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予後がよくないがんは早期発見が要。定期的な尿検査や超音波検査を
これだけは知っておきたい膀胱がんの診断と治療

監修:窪田吉信 横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2008年11月
更新:2013年4月

  
窪田吉信さん
横浜市立大学大学院
医学研究科泌尿器病態学教授の
窪田吉信さん

膀胱がんの初期症状や現在の標準治療、さらには今後の治療展開について、横浜市立大学大学院医学研究科泌尿器病態学教授の窪田吉信さんに話を聞いた。

膀胱がんは喫煙が大きな危険因子

膀胱がんは、膀胱の内側を覆っている移行上皮に発生する。実は、腎盂、尿管、膀胱、尿道の内側は、すべて移行上皮で覆われていて、ここにできるがんはすべて仲間と考えていいようだ。ただ、腎盂から尿道に至る尿の通り道の中で、最もがんができやすいのは膀胱で、腎盂、尿管、尿道のがんに比べると圧倒的に多い。

「なぜ膀胱がんが多いのかというと、尿の中に発がん物質が入っているからです。喫煙や食事で体内に入った発がん物質は、血液中に入り、代謝されて尿に捨てられます。その尿を膀胱は何時間もためているので、尿が通過するだけの部位に比べ、がんができやすいと考えられています」

膀胱がんは、化学物質が原因になりやすいこともわかっている。そのため、染料を使う工場、化学工場、ゴム工場、薬品工場などに勤務する人は、通常よりも高い頻度で膀胱がんが見られる。この他、喫煙の影響も大きいようだ。

「診療していると、膀胱がんの患者さんで、タバコを吸ったことがない人は、ほとんどいないと言ってもいいくらいです」

男女比は、3対1で男性に多い。男性に喫煙者が多いことも関係しているようだ。

痛みや発熱を伴わない血尿には注意が必要

膀胱がんで現れる代表的な症状は血尿である。血尿はがんの発見に役立つのだが、実は見逃されてしまうことも多い。なぜなら、痛みや発熱などの症状を伴わない無症候性血尿だからだ。

痛みや発熱があれば尿路結石や膀胱炎の可能性が高いが、無症候性の場合は、膀胱がんを考える必要があるという。

「膀胱がんで出る血尿は、赤ワイン色、紅茶色、コーヒー色など、さまざまですが、肉眼でわかります。ところが、痛みや発熱がないので、様子を見ようと考える人が多いのです。血尿はすぐに止まるので、何でもなかったのかと安心してしまいますが、1年くらいすると再び血尿が始まります。そして、今度はとまらない。そういったケースがよくありますね。せっかくのサインを見逃さないためにも、血尿が出たら泌尿器科で診察を受けることが大切です」

血尿など膀胱がんが疑われる症状があれば、膀胱鏡検査が行われる。尿道から内視鏡を膀胱まで挿入し、膀胱の内側を観察する検査だ。膀胱鏡には、棒状で曲がらない「硬性鏡」と、くねくねと曲がる「軟性鏡」がある。胃の内視鏡より細いので、尿道にも入れることができる。男性は女性より尿道が長いのでやや大変だが、ゼリー状の麻酔を使うため、とくに痛みに苦しめられることはないという。

膀胱鏡での観察で、膀胱がんができているかどうかはもちろん、膀胱がんのタイプを見極めることも可能だ。CT、MRI(核磁気共鳴映像法)、超音波検査などの画像検査では、小さながんを発見することはできない。ただ、膀胱鏡でがんを発見した後、CTやMRIでがんの広がりが調べられる。

膀胱がんの種類によって予後も異なる

膀胱がんには、「表在性がん」「浸潤性がん」「上皮内がん」という3つのタイプがある。最も多いのは表在性がんで、膀胱がん全体の約7割を占めている。

表在性がんは、膀胱の表面にできたもので、その下の筋層にまでがんが至っていないタイプを指す。樹木のような形状をしており、茎がある。予後は良好とされている。浸潤性がんは、全体の約2~3割を占めており、予後はあまり良くない。特徴としては、表在性がんと異なり、膨らんでいるだけで茎がないことが多く、がんが筋層にまで入り込んでいる。

一方、上皮内がんは、膀胱表面に扁平な状態となっているタイプ。かつては、早期のがんと考えられていたが、そうではないことがわかっている。放っておくと早期に筋層に入り込んで広がるので、注意する必要がある。

膀胱がんは、それぞれのタイプによって予後が異なることがわかってきており、診断の際には、どのタイプかを見極めることが重要となってくる。

[膀胱がんの壁内への進行]
図:膀胱がんの壁内への進行


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