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免疫チェックポイント阻害薬や抗体薬物複合体の登場で急激に変わった進行膀胱がん(尿路上皮がん)の薬物治療

監修●小林 恭 京都大学大学院医学研究科泌尿器科学教授
取材・文●半沢裕子
発行:2023年1月
更新:2023年1月

  

「パドセブは3次治療にかかわらず奏効率が40%もあり、現在1次治療の化学療法との比較試験が行われています。2、3年先には結果が出るでしょう」と語る
小林恭さん

長い間、化学療法以外の治療法がなく、進行・再発がんには打つ手が非常に限られていた膀胱がん(尿路上皮がん)。

2017年12月、免疫チェックポイント阻害薬の保険適用を皮切りに、2021年には新たに2剤が承認され、今日、その状況は急激に変わりました。そこで、京都大学大学院医学研究科泌尿器科教授の小林恭(たかし)さんに、膀胱がん治療の最新治療と今後の可能性について伺いました。

尿路上皮がんの90%を占める膀胱がん

腎臓でつくられた尿は腎盂(じんう)から尿管を通って膀胱に運ばれ、尿道から排出されます。この尿の通り道を尿路と言い、そのほとんどは尿路上皮という粘膜で覆われています。その尿路上皮にできるがんを「尿路上皮がん」と呼び、最も発生頻度が高いのが膀胱がんで、尿路上皮がんの90%を占めています。

膀胱がんの病期は、がんの深達度(がんが組織のどのくらい深くまで達しているか)と、どの程度周囲に及んでいるかにより0期~Ⅳ期に分けられます。「進行した膀胱がん」とは主に、他臓器への転移のあるⅣ期や、Ⅱ~Ⅲ期で膀胱全摘術を受けたのちに再発・転移した症例を指し、「切除不能な膀胱がん(尿路上皮がん)」という言い方をすることが多いです(図1)。

進行・再発した場合どのような治療を行いますか?

基本は薬物による治療(薬物療法)です。最初(1次治療)に使われるのは抗がん薬で、化学療法と呼ばれることもあります。プラチナ系抗がん薬を含むレジメン(薬物の用量、用法、治療期間を明記した治療計画)で、現在最もよく使われているのはジェムザール (一般名ゲムシタビン)と シスプラチン(一般名)を併用したGC療法です。腎機能が悪くシスプラチンが使えない患者さんには、副作用が少ないパラプラチン(一般名カルボプラチン)を使います。

また、メソトレキセート(一般名メトトレキサート)、エクザール(一般名ビンブラスチン)、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)とシスプラチンを組み合わせたM-VAC療法も使われます。

プラチナ系抗がん薬を中心としたレジメンが使われ始めたのは1990年代と、今から30年近く前のことです。先に広く使われたのはM-VAC療法でしたが、2000年代初頭に2つの薬物療法を比較する臨床試験が行われ、生存率はほぼ同じという結果が出ました。しかし、GC療法のほうが、副作用が少なかったことから1次療法の中心になりました。

とはいえ、どちらの薬物療法も2年生存率は20%程度で、当初効いてもすぐに治療抵抗性を獲得してしまいます。問題はそのような患者さんに対して、2次治療として生存期間を延長する治療法が長い間なかったことでした。そのきびしい状況を打破したのが、2017年の免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)でした。

キイトルーダは、尿路上皮がんに対しては国際共同第Ⅲ相試験の「KEYNOTE-045試験」の結果を受けて、2017年12月に「化学療法後に増悪した切除不能な尿路上皮がん」に対し承認されました。GC療法およびM-VAC療法が1次治療薬として登場してから30年近くたって、やっと「そのあと」に使える治療が確立されたのです。非常に画期的なことでした(図2)。

ちなみに米国では、シスプラチンに不耐容なため化学療法が行えていない患者さんを対象にした第Ⅱ相試験「KEYNOTE-052」の結果を受けて、「シスプラチンを含む化学療法に不耐容な局所進行または転移性の尿路上皮がん患者に対する1次治療」でも承認を得ています。

キイトルーダに続いて承認されたバベンチオの使い方は?

バベンチオ(一般名アベルマブ)は、キイトルーダと同じ免疫チェックポイント阻害薬ですが、作用機序が少し異なります。

がん細胞は、免疫細胞(T細胞)の攻撃から逃れるためPD-L1というタンパク質を出します。これが免疫細胞の出しているPD-1に結合すると、免疫細胞の働きが抑制されてしまいます。

キイトルーダ(抗PD-1抗体)は、免疫細胞(PD-1)に結合し、免疫細胞の働きが抑制されないようにする薬です。一方、バベンチオ(抗PD-L1抗体)は逆にがん細胞(PD-L1)に結合し、免疫細胞の働きが抑制されないようにする作用があります。

バベンチオはその使い方に特徴があります。キイトルーダが1次治療の化学療法のあとに進行してきた場合に2次治療として使うのに対し、バベンチオは、1次治療の化学療法が効いているうちに切り替え、維持療法として使います。

化学療法を4~6コース行い、病勢がコントロールされている患者さんに対してバベンチオに切り替えることで 、これまで化学療法を続けていくとすぐ抵抗性を獲得してしまうことが多かったケースで、治療効果が維持されるのです。

こうした使い方を「スイッチ・メンテナンス」と言い、2021年2月に「切除不能な尿路上皮がんにおける化学療法後の維持療法」として承認されました。

承認のもとになったのは進行尿路上皮がんを対象とした国際共同第Ⅲ相試験の「JAVELIN Bladder 100試験」で、「プラチナ系抗がん薬を含む1次化学療法でがんの進行が認められない、局所進行または転移性の尿路上皮がん」の患者さんを対象に、BSC(ベストサポーティブケア:支持療法)単独群と、BSC+バベンチオ群を比較したものでした。結果は全生存期間(OS)がBSC群で14.3カ月、バベンチオとの併用群が21.4カ月と、有意な差が認められています。

バベンチオは、化学療法に抵抗性を獲得してしまった患者さんには使えません。化学療法に抵抗性を獲得してしまった患者さんにはキイトルーダを使うのが標準治療になっています。

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