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休薬してよいかどうかの臨床試験も始まり、将来的には完治できる可能性も!
効果の高い第2世代薬が登場!慢性骨髄性白血病の治療薬をどう選ぶか


発行:2012年4月
更新:2013年4月

  

木村晋也さん

木村晋也
佐賀大学医学部内科学講座
血液・呼吸器・腫瘍内科教授

木村晋也さん
医学博士。自治医科大学卒業後、オーストラリアWEHI 研究所、フランクフルト大学血液内科等を経て、京都大学医学部付属病院輸血細胞治療部。2009年、佐賀大学医学部医学科内科学講座血液・呼吸器・腫瘍内科教授。佐賀大学医学部付属病院がんセンター長。日本血液学会評議員。日本がん学会評議員。とくに慢性骨髄性白血病を専門とする血液がん治療のエキスパートとして、治療に携わる

古賀真美さん

古賀真美
Patient Advocate Liaison
(PAL/造血器腫瘍〔血液がん〕
患者相談支援の会)代表

古賀真美さん
弟の急性リンパ性白血病の治療に際し、骨髄移植のドナーとなる。その経験をもとにサイトで血液がんの情報提供・相談にかかわる。2007年4月。白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫の患者、家族、医療関係者がともに患者支援について勉強・研究する会PAL(Patient Advocate Liaison)を設立。JACC認定臨床心理カウンセラー。CNJ認定がん情報ナビゲーター。患者さんの不妊や結婚の悩みをテーマとした活動や、がん患者さんのマリッジカウンセリングにもあたる

これまでのグリベックに加え、第2世代薬であるスプリセルとタシグナが、この2年の間に慢性骨髄性白血病の初回治療で使えるようになりました。3剤を選べる時代になった今、患者さんは薬剤の効果をどう考え、治療法を選んだらいいのでしょうか。
PAL(造血器腫瘍患者相談支援の会)代表の古賀真美さんとともに、慢性骨髄性白血病の治療に詳しい佐賀大学医学部教授の木村晋也さんに、新薬の治療について聞きました。

分子標的薬の登場で死なない病気になった

古賀  慢性骨髄性白血病と診断されたとき、ひどく落ち込んでしまう患者さんがいます。白血病というだけで「死」を連想してしまうのです。

木村  2001年に新薬が登場するまでは、まさにそういう病気でした。慢性骨髄性白血病と診断された患者さんは、骨髄移植を受けられなければ、ほぼ100%が7年以内に、多くは4~5年以内に死亡していました。

古賀  そういうイメージをもつ患者さんは、現在の治療に驚かれるようです。入院の必要すらなくて、薬を飲むだけでいいわけですから。副作用はあるにしても、仕事が続けられる、家事や子育てもできるというのは、患者さんにとってありがたいことです。

木村  慢性骨髄性白血病の治療をそのように劇的に変えたのが、分子標的薬のグリベック()でした。従来の抗がん剤と違って、がん細胞だけがもっている異常をピンポイントで攻撃する薬です。初期からグリベックをきちんと飲めば、少なくとも20年間、90%の方が生きられるようになりました。この病気が中高年以降に多いことを考えれば、この病気ではほぼ死亡しなくなったわけです。私が医師になって26年、治療成績がこれほど劇的に変わった病気は他にありません。

グリベック=一般名イマチニブ

第2世代薬を最初から使う時代が到来

古賀  現在は、グリベックに続く新しい分子標的薬、スプリセル()やタシグナ()も登場してきていますね。第2世代薬と呼ばれているようですが、どのように使われているのでしょうか。

木村  第2世代薬での治療は、従来薬よりも優れた効果が期待できるとされ、スプリセルは2011年6月から、タシグナは2010年12月から、治療の第1選択薬として使えるようになりました。現在は初期治療で、グリベック、スプリセル、タシグナの3剤から選べます。

古賀  患者さんはそういったことを、あまり知りません。3種類の中からどれでも選べることどころか、薬が3種類あることも知らない人がけっこう多いです。

木村  病院で説明が十分されていないのかもしれませんね。スプリセル、タシグナが日本で使えるようになったのは2009年ですが、当時は使い方に制限がありました。グリベックを使ってみたが効かなかった人、あるいは副作用が強くてグリベックを飲めない人に限って使用が認められていた影響もあるかもしれません。

古賀  第2世代薬の効果は、どのようなものなのですか。

木村  グリベック対スプリセル、グリベック対タシグナという大規模な臨床試験が行われました。その結果、第2世代薬から使うほうが治療成績が優れているというデータが、一昨年出ています。それにより日本でも、前述のように第1選択薬となったのです。

[ニロチニブの効果]
(臨床試験によるイマチニブとの比較)

ニロチニブの効果

(Saglio et al.N EnglJ Med 2010より改変)

[ダサチニブの効果]
(臨床試験によるイマチニブとの比較)

ダサチニブの効果

(Kantarjian et al.N EnglJ Med 2010より改変)


*薬剤は、それそれ、グリベック400mg1日1回、タシグナ300mg1日2回、スプリセル100mg1日1回の比較

スプリセル=一般名ダサチニブ
タシグナ=一般名ニロチニブ

3種類の分子標的薬は作用が少しずつ異なる

古賀  第2世代薬の効果が高いのは、どうしてですか。

木村  慢性骨髄性白血病では、細胞の中で「bcr」という遺伝子と「abl」という遺伝子は離れて存在するのですが、「bcr」のしっぽに「abl」がくっついて、「bcr-abl」という異常な遺伝子ができることがあります。この遺伝子が異常なタンパク質を作り出し、そこから白血病細胞を増殖させる指令が出ます。こうして白血病細胞が増えていくわけです。

異常なタンパク質が指令を出すにはエネルギーが必要で、それを受け取るための鍵穴があります。その穴の形を調べ、はまり込む鍵が作られました。これがグリベックです。グリベックがはまり込むと、エネルギーを受け取れず、白血病細胞を増殖させる指令が出せなくなるのです。

タシグナは、グリベックよりも精巧に作られた鍵です。鍵穴のすき間をなくし、よりぴったりとはまり込みます。それにより、白血病細胞を殺す力は強く、試験管内でグリベックの30倍と言われています。

スプリセルは、頭の半分を鍵穴のとくに重要な部位に差し込みます。実は異常なタンパク質は常に形を変化させていて、グリベックとタシグナはある状況のときにしか入り込めません。その点、スプリセルはいつでもそのタンパク質にくっつくことができます。それによって、スプリセルの白血病細胞を殺す力は、試験管内でグリベックの325倍となっています。

古賀  スプリセルは作用の仕方が少し違うのですね。

木村  当初は、作用の仕方が異なるため副作用が強くなるのではないかと考えられました。しかし、実際にはそうでもなく、一部の患者さんでは、むしろ免疫力が向上することがわかってきました。これもスプリセルの効果と考えていいでしょう。

古賀  がんの薬で免疫が下がるという話はよく聞きますが、スプリセルはまったく逆の作用をもつのですね。


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