手術から2年半を経過。ハーセプチンを受けたほうがよいか
2年半前に乳がんの手術を受けて、現在、ホルモン治療を受けています。抗がん剤治療は受けておらず、HER2は陽性です。インターネットで調べたところ、手術後にハーセプチンによる治療を行うと再発リスクを下げるとありました。私のように、手術から2年半以上経って、ハーセプチンを受けても効果はあるのでしょうか。
(岐阜県 女性 50歳)
A 時間が経ちすぎ。効果があるというエビデンスはない
分子標的薬であるハーセプチンは通常、手術後、抗がん剤と同時投与するか、抗がん剤治療を数カ月行い、抗がん剤投与終了後から行います。
ご相談者は手術を受けた後、ホルモン治療を受けていますが、抗がん剤治療は受けていません。ご相談者がもしハーセプチンを受けると、抗がん剤治療を行わずに、ホルモン治療とハーセプチンでの補助療法を行うことになりますが、そのような投与法での有効性を証明したデータは、実はまだありません。ただ専門家の間では、低リスクのホルモン感受性の高い乳がんの場合には、こうした治療も許容できるのではないかという意見があります。
また、乳がんの術後補助療法としての抗がん剤治療は通常、手術後、2~3カ月以内に始めます。ハーセプチン治療も補助療法ですから、抗がん剤治療に準じて考えると、その期間に投与開始するのが順当であり、手術から2年半も経過してから行った補助療法に効果があるかどうかというエビデンス(科学的な根拠)はありません。
ただ、予想としては、ある程度効果があるだろうと思います。しかし、あくまで「予想」の域は出ず、エビデンスはないのです。補助療法は効果が証明されたエビデンスに基づいて行われるのが原則ですから、その点からすると、ご相談者がこれからハーセプチン治療を受けることはあまりお勧めしません。
また、ハーセプチン治療を行うことで副作用も起こりえます。代表的な副作用である心毒性(心不全などを起こすこと)は、約5パーセントの人に起こります。治療を受けることによるこうしたマイナス面も知っておく必要があります。