抗がん剤治療やホルモン療法は、妊娠・出産に影響するか
右胸の乳頭腺管がんで乳房温存手術を受けました。ステージ1(病期)でリンパ節転移はありません。現在は放射線治療を受けています。このあと、補助療法としてホルモン療法か抗がん剤治療が行われる予定ですが、子供が欲しいため、これらの治療を受けていいものか悩んでいます。これらの補助療法は妊娠に影響するでしょうか。また、妊娠可能な場合、妊娠時のホルモンの関係で再発リスクが高まるようなことはあるのでしょうか。
(茨城県 女性 33歳)
A 30代では、抗がん剤治療を行っても7~8割が妊娠可能
まず抗がん剤治療についてお答えします。
抗がん剤治療は、使う薬によっては、卵巣機能が抑制されます。卵巣抑制が起こると、そのまま閉経し、妊娠できなくなります。とくに卵巣抑制を起こしやすい抗がん剤はエンドキサン(一般名シクロホスファミド)です。アンスラサイクリン系やタキサン系の治療薬は、使う薬によっては、卵巣機能が抑制されることがあり、抗がん剤でも卵巣抑制が起こる可能性があります。
また、年齢によっても違いがあり、40代後半の女性は高率に閉経します。
使用する薬剤にもよりますが、30代の方の場合は、閉経する割合は10~30パーセントといわれています。
ご相談者は33歳ですから、抗がん剤治療を受けても卵巣抑制が起こらず、妊娠・出産できる可能性は70パーセント以上あると考えられます。エンドキサンの使用量は可能な限り少なくすることがすすめられます。
また、抗がん剤治療を行うことで、今後死産になったり、奇形のお子さんが生まれたりする確率が増えるというデータはありません。抗がん剤治療中に、偽閉経療法〔リュープリン(一般名リュープロレリン)やゾラデックス(一般名ゴセレリン)〕を卵巣機能を維持する目的で行うことがありますが、まだその有効性は証明されていません。治療前に卵子をとりだして凍結保存させ、人工授精させる方法が米国では行われています。
次にホルモン療法についてお答えします。
33歳という年齢を考えると、ホルモン療法の選択肢は経口薬のノルバデックスの5年間内服になります。ノルバデックスには催奇形性があるため、服用中は妊娠は避けなければなりません。
乳がんの治療をした患者さんが妊娠、出産してもがんの再発リスクが高まるというデータは今のところありませんので安心して下さい。
絶対に閉経したくないのなら、抗がん剤治療は行わずに、ホルモン療法のみを選択するしかありません。ホルモン受容体陽性のリンパ節転移のない1期乳がんでは、充分許容できると思われます。