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肝がんの病診連携:東葛北部肝炎・肝がん診療連携講演会 変わる肝炎、肝がんの治療。新薬の登場がブレークスルーに

監修●三上 繁 キッコーマン総合病院院長代理/診療部長
監修●池田公史 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科科長
構成●七宮 充
発行:2013年1月
更新:2020年1月

  
東葛北部肝炎・肝がん診療連携講演会

肝がんの主因はC型肝炎とB型肝炎です。しかし、優れた薬剤の導入で、これらウイルス性肝炎の治療成績は飛躍的に向上している。また、難敵だった進行肝がんの治療も、分子標的薬の登場によって大きく変わろうとしている。先ごろ医療関係者を対象に千葉で行われた「東葛北部肝炎・肝がん診療連携講演会」では、こうした肝炎、肝がんの最新事情が紹介された。

肝がんの主因はC型、B型肝炎

三上繁さん

地域の医療機関が連携し、肝がんの早期発見が大切という三上さん

最初にキッコーマン総合病院院長代理、診療部長の三上繁さんが「肝がんの側面からみた最適な肝炎治療とは」と題して講演しました。

現在、わが国では1年に約3万5,000人が肝がんで亡くなっています。これは、肺がん、胃がん、大腸がんに次いで第4位です。主因はC型肝炎とB型肝炎。なかでも多いのがC型肝炎で、肝がん(肝細胞がん)の原因の約68%を占めています(図1)。

C型肝炎にかかっても、多くの人は症状に乏しく、感染したことに気づかないことが少なくありません。しかし治療せずに放置しておくと、肝硬変、肝がんへと進行していきます(図2)。

[図1 肝細胞がんの原因] 図1 肝細胞がんの原因第18回全国原発性肝癌追跡調査報告より 約17%:その他(アルコール性肝炎・アフラトキシン曝露、非アルコール性脂肪性肝疾患など)

これまで、その進行はゆっくりで、感染してから肝硬変になるまで約30年と考えられていました。しかし最近の研究で、高齢で感染した人は、若い人に比べ進展が早いことがわかってきたといいます。

こうした進展を食い止めるには、早期発見が重要です。C型肝炎に感染しているかどうかは、血液検査で簡単にわかります。もし感染していた場合には、肝臓がどの程度障害を受けているかを調べます。以前は肝臓に針を刺して、組織を採取する「生検」という方法しかありませんでしたが、最近は超音波を利用した画像検査でチェックできるようになっています。

「何より大切なのは早期発見。40歳以上で、これまでC型、B型のウイルス検査を受けたことがないような人は、ぜひ検査してほしい。それが、肝がんの予防につながる」三上さんはこう強調します。

[図2 C型慢性肝炎の自然経過] 図2 C型慢性肝炎の自然経過C型肝炎は、C型肝炎ウイルスの感染により肝臓に障害が起こる病気です。自覚症状に乏しく、感染している本人も気づかないことが多いのですが、治療しないで放っておくと肝硬変、肝がんに進行する確率が高くなります。病気の進行を食い止めるためにも、早期発見・早期治療が大切です

C型肝炎は治る時代へ

一方、C型肝炎の治療はインターフェロンが中心です。インターフェロンは1992年に認可されました。ただ、インターフェロンの効果はウイルスの遺伝子型やウイルス量によって異なります。C型肝炎ウイルスは1型(1a、1b)、2型(2a、2b)に分けられます。インターフェロンは2型には有効ですが、日本人に多い1型、とくにウイルス量の多い1b型にはほとんど効きません。これが長い間の課題でしたが、インターフェロンの改良型である「ペグインターフェロン」が登場。これに、インターフェロンの効果を増強するリバビリン()という薬剤を併用することが2004年より可能となったことから治療成績は飛躍的に進歩しました。

さらに、2011年には「テラプレビル()」(プロテアーゼ阻害薬)という飲み薬が、保険適応となりました。C型肝炎ウイルスが増えるにはプロテアーゼと呼ばれる酵素が必要です。テラプレビルはこの酵素の働きを邪魔して、ウイルスの増殖を阻みます。

最近の報告によると、ペグインターフェロン、リバビリンにテラプレビルを併用することで、ウイルス量が多く難敵だった1b型でも、約7割でウイルスを排除できるようになったといいます。

加えて、プロテアーゼ阻害薬とは仕組みの違う内服薬の開発も進んでおり、三上さんは「いずれ、内服薬だけでC型肝炎を治せる時代がやってくるだろう」と近い将来を展望しました。

リバビリン=商品名レベトール
テラプレビル=商品名テラビック錠

B型肝炎でも薬が効き続けるように

もう1つ、肝がんの大きなリスクとなるのがB型肝炎です。C型肝炎と同様、血液中のウイルス量が多いと肝硬変、肝がんへ進行しやすいことがわかっています。治療にはインターフェロンも用いられますが、柱となっているのは、「核酸アナログ製剤」と呼ばれる薬剤です。ただ、核酸アナログ製剤はB型肝炎ウイルスを減らすものの、体内から完全に排除することはできません。また、中断すると再びウイルスが増えるため、ずっと服用し続ける必要があります。さらに大きな問題は、飲んでいるうちに耐性化し、薬が効かなくなることです。最初に開発されたラミブジンという薬剤では5年で約70%の確率で耐性ウイルスが出現していました。しかし、研究が重ねられた結果、2006年に認可されたエンテカビルという薬剤では、耐性率が5%以下に低下。現在治験中のテノホビルという新薬ではさらに優れた成績が得られているということです(図3)。

[図3 核酸アナログ製剤のHBV耐性出現率] 図3 核酸アナログ製剤のHBV耐性出現率EASL Clinical Practice Guidelines : Management of chronic hepatitis B より改変

こうしたデータを示した上で、三上さんは、C型肝炎、B型肝炎から肝硬変、肝がんへの進行を防ぐには、「まず肝炎ウイルス検査を受けてもらうこと。そして、リスクが高い方は、適切な肝炎治療を実施し、定期的に画像検査を行うことが大事」と指摘。さらに「自分の施設でできない画像検査については、地域の医療機関と連携し、肝がんの早期発見に努めてほしい」と述べ、話を締めくくりました。


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