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再発肝がん:肝臓の障害度に応じた治療を選ぼう 肝がんは再発頻度は高いが、手術などさまざまな選択肢がある

監修●川崎誠治 順天堂大学医学部附属順天堂医院肝・胆・膵外科主任教授
取材・文●町口 充
発行:2013年5月
更新:2019年11月

  

肝切除術と肝移植手術を数多く手がける川崎誠治さん

手術でがんを切除できても、再発率が高いのが肝がん。ただし、再発しても再び手術できるほか、ラジオ波焼灼療法や肝動脈塞栓術、肝動注化学療法、さらには肝移植や分子標的薬による治療などもある。患者さんの状態に合ったより適切な治療選択が可能となっている。

5年後の再発率は8割

■図1 肝がんの特徴

肝がん(肝細胞がん)は再発の割合が高く、切除手術でがんを取り切れても5年後の再発率は約8割にものぼる。

なぜ再発が多いのか、順天堂大学医学部附属順天堂医院肝・胆・膵外科主任教授の川崎誠治さんは次のように語る。

「肝がんの再発には2種類あります。1つは『遺残再発』といって、手術などできちんと治療できたと思っても、取り残しがあったり、画像診断でもわからない小さながんが残っていて、それが大きくなって再発するケースです(図1)。

もう1つは多中心性発がんと呼ばれます。肝がんの9割はウイルス性肝炎(日本ではC型肝炎が7割、B型肝炎が2割)が重くなった状態で発生しており、肝臓のほかの部分もがんができやすい状態になっています。そのため、1カ所をしっかりと治療しても、別の場所から新たにがんが見つかることがあり、これが多中心性発がんなのです」

再発する場所はほとんどが肝臓内というのも肝がんの特徴だ。リンパ節や肺、骨への転移もあるのだが、比較的少ない。

遺残再発はだいたい2年以内に起こり、2年以上たってから見つかるのはほとんどが多中心性のがん。数のうえでも全体の8割は多中心性である。

初発のがんに準じた治療

■図2 肝がん治療アルゴリズム

このように、肝がんの再発の多くは、最初に見つかったがんと同じタイプであるため、治療も初発のがんに準じた治療を行うことになる。

その結果、日本の5年生存率は55%と比較的良好である。単純に比較はできないものの、順天堂医院では5年生存率が70%近くにまで達しているという。

具体的な治療法の選択の指針となるのが、『肝癌診療ガイドライン』だ。ケースに応じた治療法を示したアルゴリズム(手順)をもとに決められる(図2)。

肝がんの治療法は主に、①手術による切除(外科療法)②体の外から針を刺してラジオ波で焼いたり、エタノールを注入してがんを殺す局所療法③肝臓に栄養を送る動脈をふさいでがんを“兵糧攻め”にする肝動脈塞栓療法――の3つだ(表3、図4)。ほかに、外科療法では肝移植、抗がん薬を用いた治療では肝動注化学療法などがある。

■表3 肝がんの治療法
■図4 肝がん治療後の生存率

第17回全国原発性肝がん追跡調査報告より作成

再発でも手術が有効

実際の医療の現場ではどの治療法が選択されているかというと、初発のがんでは肝切除、局所療法、塞栓療法がそれぞれ3分の1ずつだ。

では、再発の場合はどうか。

患者さんの肝機能に問題がなく、がんが3個以下で、手術で取り切れると判断された場合は手術が行われる。川崎さんらが行った検討からは、再発肝がんに対して再切除を行ったほうが、切除しなかった場合よりも予後が良好であることがわかっている。

切除手術の成績は最近の20年で格段に向上している。出血を最低限に抑える技術の進歩などにより、手術死亡例は0.8%にまで減っている。手術は、かなり安全性の高い治療法なのだ。

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