悩みは半分、喜びは倍に それが患者会というもの

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2009年9月
更新:2013年4月

  

ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

以前、「ももカフェ」なる会を開催していたことがあります。

僕が主催している患者会「ももの木」では2カ月に1度、交流会を行っています。最近では、土曜日の昼間にそれぞれがペットボトルとお菓子を持ち寄り、わいわいとしゃべる3時間です。これはこれでいいのですが、目的をもった集まりをしたい、という声が以前ありました。そこで、「ももカフェ」と称して、少人数のテーマを決めた集まりを行ったことがあります。

テーマは、患者さんのほうから僕に伝えていただき、僕がホームページなどを通じてみんなにテーマを伝えます。そして、そのテーマについて話したい人が僕に連絡し、時間調整をして昼間に喫茶店などに集まるというもの。2~3時間くらいでしょうか。テーマにそったおしゃべりが始まります。テーマは「就労問題」などさまざまです。その中でも思い出深いのは、「奥様」のときでした。これには2パターンがあります。1つは、“奥様”が患者であるとき。そして、もう1つが、“奥様”のご主人が患者であるときです。さて今回は、前者の“奥様”が患者のときのお話をします。

イラスト

そのときの会は、ゆったりとソファーに座りながら話せるスペースで行われました。なんと、東京都内だけではなく他の県からも参加していただくことができました。来るだけで数時間かかる方もおられました。

さて、「ももカフェ」開始。よくよく聞いていると、普通の奥様方の旦那さんへの愚痴大会に発展していきました。男性陣は僕だけですので、皆さんの圧倒的なパワーに押されてしまいました。もちろん僕自身、思い当たるふしが満載でした。

夫婦であれば、いろいろありますもんね。ただ、患者という立場であり、なかなかご主人に文句がいえず、また、人に愚痴を言えない状況だったのでしょうね。ももカフェでは、同じ立場の仲間同士だから言える、そう感じました。

そして、どんどん愚痴がエスカレートするかと思いきや、そんな中、ご主人への感謝の言葉も、エピソードとして出てきました。言えなかったことは、愚痴だけではなく感謝の言葉もなんですね。

富山にある白血病や再生不良性貧血などの血液難病を持つ患者および家族を支援するボランティアグループ「すずらん会」のホームページには、こう書かれています。

「悩みは人に話すことで半分になり、喜びは人に話すことで倍になる」

同じ悩みを、同じ喜びを、同じ愚痴を、同じ感謝を、話せる仲間がいて、話せる場がある――。それが患者会なのだと実感しました。

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