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国立がん研究センター中央病院で取り組んでいるウイッグもいらない頭皮冷却法とは?

化学療法中の脱毛は防げる!? 頭皮冷却法に期待

監修●木下貴之 国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長
取材・文●池内加寿子
(2013年3月)


頭皮冷却装置を用いた脱毛予防に取り組む木下貴之さん

抗がん薬の副作用の中でも外見の印象を変える「脱毛」は、女性患者さんの苦痛度が高い。そういった患者さんの声に応えようと、国立がん研究センター中央病院では、頭皮冷却装置を用いた頭皮冷却法が行われている。

苦痛度ランキング1位は脱毛

■表1 がん治療の苦痛度ランキング(1~5点まで苦痛の程度をスコア化)

抗がん薬治療時にはいろいろな副作用が起こるが、なかでも脱毛は予防策がなく、患者さんにとって大きな悩みとなっている。とくに乳がん手術前後の補助化学療法では、アンスラサイクリン系、またはタキサン系の薬剤を主としたAC療法(アドリアシンエンドキサン)、またはTC療法(タキソテールエンドキサン)が使われることが多く、どちらの場合も4回の投与で、ほぼすべての髪が抜ける完全脱毛となってしまう。

2009年に国立がん研究センター中央病院で、通院治療中の男女638名にアンケートを行ったところ、女性がもっとも苦痛に感じているのが、抗がん薬の副作用による頭髪の脱毛だった。乳房の切除、吐き気がこれに続く(表1)。

「治療のためとはいえ、女性にとって脱毛は最大の苦痛であり、著しくQOL(生活の質)を低下させる副作用です。吐き気に対しては有効な制吐剤が開発されていますが、苦痛度がもっとも高い脱毛には予防策がなく、ウイッグや帽子をかぶる以外に積極的な対策が講じられていないのが現状です。

乳がんは、仕事や家庭で重要な役割を担う40~50代に多く、職場や学校などの社会活動にも影響します。髪が抜けるのがいやだから抗がん薬治療を受けない、という患者さんさえいるので、医療者もできる限りの対策を考えるべきでしょう」

国立がん研究センター中央病院・乳腺外科科長の木下貴之さんはこう指摘する。



アドリアシン=一般名ドキソルビシン エンドキサン=一般名シクロホスファミド タキソテール=一般名ドセタキセル

患者さんの声をもとに導入

以前から、乳がんの患者さんの副作用対策に尽力してきた木下さんは、脱毛対策が急務と考え、「頭皮冷却法」に着目した。

頭皮冷却法とは、頭皮を冷やすことで血流を減らし、毛根への抗がん薬の作用を抑えて脱毛を予防する方法だ。「ダウンクールキャップ」と呼ばれる、頭全体を冷やす帽子が1980年代から存在していたが、冷却が一定に維持できず、手間も人手もかかる一方で、効果があまりみられなかった。ところが近年、EU諸国では、頭皮冷却の装置が改良され、一般の病院で使われているという。

「3年ほど前に当センターを受診したアメリカ人の40代の患者さんは、イギリスで乳がんの手術後に抗がん薬治療をした後も、髪がほとんど抜けていませんでした。イギリスでは抗がん薬治療中に頭皮冷却装置で脱毛予防をすることが、一般の病院でも行われているというのです」

日本人での安全性を確認

木下さんは早速、イギリスの病院で新型の頭皮冷却装置の使用状況を見学し、日本でもその装置を使えないかと考えた。イギリスだけでなく、オランダ、スイスなどのEU諸国では、慈善事業団体による資金支援などもあるため、病院に導入しやすい。

一方、日本では、厚生労働省が「医療機器」として認可し、「保険診療」で使えるようにならないと、一般の患者さんが使うことは難しいという。

そこで木下さんは、病院の倫理審査委員会を通した上で、自費でイギリスのメーカーから頭皮冷却装置(写真2)を2台個人輸入し、乳がん術後にAC療法またはTC療法を受ける患者さんを対象に、臨床試験(第Ⅰ相試験)の形でとり入れることにした。

「頭皮冷却によって本来の抗がん薬治療ができなくなったり、脱毛予防のために抗がん薬の量を減らしたりするのでは本末転倒です。この臨床試験では、決められた量の化学療法をきちんと行った上で頭皮冷却を実施し、日本人でも安全に使えるかどうか、有害事象はないか、まずは安全性や患者の満足度を検証し、副次的な評価項目として、脱毛予防効果を見ていきます」

■写真2 今回使用した頭皮冷却装置

サイズ違いのキャップのバリエーション(英国 パックスマン クーラー社製)


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