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大腸がん・大腸内視鏡
ゴツゴツした隆起に白く濁った表面が、がんの特徴

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
発行:2007年4月
更新:2013年4月

  
森山紀之さん

もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断

患者プロフィール
63歳の男性。3年ほど前から、度々便に血が付着するサインがあったが、患っている痔による出血だと思い放置していた。昨年暮れ、近所の病院にて大腸がんの存在を指摘され、国立がん研究センターへ。大腸内視鏡検査によって、S状結腸に進行がんが発見された

大腸がんが見つかるパターン

大腸がんが増え続けています。厚生労働省の人口動態調査によると、平成17年には約4万800人が亡くなっています。女性のがんでは肺がんを抜いて、死因の1位になりました。

大腸がんが見つかるパターンは、(1)血便や便秘、下痢、お腹が張るなどの自覚症状が出た場合、(2)地域や企業などが実施する検診の中の便潜血反応検査でわかり、精密検査を受けた場合、(3)人間ドックなどの健診を自発的に受ける場合、というものが多いようです。

精密検査は、以前は大腸の注腸検査、いわゆるバリウムレントゲン検査による方法が多かったのですが、近年は内視鏡によって行うことが多くなっています。肛門からスコープを挿入して、モニターに映し出される映像を見ながら、疑わしい箇所を探す検査です。

「内視鏡は注腸検査よりも小さいがんを発見できる、組織を採取してがんかどうかを調べることができる、機器の改良により検査に伴う苦痛が緩和されてきた、などのメリットがあります」(森山さん)

進行がんは大きく隆起している

内視鏡画像
内視鏡画像解説イラスト

写真の検査画像は進行がんで、大腸の内腔に大きくせり出した状態を捉えています。

「大腸を1本の管とすると、通常、内腔はきれいな円形なのですが、進行すればするほど、このように大きく隆起してきます。次第に便の通りが悪くなるから、便通にも支障をきたすようになります」(森山さん)

この画像の隆起は、管の内側のおおよそ半分の面積から盛り上がっているように見えますが、さらに進行すると、管の全周、つまり円周のまわりから盛り上がることもあるといいます。

隆起はいかにもゴツゴツとして、ツルっとして滑らかな粘膜の部分とは明らかに見た目が違います。色合いも濁った白が表面を覆っており、これも健康な粘膜とは大きな違いがあります。

「よく見ると、実線で示しているように隆起の中に陥没があります。また、その辺縁が膨らんでいたり、瘤があったり、不整形です。形が整っていないということです。これもがんの大きな特徴です」

左端の瘤の頂上の中央付近が赤く滲んでいるのは、出血のあとです。

「がんの中に潰瘍ができて、そこから出血することはよくあります。出血している箇所の近くから、白く垂れているように見えるのは粘液です。出血は一定の量になれば便に付着して、大腸がんが発見されるきっかけになることもあります」(森山さん)

ちなみに、がんの表面が崩れて出血し、便に付着する場合、大腸の奥のほう(上流)であれば、排便までの時間が長くなるので、血液は黒っぽくなり、S状結腸や直腸のように肛門に近ければ鮮血になります。

平坦・陥没型がんの発見は熟練が必要

大腸内視鏡検査にも弱点がないではありません。腸の奥(小腸や胃に近いほう)にスコープを到達させることが難しく、検査が容易ではない、下剤による前処置が不十分で便があちこちに付着している場合、がんが隠れて見逃すこともあり得る、というような点です。

大腸がんには、形が平べったいものや、陥没しているものもあり、それが小さければ発見することが難しくなる、という点も理解しておかなければなりません。

「そのようなタイプのがんであれば、やはり内視鏡の画像を見慣れた経験豊富な医師でないと、発見しにくいのも事実です」(森山さん)

平坦型、陥没型の大腸がんは一般に悪性度は高いのですが、全体のなかで占める割合は隆起型よりはずっと少ないことも付記しておきます。


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