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日進月歩で進歩する乳がんの検査と治療―その現状に迫る
これだけは知っておきたい乳がん最新基礎知識

監修:川端英孝 虎の門病院乳腺内分泌外科部長
取材・文:平出浩
発行:2008年3月
更新:2014年1月

  
川端英孝さん
虎の門病院
乳腺内分泌外科部長の
川端英孝さん

乳がんの治療に関する考え方や検査の状況もここ1~2年で急速に変わってきている。

マンモグラフィ検査の普及で乳がんが発見されやすくなり、また2005年5月、ハーセプチンの登場以降、乳がんの治療法は大幅に広がりオーダーメイド治療の時代に入ったといわれている。

そんな乳がんの最新情報を虎の門病院乳腺内分泌外科部長の川端英孝さんに伺った――

マンモグラフィ検査と超音波検査の最新情報

乳がんの治療に関する考え方は、ここ1~2年でも急速に変わっている。検査の状況も、ここ数年でかなり変わった。まずは検査について見ていこう。

虎の門病院の乳腺内分泌外科部長である川端英孝さんによると、数年前までは、しこりに気がつくなど、何らかの自覚症状を訴えて来院し、それがもとで乳がんが発見されるケースが多かった。ところが近年は、マンモグラフィ検査によって、乳がんが発見されるケースがとても増えているという。

マンモグラフィ検査とは、乳房を装置に挟んで圧迫し、X線撮影をする検査のことである。乳がんなどがある場合、石灰化病変が見つかり、これによって、触診では見つからない小さながんが発見できることがある。マンモグラフィ検査は近年、自治体による検診や人間ドックに急速に導入されている。

ただ一方では、マンモグラフィ検査では見つけにくい乳がんもある。とくに、20~30代の比較的若い層には、マンモグラフィ検査よりも超音波検査(エコー検査)のほうが望ましいと聞くが、実際はどうなのだろうか。

「一般的には、20~40代の人は、超音波検査のほうが乳がんを発見しやすいといわれています。若い層では、超音波検査で乳がんが発見されるケースが多いというデータはあるし、私も、個人的にそのような印象を持っています」(川端さん)

ただ、超音波検査をすることで、乳がんが早期発見され、なおかつ死亡率も下がるといったレベルのデータはまだないという。だが、そもそも医学データには、根本的について回る問題があると川端さんは指摘する。

「医学データは、結果が出るまでに5年、10年、15年、場合によってはそれ以上の期間を要します。これは検診の場合も同様で、死亡率との相関関係などの結果がわかるまでには相当の期間がかかる。だから、たとえば今のマンモグラフィ検査に関するデータは1970年代のものだったりします。でも当時の装置と今の装置とでは、性能が大きく違う。リアルタイムのデータは出にくいのです」

さて、もう1つ大切なことは体型で、太り気味で、乳房が大きめの女性にはマンモグラフィ検査のほうが適している。やせていて、脂肪の少ない女性には、一般的には超音波検査が向いている。

乳がんの検査には、マンモグラフィ検査と超音波検査のほかに、視診・触診がある。これらの検査で乳がんが疑われる場合には、細胞診や組織診などの精密検査が行われる。

細胞診は注射器で腫瘍の細胞を取り出し、良性か悪性かを調べる方法である。細胞診は簡便ではあるが検査の確実性が劣るため、最初から組織診を行うことも多い。これは、太い針をがんが疑われる場所に刺して、その組織を調べる検査(針生検という)である。

[乳がんの罹患数の推移(推計も含めて)]
図:乳がんの罹患数の推移

進歩したMRI検査 ホルモン受容体と乳がんの関係

乳房MRIの写真
乳房MRIの写真(中央白い塊ががん細胞)

乳がんと診断されたら、手術法などを決めるために、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像法)検査などが行われる。近年はとりわけMRI検査の精度が上がっているため、この検査の結果によって、手術などの治療計画が立てやすくなった。

女性ホルモン受容体の有無を調べる検査も重要である。そもそも、このホルモン受容体とはいったい何なのだろうか。

「ホルモン受容体は患者さん自身の特性ではなく、患者さんにできたがんの特性です。つまり、がんのタイプ。そのため、ホルモン受容体は乳がんの組織から調べます」(川端さん)

乳腺組織はエストロゲンという女性ホルモンによってコントロールされている。思春期になり、エストロゲンが増えると、乳房が大きくなる。妊娠・出産し、授乳するようになると、エストロゲンはいっそう増え、乳腺組織もさらに発達する。その後、年齢を重ねると、エストロゲンの量は低下し、乳腺は退縮、やがて閉経を迎える。このように、エストロゲンがなくなると、乳腺はしぼんでしまう。

乳がんは乳腺組織から派生した、いわば乳腺組織の分家、あるいは乳腺組織の変種ともいえるものだ。ということは、乳がんは乳腺に特有の性質を有している。つまり、エストロゲンが増えていると、がんは増殖するし、エストロゲンを断ち切ると、がんは減少する。乳がんのこの性質を利用したのが、抗エストロゲン剤などのホルモン療法である。ただし、すべての乳がんにホルモン受容体があるわけではなく、乳がん全体のおよそ7割にホルモン受容体があるといわれる。

ホルモン受容体のない、およそ3割の乳がんには、ホルモン療法はほとんど効かない。そして、このタイプの乳がんは、エストロゲンのコントロールからはもはや逸脱してしまっているととらえることもできる。


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