断端陽性だった場合、再手術は必要か
今年(2015年)の8月に乳房温存術を受けました。がんの大きさは1.4㎝、リンパ節転移なし、ER100%、PgR100%、HER2陰性、断端陽性で乳管内進展で3カ所あり、すべて非浸潤がんで断端から5㎜以内の場所にあるとのこと。主治医は術後の補助療法として、再手術は行わず、ホルモン療法と放射線の追加照射を行うとのことです。再手術をしなくても、再発を防げるのでしょうか。
(55歳 女性 千葉県)
A 断端陽性なら追加再切除が原則。セカンドオピニオンも
上野貴史さん
断端陽性の場合は追加再切除するのが大原則です。ただ、断端陽性をどのように判断しているかが施設によりまちまちなのが問題です。例えば、5㎜以上の幅がなければ断端陽性とする施設もあれば、1㎜でも幅があれば断端陰性とする施設もあり、本邦では病理医の考え方により分かれているのが現状です。
2014年の米国臨床腫瘍学会学術集会(ASCO2014)で、切除マージンの評価方法について見解が発表され、「表面にインクをつけて標本を作製したときに、がん細胞にインクが付いていなければ断端陰性とみなす=inked margin(−)」というのがスタンダードになっています。断端まで1㎜あろうが5㎜あろうが局所再発率には差がないとされ、inked margin陰性でありさえすれば、ギリギリであってもよいとされます。
質問者の場合、5㎜以内にがん細胞があるとされ断端陽性とされていますが、inked marginは陰性であったかもしれません。しかし再検査するわけにはいかず、結果はわからないので、やはり再切除するのが安全でしょう。3カ所陽性とされたとのことで、乳管内進展があるタイプと思われることからも再切除が勧められます。
手術はいきなり全摘ではなく、まずは部分切除を行います。2回追加切除をしても断端陰性が得られなかった場合に全摘術に変更するのが標準とされます。米国では温存手術を受けた症例の4分の1は追加切除をすると言われています。
断端が陽性なのにもかかわらず追加切除しないというのは、特別な理由がなければ通常あり得ません。担当医に詳しく説明をしてもらうか、ほかの医療機関でセカンドオピニオンを求めることもよいでしょう。