進行別 がん標準治療
再発予防にはBCG注入療法が有効。膀胱温存の道も広がってきた
静岡県立静岡がんセンター病院長の鳶巣賢一さん
膀胱はオシッコをためたり出したりする袋状の臓器です。
膀胱は、ふだんは収縮しているが尿がたまると伸び、伸縮性に富んでいる独特の組織です。
膀胱の一番内側の層は、粘膜上皮層と呼ばれ、ここにがんができることが多く、尿路上皮がんと呼ばれます。
内視鏡による治療が中心ですが、再発が多いのが難点で、それをいかに防ぐかが治療のポイントです。
最近では浸潤の進んだがんでも膀胱を温存する治療法も盛んに研究が行われています。
形態で性質が大きく異なる
膀胱がんは、若い人に発生することもありますが、基本的には40歳以降、60~70歳代が好発年齢といわれ、男性が女性の3倍ほど多いのが特徴です。年間の罹患数は1万2千人ほど(1996年、『がん診療レジデントマニュアル』より)と推測され、それほど頻度の高いがんではありませんが、人口の高齢化などを背景に、日本でも増えつつあるがんです。
一般的には、とくに症状はなく、肉眼的に見える血尿で発見される人がほとんどです。稀に、検診などで顕微鏡的にわかる血尿から発見される人もありますが、これはごく少数です。ただし、静岡県立静岡がんセンター病院長の鳶巣賢一さんによると、「膀胱がんのタイプの1つに上皮内がんというのがあるのですが、この場合は頑固に続く膀胱炎症状から見つかることが多い」といいます。排尿時の痛みや膀胱に尿が溜まると痛みを感じる、淡いピンク色の血尿が出るといった症状が頑固に続き、その原因を調べた結果、膀胱がんが見つかることがあるのです。
膀胱がんの特徴は、そのタイプによってがんとしての性質がかなり異なることです。「膀胱がんでも表在性のおとなしいタイプは、大腸がんや胃がんなど、治りやすいがんに匹敵します。しかし、筋層に入り込んだ浸潤性のがんは、難治性といわれる肺がんに匹敵します。同じ膀胱がんでも雲泥の差があるのです」と、鳶巣さんは語っています。
膀胱壁は、内側から粘膜上皮(移行上皮)、粘膜下層(粘膜固有層)、筋層からなり、その外側は脂肪の層でくるまれています。このうち、粘膜下層までにとどまるがんが、「表在性」のがんです。筋層にがんが食い込むと「浸潤性」と呼ばれます。この表在性か浸潤性かで、治療の方法も大きく異なり、またがんとしての悪性度も異なってくるのです。
形態から推定できるがんの悪性度
膀胱がんの9割以上は、膀胱や尿道をおおう粘膜上皮から発生する尿路上皮がんです。ごく一部(3~5パーセント)に腺がんや扁平上皮がんがあります。これらの稀なタイプが「純粋に独立した形で存在することもありますが、実際には尿路上皮がんに腺がんや扁平上皮がんが混じって存在していることが多い」そうです。
膀胱がんの特徴ともいえるのは、その形と悪性度やがんの深さがかなり相関していることです。わかりやすくいえば、その見た目からがんとしてのタチがかなり推測できるのです。
膀胱がんのほとんどは、膀胱の内腔に隆起して突出しているのですが、例外ともいえるのが上皮内がんです。これは、粘膜上皮に「カビがはえるように扁平に広がったがんで、内視鏡でみると赤く粘膜がかぶれて分厚くなっている」といいます。分類的には表在がんに入りますが、実際には悪性度の高いがんです。膀胱がんでは、がんの悪性度をグレード1~3までに分けています。一番おとなしいのがグレード1、悪性度が高くタチが悪いのがグレード3、その中間がグレード2です。上皮内がんは、グレード3のがん細胞が中心なのです。そのまま放置すると浸潤がんになることが多いがんです。
といっても、上皮内がんは特殊ながんで、膀胱がん全体の10~15パーセント程度です。膀胱炎症状を現すことがあるのも、このタイプのがんだけです。
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