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がん治療最前線の米国で治療を受けるための手順と留意点
あなたが米国の病院で先端がん治療を受けることを望むなら
アメリカはがん治療の分野で最先端を走っている。日本で使えない抗がん剤や外科手術の実績の数や放射線治療にも秀でている。
さらに、ドクターを中心にナースや麻酔医などのチーム医療も日本よりも進んでいる。
MDアンダーソンを始めアメリカで先端がん治療を受けることを望むなら、患者はどのようにすればいいのだろうか。
そのサポートをする2つの法人を取材し、そのシステムを聞いた―
海外からの患者受け入れ体制も整うMDアンダーソンがんセンター
MDアンダーソンがんセンター
アメリカ・テキサス州ヒューストンにある、テキサス・メディカルセンター内のMDアンダーソンがんセンター(以下、MDアンダーソン)は、各国から患者さんが集まる世界有数のがん専門病院である。
MDアンダーソンには、海外からの患者をサポートするため「国際部」が設けられており、通訳の派遣をはじめ、新規予約の手続き、宿泊施設や送迎の手配、ビザ取得に関する情報提供などのサービスを提供している。
またMDアンダーソンを拠点に、日本人を援助する法人「メディエゾン・テキサス」(以下、メディエゾン)の協力を得ることも可能だ。その支援内容は、診察・検査の付き添いはもちろん、病院内に限らず、航空券やホテルの予約代行、出入国時の空港への同行、日常の買い物・観光の手伝いなど渡米前後の生活広範にわたるもので、治療に専念できる環境づくりを担っている。
セカンドオピニオン取得にはふさわしい時期がある
「メディエゾン・テキサス」代表の
上野美和さん
渡米に至らなかった例も含めて、これまでに100人以上の日本人患者・家族の相談に乗ってきたメディエゾン代表・上野美和さんによると「日本で治療をやりつくして、ほかに方法がないと言われたからセカンドオピニオンを受けたい」と、渡米を希望する人も多いという。
上野さんは「そのようなとき患者さんは心身ともにまいっている状態で、適切な判断ができるとは思えません。できればセカンドオピニオンは診断が出たときに受けるのが望ましいでしょう。どうしても日本で受けられない治療を選ぶ場合以外は、セカンドオピニオンのために渡米し、治療は日本でという手順で進めるのがおすすめです」と話す。
では、実際にエディメゾンのサポートを受けて、MDアンダーソンでセカンドオピニオンを取得する過程を紹介しよう。
セカンドオピニオン取得の流れ
(1)受診予約を入れる
はじめにMDアンダーソンで受け入れ可能かどうかを調べなければならない。この時点で、治療歴のレポート、検査データなどが必要となる。MDアンダーソンへ国際電話をかけて受診希望の旨を申し出ると、照会用紙がEメールかFAXで送付されるので、これに本人か主治医、または代理人が記入して返送する。メディエゾンを代理人とした場合、患者さんはメディエゾン独自のメディカルフォームに日本語で書き込めば、それを元にMDアンダーソンの照会用紙への記入をメディエゾンが代行(英訳)してくれる。
照会用紙の提出後、病院からの回答はメディエゾンによって翻訳される。受け入れ可能であれば診察予約日の連絡があるのだが、上野さんの経験では、初回受診が10日後という早い場合からかなり先になることもあり、科や時期でばらつきがあるという。予約日に渡米の都合がつかないときは、メディエゾンが病院と調整をはかる。
受け入れがOKとなった段階で、放射線画像や病理のスライドなどの現物を用意しておく。
(2)渡米し、該当科医師による初診を受ける
初回の診察は、今までの治療内容や経過、必要な検査についての話が中心。病院の医療通訳が同伴し、メディエゾンのスタッフも立ちあう。日本から持ち込んだ資料をMDアンダーソンの専門医らが検討し、初回診察から1週間前後でその結果が出される。
(3)2回目の診察を受ける
医師から診断の結果と、可能な治療法について提示される。詳しい説明を受け、患者さんは自分のライフスタイルや人生観までも含めて考慮しつつ、どのような治療を望むのかを医師に伝える。じっくりと話し合い、患者さん自身が納得して治療法を選ぶ。
(4)結果を受け取り帰国または現地で治療
日本でも行える治療を選択したら、診断結果や今後の治療方針のレポートを受け取り、帰国する。MDアンダーソンでの治療を希望した場合は、3カ月を目安にした治療スケジュールが組まれる。
さらに帰国後の治療について、日本の主治医とMDアンダーソンの医師がやりとりできるよう、メディエゾンがその連絡業務を請け負う。フォローアップシステムが整えられているのは患者さんにとっても心強い。
滞在期間と気になる費用は?
そのような流れでかかる期間は約2週間。MDアンダーソンではビザの取得が奨励されているが、米国には90日間までビザなしで滞在できる。予約日が近いときは間に合わないことがあるし、セカンドオピニオンだけなら2週間程度なので、現実的にいえば不要だという。
気になる費用だが、病院から前金としてまず1万~1万5千ドル請求される。しかしセカンドオピニオン取得にかかる医療費は5千~7千ドル。その差額は返金される。治療を受けるとなれば非常に高額だが、セカンドオピニオンだけなら、渡米にまつわるさまざまな経費を含めて100万円程度だという。
総合的な見通しを知ることのメリットが
乳がんの手術から4年後、両肺に腫瘍が見つかったある50代の女性は、「半年様子を見ましょう」という医師の言葉に、悪性か良性か不明のまま放置してよいのかと疑問を感じた。別の病院で組織検査を試みたが、難しい位置に腫瘍があるため大きく胸を切開して採取するといわれたことも不安になり、思い切って渡米した。
MDアンダーソンでは、胸を大きく切り開くのではなく針をさして組織を採取。その検査結果で左肺の腫瘍が悪性である可能性が高いことが判明した。さらなる検査を提案された際も、諸検査の結果をもとにその必要性を説明されたことで納得できたという。そこで検査と治療は日本で行うことにして帰国。
滞在中はシャトルバスを利用して買い物に行ったり、散歩や観光に出かけ、不自由を感じることなく過ごすことができた。肺の腫瘍は悪性であったが自分で納得できる治療法を選択することもできたと振り返る。
「自分にはどんなオプションがあり、その中から何を選んでいくのか、総合的な見通しが見えてくることが渡米のメリット」と上野さんは強調する。
「アメリカに行けば完治するというような幻想を持つのではなく、今の自分の状態と自分に使える治療法を知り、それぞれの長所や短所を理解して、それらをどういう順番で行うのがいいのか、自分の生活や性格などとの兼ね合いを米国の医師と話しあい、今後のステップを探ることを渡米の目的にすると、納得できる結果が出ると思います」
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