メラノーマが足の親指に。指を切断しないといけないか
娘(30歳)のことでご相談します。娘は雑誌で「爪にもがんができる」という記事を読み、自分の爪をチェックしたところ、右足の親指の爪に黒っぽい縦筋を見つけたようです。慌てて皮膚科を受診すると、メラノーマ(悪性黒色腫)と診断されました。早期とのことですが、指を切断せざるを得ないと言われ、娘はショックを受けています。親としては、命が助かるなら指の切断も仕方がないと思いますが、娘の落ち込みぶりを見ていると、別の選択肢がないものかとも思います。指先にメラノーマができた場合、治療は指を切断するしかないのでしょうか。また、もし指を切断した場合、その後の生活ではどのような不便が生じますか。その不便を回避する方法はあるのでしょうか。
(大分県 女性 52歳)
A 腫瘍が表皮内にとどまっていれば、切断は回避できる
メラノーマは抗がん剤治療や放射線治療が効きにくいがんです。また、早期であることを考えても、治療は手術をお勧めします。
足の指先の断面を見ると、上から爪、表皮、真皮、脂肪、骨となっており、爪から骨までかなり薄いのが特徴です。ということは、爪の皮膚に腫瘍ができると、表皮から真皮、脂肪、骨へとすぐに進行するのではないかと思うかもしれませんが、早期に発見できた場合は、表皮内にとどまっていることも少なくありません。メラノーマが表皮内にとどまっているのであれば、指の切断までしなくても十分治療ができます。
ただ、実際にメラノーマが表皮内にとどまっているかどうかは、病理組織検査(切除した皮膚を顕微鏡で調べる検査)を行わなくてはわかりません。
この方のような症例の場合、当院では、手術で爪を含めて骨の手前ギリギリの箇所まで病変を切除します。切除した病変は病理組織検査に回し、その間、患部には人工の真皮を載せておきます。病理検査の結果、もしメラノーマが表皮内にとどまっていれば、患部に患者さんのおなかなどの皮膚を移して貼り付けます(「植皮」といいます)。手術はこれで終了です。メラノーマは取り切れたと考えられるため、指を切断する必要はありません。
しかし、病理組織検査の結果、メラノーマが真皮より深くまで及んでいて、その上、メラノーマの取り残しが確認された場合は指を切断することになります。一方、取り残しはなかったが、真皮まで及んでいた場合は、それでも当院ではしっかり治すことを優先し原則として指を切断していますが、患者さんとの話し合いによっては指を残すこともあります。
この方の場合、現段階で「指を切断せざるを得ない」と言われたようですが、前記のように、2段階で治療を考えることもできます。ご心配なら、セカンドオピニオンをお受けになるとよいと思います。
仮に足の親指を切断した場合でも、日常生活にはほとんど問題ありません。慣れてくれば、軽い運動もできると思います。