妊娠中の乳がん。化学療法を受けてよいか
妊娠4カ月の主婦です。右乳房にビー玉大の硬いしこりがあり、病院でくわしい検査を受けたところ、乳がんと診断されました。夫とも相談して出産の希望を主治医の先生に伝えたところ、まず化学療法であるAC療法*かFAC療法*を行い、出産後に手術を行うといった方法もあるといわれました。しかし、妊娠中に化学療法を受けると、赤ちゃんへの悪影響がありそうで心配です。受けても大丈夫でしょうか。化学療法以外にもよい治療法があれば、教えてください。
(石川県 女性 36歳)
A 化学療法は可能。心配なら、手術などの方法もある
これまでの経験によって、妊娠中にメソトレキセート(一般名メトトレキサート)を投与すれば、流産や胎児の奇形を引き起こすことがわかっていますが、AC療法やFAC療法なら、妊娠14週以降であれば、胎児の奇形、発育不全が増えるというデータはなく、妊娠中も投与可能とされています。ただし、胎児の成人後の生存率低下、がん発症率増加といった長期的な悪影響までは完全にはわかっていません。主治医の提案は理にかなっていますが、お子さんにとってリスクが全くないとはいいきれません。
ご相談者のケースは病期がはっきりわかりませんが、がんはそれほど進行していないようです。そこで、治療を延期して、妊娠6カ月以降に帝王切開(子宮切開による腹部からの分娩)によって早めに出産し、それから治療するという手もあります。この場合、お子さんにとっては早産になるというリスク、ご相談者にとっては治療開始が遅れるというリスクがあります。
有力な代替案としては、妊娠中に手術で乳がんを切除し、出産後に化学療法などを行う方法があります。妊娠中の手術は問題ないとされており、とくに14週以降であれば安全です。抗がん剤に比べれば、胎児への悪影響もはるかに少ないでしょう。ちなみに、妊娠中のホルモン療法や放射線療法は、胎児への悪影響が大きいので行いません。
*AC療法=AC療法はアドリアシン(一般名アドリアマイシン)+エンドキサン(一般名シクロホスファミド)の併用療法
*FAC療法=5-FU(一般名フルオロウラシル)+アドリアシン+エンドキサンの併用療法