自分も親も乳がん。娘に遺伝子検査を勧めるべきか
4年前に乳がんになりました。浸潤がんの2期で、全摘手術をし、その後抗がん剤治療、現在はホルモン療法を行っています。質問は、最近乳がんは遺伝するということを知って、娘に遺伝しないかどうか心配しています。母も乳がんでした。遺伝子検査を行って、もし乳がんになる可能性があるとされた場合、どうすればよいのでしょうか。
(奈良県 女性 55歳)
A 検査結果による影響も加味して判断を
遺伝子検査については、検査結果で遺伝性であることがわかっても、必ずしもがんになるとは限らないこと、また検査結果による、心理的な影響や社会的影響などのデメリットも加味すると、検査を受けるほうがいいのかどうかの判断は容易ではありません。
また、ご相談者の場合、文面からは乳がんになられたのがご本人とお母さまとだけしかわからないこと、ご本人もがんになられたのが51歳のときということですので、娘さんに遺伝の可能性が高いかどうかはわかりません。ただ、ご家族の方に卵巣がんの方がいらっしゃる、または若くしてがんになられているような場合は遺伝の可能性が高いといえます。
ASCO(米国臨床腫瘍学会)に遺伝子検査を受けたほうがよいかどうかのガイドラインがあるので参考にしてみてください。
遺伝性の乳がんかどうかを調べる場合、BRCA1、BRCA2という2つの遺伝子に異常があるかどうかを調べ、異常がある場合は遺伝する可能性があるという診断をします。専門機関での血液検査で調べられますが、日本では保険適応はありません。遺伝子異常があった場合50~80パーセントの確率で乳がんを発症します。卵巣がんの発症リスクも高くなります。
遺伝子検査を受けることによって、前述したように心理的に及ぼす影響、社会的な影響、そして血縁者に及ぼす影響などのデメリットといえる部分もあります。日本の場合、社会的にバックアップ体制がまだととのってないこともあり、積極的には勧められません。検査の前には遺伝カウンセラーなどの専門家によるカウンセリングをしっかり受けてご相談なさってから決められるといいと思います。
遺伝子異常と判明した場合でも、予防的卵巣摘出や予防的乳房切除は保険治療では行えません。現実的対応としては検診をこまめに行うことでしょうが、年齢や生活環境など個人によって状況はさまざまで、一概に決めてしまうのは難しい問題です。その点も含め、遺伝カウンセラーのある病院でまずは相談してみてください。