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東大病院「チームネクサバール」の取組み
医師、薬剤師、看護師が連携して抗がん剤の副作用をマネジメント

監修:淺岡良成 東京大学医学部付属病院消化器内科助教
取材・文:七宮 充
発行:2012年10月
更新:2019年7月

  
淺岡さん
「チームネクサバールが診療科の壁を越えるモデルなれば」と話す
淺岡さん

分子標的薬ネクサバールは治療開始比較的早期に皮膚の副作用が出やすく、それが重症化すると治療が継続できなくなることがあります。
そこで、東京大学医学部付属病院では、医師、薬剤師、看護師が連携し、チーム医療で副作用のマネジメントに取り組み、大きな成果を上げています。

肝がん、主体は手術などの局所療法

肝がんで亡くなる人は、年間約3万5000人。肺がん、胃がん、大腸がんに次いで第4位です。日本人の場合、とりわけ多いのが肝臓にがんができる「肝細胞がん」と呼ばれるタイプで、その8割がC型およびB型肝炎ウイルスによるものですが、最近は脂肪肝など生活習慣病に起因する肝がんも少しずつ増えています。

現在、肝細胞がん(以下肝がん)治療の主力となっているのは、手術(肝切除)、ラジオ波焼灼療法(RFA)、塞栓療法の3つです。どの方法を選択するかは、肝臓内にできたがんの数や大きさ、転移の有無、そして肝機能がどれだけ正常かどうかなどを調べ、総合的に判断します(図1)。

「たとえば、肝臓内にできたがんが2~3個で、大きさが3㎝以内、肝機能が比較的良好なら第1選択は手術ですが、患者さんの負担軽減を考えてラジオ波焼灼療法を選ぶこともあります。また、がんが3㎝を超えている場合は、手術に加えて、塞栓療法も選択肢に入ります」と、「チームネクサバール東大」を率いる東京大学医学部付属病院消化器内科助教の淺岡良成さん。

チームネクサバールとは、肝がんの治療薬であるネクサバール()の適正使用を進めるため、関係する診療科の医師やコ・メディカルが一緒になって作ったチームになります。

このように、がんができた部位を切除したり、焼き切ったり、兵糧攻めする方法を「局所療法」といい、肝がんではこの局所療法が過去20年間で著しく進歩し、治療成績が向上してきています。しかし同療法の適応になるケースは限られています。現実には、がんが肝臓内に多く散らばったり、他の臓器に転移したり、肝機能が著しく低下していたりして、手術やラジオ波焼灼療法などができないケースが多いのです。

では、このような進行性肝がん患者さんにどう対処するのか。頼みの綱は抗がん剤ですが、肝がんの場合、「他のがんで有効とされるシスプラチンや5-FUなどが効くのは一部の症例のみで、打つ手がない」(淺岡さん)のが実情でした。

[図1 JSHコンセンサスに基づく肝細胞がん治療のアルゴリズム2010]
図1 JSHコンセンサスに基づく肝細胞がん治療のアルゴリズム2010

日本肝臓学会編:肝癌診療マニュアル第2版、医学書院、125(2010)より

ネクサバール=一般名ソラフェニブ

抗がん剤治療にも新星が

そうした中で新たに登場したのがネクサバールです。がんの進行に影響を与える特定の分子に作用する分子標的薬で、①がん細胞の増殖を抑える、②がん細胞に栄養を送る新しい血管が作られるのを邪魔する、という2つの働きによって、がんの進行を食い止めます。その効果は、欧米を中心とした臨床試験(SHARP試験)で実証され、進行性肝がん患者さんの生存期間を有意に延長させることが明らかにされました。


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