• rate
  • rate
  • rate

慢性骨髄性白血病(CML):治療

監修:大野竜三 愛知県がんセンター総長
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2004年12月
更新:2013年4月

  

慢性骨髄性白血病

治療状況を一変させたグリベック

ここ4~5年の間に、グリベックの登場によって治療法が大きく変わり、非常によく治るようになったのが、慢性骨髄性白血病です。

慢性骨髄性白血病は、ゆっくりと進行するため、初期にはほとんど症状がありません。この時期を「慢性期」といいます。まだ白血病細胞の数も少なく、抗がん剤で簡単にコントロールできます。しかし、4~5年で「移行期」に入り、抗がん剤で白血病細胞の増加を抑えることはできなくなります。その結果、「急性転化」を起こし、急性骨髄性白血病と似た状態になります。しかし、急性転化を起こした慢性骨髄性白血病が、化学療法によって完全寛解に入る率は「急性骨髄性白血病のせいぜい4分の1」と大野さん。つまり、急性骨髄性白血病とは治療に対する反応が全く異なるのです。そこで、慢性骨髄性白血病では、いかに急性転化を防ぐかが、治療の最大の課題とされてきました。

治癒率が飛躍的に向上する原動力となったグリベック
治癒率が飛躍的に向上する
原動力となったグリベック

ここに、登場したのが造血幹細胞移植とインターフェロンでした。造血幹細胞移植を行うと、慢性期で7割、移行期でも約4割の患者さんが急性転化を免れます。一方、インターフェロンは約半分の人に白血病細胞の消失や減少が見られます。そこで、従来はインターフェロンか造血幹細胞移植が治療の中心だったのです。

ところが、この状況を一変させたのが、2001年に認可されたグリベックでした。慢性骨髄性白血病では、フィラデルフィア染色体という異常な染色体が現れます。これは、9番の染色体にあるablという遺伝子と22番の染色体にあるbcrという遺伝子が切断されてくっついたもので、bcr/ablという融合遺伝子を作ります。この融合遺伝子が作る異常なタンパク分子が白血病細胞を無制限に増加させて、白血病を起こすと考えられています。そこで、この遺伝子異常にターゲットをしぼり、飲み薬として開発されたのがグリベックです。

すでに臨床試験の段階からグリベックは高い治療成績を示しましたが、「当初有効率は6割と見られていたのですが、今は初発治療に使うと8割5分に効く」(大野さん)といいます。ここで「効く」というのは、細胞遺伝学的効果のことです。これまでお話してきたように白血病細胞の数が減少するのが「血液学的効果」です。その意味ではグリベックによって95パーセントが完全寛解に入ります。これに対して、白血病の原因であるフィラデルフィア染色体が消えることを細胞遺伝学的効果といいます。グリベックでは85パーセントに細胞遺伝学的効果が現れ、フィラデルフィア染色体が減少しているのです。しかも75パーセントでは、フィラデルフィア染色体が消滅しています。これが、「細胞遺伝学的完全寛解です。」慢性骨髄性白血病では、これまでのインターフェロンでの研究から、フィラデルフィア染色体が減少するか、消滅すると長期生存することがわかっています。

[フィラデルフィア染色体]
フィラデルフィア染色体
フィラデルフィア染色体のでき方
9番と22番の染色体の一部が入れ替わることによって、bcr-ablという遺伝子ができる

「インターフェロンでは、毎日1年ぐらい注射して約60パーセントの人でフィラデルフィア染色体の減少が見られます。それが1日1回服用するだけで85パーセントに細胞遺伝学的効果があるというのは、驚異的な効果なのです」と大野さんは説明しています。しかも、インターフェロンの場合、発熱や肝臓障害、うつ病などの副作用に耐えて長期に注射を続けなければなりません。一方、グリベックには吐き気やむくみ、筋肉痛、薬疹などの軽い副作用はありますが、重い副作用は少なく、副作用で治療が続けられなくなる人は5パーセントほどだそうです。

[慢性骨髄性白血病の標準治療]
慢性骨髄性白血病の標準治療
[慢性骨髄性白血病の進み方]
慢性骨髄性白血病の進み方
[グリベック服用による白血病細胞の減少]
グリベック服用による白血病細胞の減少
[グリベック服用によるフィラデルフィア染色体の減少]
グリベック服用によるフィラデルフィア染色体の減少

いつグリベックの服用をやめるかが今後の課題

[未治療の慢性期慢性骨髄性白血病を対象としたグリベックと
インターフェロンα+キロサイド少量とのランダム化比較研究
(IRIS Study)]

最近、グリベックとインターフェロンに少量のキロサイドを併用する治療を比較した臨床試験(左表参照)が行われ、明らかにグリベックのほうが効果が高いことが示されました。そこで、現在は「第一選択がグリベック、これが効かないか効かなくなったら造血幹細胞移植を行うのが、標準的治療です。造血幹細胞移植ができなければ、インターフェロンという順番です」と大野さんは語っています。

「今は、いつグリベックの服用をやめるかが課題」です。今のところ、効果がある限り使い続けるのですが、グリベックは安い治療薬ではありません。「今は、bcr/ablを増幅して遺伝子レベルで効果を見ることもできます。これでみると、30パーセントぐらいの患者さんで分子的完全寛解に入っています。ここでやめてもいいのではという意見もあるのですが、理論的にはそれでも体内に100万個以下の白血病細胞がある計算になるので、全く安心とは言い切れないのです」と大野さん。事実、グリベックをやめて再発した例も報告されているそうです。 「グリベックで治療を開始して長い人でもまだ5年です。長期的な評価はまだ十分とは言えませんが、思ったより再発は少なく、また耐性が出て効かなくなったという例も耳にしていません」と大野さん。現状では、グリベックによって慢性骨髄性白血病の多くが治るようになってきていると言えるでしょう。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート10月 掲載記事更新!