術後にBRCA遺伝子陽性と判明したが

回答者●上野貴史
板橋中央総合病院乳腺外科医長
発行:2024年2月
更新:2024年2月

  

2021年3月に左乳房に2.5㎝くらいのしこりが見つかり、4月からホルモン療法を開始しましたが、がんが大きくなり5月からアブラキサン(一般名nab-パクリタキセル)とアバスチン(一般名ベバシズマブ)の併用療法に切り替えました。しびれなどの副作用はありましたが、がんは縮小、2022年2月乳房温存術と腋窩リンパ節郭清術を受けました。乳房には0.3㎝のがんが残り、リンパ節転移が1個ありました。病理検査ではホルモン受容体陰性、HER2陰性のトリプルネガティブと言われました。組織グレード2、Ki67は40%でした。

術後化学療法としてゼローダ(一般名カペシタビン)を半年服用後、放射線療法を25回受けました。今は経過観察中ですが、最近BRCA遺伝子検査を受けたところBRCA2が陽性でした。BRCAに変異があればリムパーザを使用したほうがいいという話を聞いたことがありますが、現在通院しているクリニックでは処方できないといわれました。今後の治療はどのようにすればいいのでしょうか。

(43歳 女性 茨城県)

異常があれば投与適応はあるがその条件に入るか微妙

板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん

ご相談者は術前ホルモン療法を行っているのにトリプルネガティブだったということなので、術前の針生検の診断から術後の検体でサブタイプが変化したと考えられます。その場合どちらのサブタイプを今後の治療方針に利用するかについては、議論のあるところですが、ホルモン療法も効かなかったということならばトリプルネガティブとして扱うのが妥当でしよう。

BRCA遺伝子に変異があれば、ハイリスクの乳がん患者がリムパーザ(一般名オラパリブ)を1年間服用することで、再発のリスクを減らし 生存期間も延長するという「OlympiA試験」の結果が報告されています。

トリプルネガティブの場合、術前化学療法後にがんの遺残があった場合はハイリスクに定義されるので、投与適応はあります。ただ、この試験では最後の薬物治療が終了して12週間以内に開始することが条件になっていたので、ご相談者の場合、この条件に入るかどうかが微妙なところです。通院されているクリニックでは処方できないのなら、他の病院で相談されたら如何でしょうか。

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