療法と転移の可能性について教えてください。

(54歳 女性 東京都)

診断も兼ねて手術を。病理検査の結果で予後が異なる

日本医科大学付属病院
内分泌外科部長の杉谷 巌さん

濾胞がんは全甲状腺がんの約5%程度の頻度でみられます。甲状腺がんの多くは超音波検査や細胞診を用いて診断が可能ですが、濾胞がんは判定が容易ではありません。細胞だけを見ても良性の腫瘍(濾胞腺腫)と区別することが難しく、実際にしこりを摘出して顕微鏡で検査をしないと判断がつかないことがあるのです。ただ、細胞の様子や超音波検査による腫瘍の形態や血流の程度、弾性の評価から、良性か悪性かの見当をつけられるケースもあります。

ご相談者の場合、濾胞がんの可能性があるということですので、診断も兼ねて手術で右葉を切除されたほうがよいと思います。術後に腫瘍を顕微鏡で見て、腫瘍の縁が完全に被膜に含まれていた場合は腺腫で、被膜が破れていたり(被膜浸潤)、その中にある血管に腫瘍細胞が入り込んでいたりする(脈管侵襲)場合はがんと診断されます。

さらに濾胞がんであった場合は、軽度の被膜浸潤が存在する「微少浸潤型」と、被膜浸潤や脈管侵襲が広い範囲に存在する「広汎浸潤型」のどちらに属するかを判定します。

広汎浸潤型は微少浸潤型よりも血行性の転移を起こしやすいと言われているので、この場合は手術で残りの甲状腺を全摘出して、放射性ヨウ素内用療法を行います。放射性ヨウ素内用療法とは、甲状腺がヨウ素を取り込む性質を持つことを利用した治療法で、1-131と呼ばれる放射能(ベータ線)を放出するヨウ素のカプセルを内服することにより、体の内部から病変に放射線を照射します。

微少浸潤型であった場合は、腫瘍をきちんと切除していれば完治する可能性が高いため、経過観察となります。

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