甲状腺乳頭がん再発、手術はできないと言われたが

回答者●杉谷 巌
日本医科大学大学院内分泌外科教授
発行:2019年11月
更新:2019年11月

  

2013年甲状腺乳頭がんと診断され、甲状腺全摘の手術をしました。術後アブレーション治療(残存甲状腺組織の除去)を1度受けています。定期的に検査を受けていましたが今回のCT検査の結果、再発頸部転移と告知されました。気管内に浸潤しているとのことです。その後、放射性ヨード治療を入院隔離で受けましたが、効果はありませんでした。現在、血痰も出ています。

胸の奥の気管に浸潤しているため、主治医から「手術はできない、年齢的にも高齢なので抗がん薬治療も勧められない」と緩和医療(緩和ケア)を勧められました。

このまま、気管内の腫瘍が大きくなって息ができなくなるまで、為す術はないのでしょうか。何か他の治療があればお教えいただけないでしょうか。

(83歳 女性 千葉県)

部位や程度によって手術が可能な場合もある

日本医科大学大学院
内分泌外科教授の杉谷 巌さん

甲状腺全摘手術後の放射性ヨウ素によるアブレーション治療は、再発リスクが高いと思われる患者さんに対して行われる治療です。手術後にわずかに遺残する甲状腺組織を放射能によって、殲滅(せんめつ)することで、血液検査(サイログロブリン測定)で再発がわかりやすくなるという利点があります。残念ながら再発してしまった場合には、大量の放射性ヨウ素による治療が行われることがあります。しかしながら、あまり効かないことも多く、とくに高齢者の場合は有効性が低いと言われています。

「手術はできない」と言われたとのことですが、乳頭がんの気管浸潤の場合、その部位や程度によっては、全身状態(PS)さえよければ、手術が可能な場合もあります。ただし、喉頭切除(こうとうせつじょ)や永久気管孔が必要となるかもしれません。

放射性ヨウ素が効かず、手術もできない場合、最近では分子標的薬治療を考慮します。しかし、血痰が出ている状態で分子標的薬を使うと大出血する可能性もあるので、きわめて慎重な対応が必要になります。

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