術後の治療法は問題ないでしょうか?

回答者●上野貴史
板橋中央総合病院乳腺外科医長
発行:2024年11月
更新:2024年11月

  

3年前に右乳がんステージ1と診断され、全摘しました。ホルモン受容体陽性、HER2陰性、オンコタイプDXの結果は低スコアでした。術後はタモキシフェンでのホルモン療法を受けていましたが、昨年(2023年)8月、左乳房にがんが見つかり、ホルモン受容体とHER2は陽性で、右乳房とは違うタイプのものでした。がんは1.6㎝でリンパ節転移はなくステージ1でした。術前化学療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセルの併用療法を4コース、AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド)を4コース、計6カ月間行い、その後左乳房を全摘、センチネルリンパ節生検も行いましたが、がん細胞はありませんでした。術後はホルモン療法を継続しながらトラスツズマブ+ペルツズマブの併用療法を受けていますが、この治療法で問題はないのでしょうか。生理は止まっています。

(45歳 女性 栃木県)

ハーセプチン単剤でも治療効果はほとんど変わらない

板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん

HER2陽性タイプの左乳がんが見つかり、全摘術後、がん細胞はなかったということで術後はホルモン療法を行いながら、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)+パージェタ(同ペルツズマブ)の併用療法を受けているが問題はないかとのご相談ですが、標準治療に則った治療法であり問題ありません。

強いて言えばご相談者の状況では、術後の抗HER2治療はハーセプチン単剤でもよいと思われ、パージェタと併用しなくても治療効果はほとんど変わりません。副作用は下痢が増える程度ですが、パージェタは高額な薬(3週毎に薬価約20万円)なので、患者さんの負担もさることながら、7割は保険機構の出費であり医療経済学的には費用対効果がよくないと思われます。

2024年版のESMO(欧州腫瘍学会)ガイドラインでは、術前療法でがん細胞が消失した場合、術前リンパ節転移陰性例ではハーセプチン単剤を推奨しておりパージェタ併用は不要とされています。なお質問にはBRCA遺伝子変異についての情報がありませんが、40歳台で両側発症の場合には変異の有無を調べるべきであり、変異があった場合には予防的卵巣卵管切除などが考慮されることがあります。またご相談者の場合は左右乳がんともにステージ1なのでホルモン療法は10年でなく5年でもよいと思います。

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