乳房温存手術後の放射線治療は受けるべきか
非浸潤性乳管がんと言われました。腫瘍の大きさは1・5センチと言われました。主治医の説明では、乳房温存手術ができるとのことです。自分なりにいくつかの資料を見たり、友人の意見を聞いたりして、乳房温存手術を受けることにしました。ただ、手術後の放射線治療については、あまり受けたいとは思いません。非浸潤性乳管がんでは、乳房温存手術後の放射線治療は必ず、受けなければいけないのでしょうか。
(埼玉県 女性 51歳)
A 再発リスクを下げるため、原則として行う
『乳癌診療ガイドライン』(日本乳癌学会編)では、非浸潤性乳管がんでも乳房温存手術をした場合には、手術後に放射線治療を行うのが原則となっています。海外では、乳房温存手術のみのグループと乳房温存手術後に術後照射を行うグループとに分けたランダム化比較試験が3つ行われています。
これらの試験の結果によると、再発のリスクは、前者のほうが後者よりも2~3倍高くなっています。そのため、非浸潤性乳管がんでは、乳房温存手術後に放射線治療を行ったほうがよいということになっています。ただし、生存率については、両者の治療成績はほぼ同じで、差はありません。乳房内再発のリスクが異なるだけです。
そこで、必ずしも、全例に術後放射線治療を行わなくてもよいのではないかという意見もあります。非浸潤性乳管がんの治療では世界的に有名な米国の医師は、腫瘍の大きさ、切除のマージン(余裕)、がんの異型度の3つをスコア化し、術後照射の不要な群と、必要な群とを区別できると主張しています。マージンが1センチ以上あれば、術後に照射をしなくても治療成績に変わりはなかったと報告しています。
ただし、別の施設ではマージンが1センチ以上あって、異型度の低い症例160例について、術後に放射線治療を行わなかった場合、再発のリスクは5年間で12パーセントと予想より高い結果を報告しています。
術後に放射線治療をしない場合には、こうしたリスクがあることを考えて、治療選択をしてください。なお、術後に放射線治療をした場合の副作用や生活の質についてですが、放射線治療による影響はほとんどありません。
いずれにしても、できるだけ早くに、できればハイリスク出産の受け入れ態勢が整った産婦人科での母体と胎児の精密検査を受けることが望まれます。