高齢者の卵巣がんの治療は?

回答者:上坊 敏子
社会保険相模野病院 婦人科腫瘍センター長
発行:2013年3月
更新:2013年12月

  

75歳になる母の卵巣がんについての相談です。先日、卵巣がんの疑いがあると診断されました。比較的早期の可能性とのことですが、手術が必要だと言われました。手術では、卵巣と一緒に子宮やリンパ節も摘出するそうです。母は高齢なので、そのような大きな手術を受けられるのかどうか心配です。抗がん薬治療や放射線治療で治療することはできないのでしょうか。

(秋田県 女性 49歳)

A 治療は手術と抗がん薬治療のセットが基本

まず、現段階では「卵巣がんの疑いがある」ということですが、手術をしなければ卵巣がんと確定診断することはできません。手術で腫れている卵巣を摘出し、腫瘍が良性であればこれだけで治癒できます。

もしがんであれば、適切な手術をして手術後に抗がん薬治療を行うという方向に進みます「卵巣がんの疑い」という場合はまず手術を行うことが基本的な診断と治療になるのです。

卵巣がんの手術では、卵巣と卵管、子宮の全摘出、併せて大網と呼ばれる胃腸を保護する膜を摘出するのが1番の基本となります。

卵巣だけでなくて子宮も摘出するというと、心配される方もいるかもしれませんが、これは婦人科ではよく行われている一般的な手術で、そんなに難しいものではありません。75歳でも普通の健康状態の女性なら、手術を受けるのに何の問題もありません。

卵巣がんはリンパ節に転移することが多いので、さらにリンパ節の郭清を行うこともあります。腸や腹膜、ときには脾臓などに転移することもあり、そういった場合には転移している部分をできるだけ摘出します。このような大がかりな手術になる場合は、患者さんの合併症や体力をみながら行います。

お母様の場合は早期の可能性ということなので、腸の切除は必要ないかもしれませんが、卵巣と卵管、子宮、大網に加えてリンパ節を摘出する通常の手術になるかと思います。

摘出手術の後には抗がん薬治療を行います。卵巣がんは比較的抗がん薬が効きやすいがんですが、がんの塊が大きい場合は効きがよくありません。ですから手術で大きながんを取りきってしまい、手術で取りきれなかった小さながんを抗がん薬でつぶしていきます。

卵巣がんの治療では基本的に手術と抗がん薬治療がセットで、抗がん薬だけで治すことは困難です。放射線治療は卵巣がんには効きめがなく、ほとんど行われません。

早期であれば、手術でがんをきちんと切除し、抗がん薬治療を行うことで治癒する可能性が高まります。

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