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胃がん(表面陥凹型)/内視鏡検査
潰瘍と正常粘膜の境界の堤防状の隆起に注目
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
73歳の女性Qさん。半年ほど前からときどき上腹部の痛みを感じるようになった。治ったと思うとまたぶり返すので、不安になって近くの病院にて受診。内視鏡検査で胃がんが発見され、国立がん研究センターを紹介された。再度の内視鏡検査にて、胃壁に深く侵食している進行胃がんで、表面に潰瘍を伴うタイプであることがわかった
進行した胃がんではしばしば潰瘍を伴う
ほとんど胃がんは、胃内腔の表面、すなわち胃壁の表面の粘膜に発生します。胃内視鏡はその有無を調べるのにすぐれた検査法です。
「胃がんは内視鏡で見ると、隆起したり凹んだり、その中に潰瘍を伴ったりしています。胃壁の盛り上がり方や凹み方、形、色、潰瘍の有無、それらの状態により、病変ががんであるかどうかが判断できるのですが、Qさんの場合、潰瘍を伴ったがんであることが、比較的簡単にわかります」
潰瘍とは粘膜などの皮膚表面を被っている上皮組織が欠損した凹んだ状態をいいます。森山さんによると、進行した胃がんではしばしばこの潰瘍が見られるといいます。
Qさんの胃がんは5×4センチと大きいのですが、がんが急激に大きくなると潰瘍ができやすくなるのだそうです。
「がんが大きくなるためには栄養補給ルートである血管を造る必要があります。それを血管新生といいます。
しかし、増殖の勢いが著しいと血管新生が間に合わなくなります。
すると、がんの末端には栄養が行き届かず壊死し、潰瘍ができる場合があるのです」
なるほど、Qさんのがんの内視鏡像では、潰瘍が広範に形成されています。白く変色している所が数箇所ありますが、白苔といって、潰瘍を修復しようという生理反応によって生ずる現象だそうです。
胃潰瘍と胃がんに伴う潰瘍の違い
それでは胃がんに伴う潰瘍と胃潰瘍とはどうやって見分けるのでしょうか?
「潰瘍を取り巻く粘膜の色や形状に重要なヒントがあることが多いのです。Qさんの場合では、潰瘍周辺の粘膜が肥厚して、堤防を形成しています。潰瘍を伴う胃がんでよくあるパターンです」
その堤防を含めたがんの部分と正常組織の違いに目をやることもヒントの1つだといいます。
「境界が明瞭な場合とそうでない場合があるのですが、Qさんのそれは明瞭で、胃がんの肉眼分類ではこれを2型といい、その典型的特徴を示しています」
私たちの目には、その境界はうっすらとした感じでしかとらえることはできませんが、それでもなんとか辿ることができます。
ちなみに胃がんの肉眼分類は、日本胃癌学会の分類によると0~5型の6種類に分かれるそうです。進行がんの肉眼分類では国際的に用いられるボルマン分類があるのですが、両者の1~4型の分け方は、ほぼ重なると森山さんはいいます。
肉眼分類によって深達度も推測可能
胃がんの肉眼分類は何故必要なのでしょうか。
胃がんの治療方針を決めるうえで、がんの大きさはもちろんですが、がんが胃壁のどの深さまで達しているかが、決め手の1つになります。その深さのことを深達度といいます。
「内視鏡で観察しただけでは、厳密な深達度はわからないのですが、がんの形状などでそれを推察することは可能なのです。先ほど紹介した肉眼分類はその目安となります。膨大な症例を検討して、典型的な形状を4~5つに分類しているのですが、それによって統計的に深達度も推察できるのです」
胃壁は内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜(腹膜)の5層から成っています。
一般に粘膜~粘膜下層までの深達度であれば早期がん、それ以上深ければ進行がんといいます。
「Qさんの場合、潰瘍は限局しているものの、表面に陥凹があるタイプで、進行がんであることが歴然としています。深達度も深いことが想像できます」
治療方針としては深達度が粘膜下層の浅い部分までに止まる早期がんなら内視鏡で摘まむように切除できるのですが、その適応にはならず、開腹による胃全摘の手術となりました。切除した部分を顕微鏡で調べたところ、案の定、漿膜下層まで達していました。ですが手術は成功して、Qさんは元気に暮らしているそうです。
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