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再発しても根治を目指せる 食道がんに対する光線力学的療法 光線力学的療法の存在を知って、治療に臨もう!

監修●矢野友規 国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科医長
取材・文●伊波達也
発行:2016年10月
更新:2020年2月

  

「光線力学的療法という治療法があることを患者さんにはぜひ知っていただきたいと思います」と
語る矢野友規さん

化学放射線療法や放射線治療後にがんが治癒(消失)しなかったり、再発してしまった場合、救済(サルベージ)治療が行われる。救済治療において、内視鏡切除が出来ない場合、以前は手術が行われていたが、そこに今、新たな選択肢として光線力学的療法(photodynamic therapy: PDT)と呼ばれる治療が加わっている。たとえ再発しても、根治を目指せ、かつ体への負担も少ない治療法として知られる光線力学的療法。その適応は? 治療の流れは? 専門家に話をうかがった。

化学放射線療法や放射線治療では 食道を温存できる一方、再発するケースも

食道がんに対して、化学療法と放射線治療を組み合わせた化学放射線療法は、食道を温存しながらの治療が可能で、病期(ステージ)によっては手術と同等という治療成績も報告されるなど、効果の高い治療法として知られている。とくに食道がんの手術は体への負担が大きく、高齢者や他に疾患を抱えるなどの理由で手術が難しい患者に対して、化学放射線療法は標準治療として位置づけられている。このように、食道を温存できる点では大きなメリットがある一方で、化学放射線療法には課題もあるという。

「手術をせずに、化学放射線療法や放射線治療を行った患者さんの約30~40%に、がんが残存したり、再発してしまうケースが見られます」

こう指摘するのは、国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科医長の矢野友規さんだ。

「化学放射線療法や放射線治療では、食道を残したまま治療するので、がんが治りきらなかったり、再発したりする患者さんが一定の割合でおられます。その一方で、手術の場合、最初からがんが存在する食道を切除してしまうので、局所再発や、遺残といってがんが取り切れずに残ってしまうことは、ほとんどありません」

化学放射線療法や放射線治療では、食道を温存できる点が最大のメリットではあるが、その一方で治療においては不確実性が伴うというデメリットがあるという。

再発した部位によって異なる 救済治療の内容

化学放射線療法や放射線治療を行ったものの、がんが残ってしまったり、再発してしまった場合、当然治療が必要となる。この場合に行う治療を〝救済治療〟と呼ぶが、がんが食道の局所にのみ留まっているのか、それとも他の部位(臓器)に広がっているかによって、治療内容は異なってくる(図1)。

図1 食道がん化学放射線療法、放射線治療後の救済治療の選択肢

●がんが食道局所+周囲リンパ節に存在

化学放射線療法や放射線治療後に、がんが食道局所および周囲リンパ節に存在している場合、手術が選択される。ただし、手術が難しい場合には化学療法、化学療法も難しい場合には、ベストサポーティブケア(BSC)が行われる。

●がんが食道局所+他臓器に転移

がんが食道局所に留まらず、他の臓器にも転移していた場合、化学療法が選択される。

●がんが食道局所のみに存在

がんが、食道局所のみに留まっている場合、治療選択肢は複数存在する(図2)。

図2 光線力学的療法の適応(食道がん化学放射線療法、放射線治療後に食道局所のみにがんが残存、再発した場合)

「食道局所のみに存在していた場合、がんがどこまで浸潤しているかによって、治療法は異なります。まず、がんがごく浅く、粘膜層の中だけに留まっていれば、内視鏡で切除することが可能です。その一方で、がんが固有筋層の深くまで浸潤していた場合、手術しか治療する方法はありません。

そして、もしがんが、粘膜下層から固有筋層の浅い部分に存在していた場合、以前は、手術しか治療法がなかったのですが、現在はここに光線力学的療法という治療が加わっています」

初回手術と異なり、放射線照射後に行う救済手術は、一般的に難しいとされる。放射線照射によって組織が線維化し、癒着を引き起こし、手術に伴う合併症の頻度も高い。そうした中、治療選択肢の1つとして光線力学的療法が加わったことは、患者にとって朗報と言えるだろう。

患者への負担が少ない光線力学的療法

では、光線力学的療法とはどういった治療法なのか。これは、レーザー治療の1つで、腫瘍親和性の高い薬剤(光感受性物質)を静脈内に注射投与(静注)し、その後、病巣部分にレーザー光を照射することで光化学反応を引き起こし、腫瘍を壊死させる方法(図3)。この治療で使用する光感受性物質は、正常な部位よりもがんに集積する性質があるので、正常組織にはダメージを与えず、がんだけを選択して治療することが可能だ。

図3 光線力学的療法とは?

矢野さんの所属する国立がん研究センター東病院では、2002年ごろから、化学放射線療法や放射線治療後に再発・遺残した(治療しきれないで残ってしまった)食道がんに対して、光線力学的療法を取り入れた治療を行っている。

「内視鏡切除術では取り切れない、より深い所まで治療効果が及ぶということで、光線力学的療法を取り入れています。もし、光線力学的療法が適応となる場合、患者さんの希望、全身状態(PS)、合併症の有無などを十分考慮して、光線力学的療法にするのか、手術にするのかを選択し、治療にあたっています」

治療導入当初は、光感受性物質としてフォトフリンという薬剤と、レーザー装置として、エキシマダイレーザという医療機器を用いた治療が行われ、その有用性について、矢野さんは09年の米国消化器内視鏡学会でも報告している。

「進行した食道がんで、化学放射線療法後にがんが残存してしまったり、再発した患者さんを対象に、救済治療として光線力学的療法を行ったのですが、救済手術と比較して、生存率という点からも遜色のない結果が出ました。ただし、フォトフリンによる治療は、日光過敏症を引き起こす可能性があるため、治療後に1カ月半ほど遮光期間が必要で、これは患者さんにとってかなり負担を強いるものでした。遮光期間を設けないと、皮膚に発疹や水ぶくれなど、過度に日焼けしたような症状が出てしまうためです。フォトフリンでは、約35%の患者さんに、日光過敏症の合併症が起きていました」

また、レーザー照射に必要な装置が、その後市販されなくなってしまい、メンテンナンスが困難となる事態にも陥ってしまったという。

何とか、光線力学的療法を続ける方法はないか、より患者の負担が少ない治療法はないか――。そうした状況の中、矢野さんたちが注目したのが、03年に早期肺がんで保険適用になっていた、新しい光感受性物質レザフィリンを使った光線力学的療法だった。

フォトフリン=一般名ポルフィマーナトリウム レザフィリン=一般名タラポルフィンナトリウム

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