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新薬の臨床試験でQOL改善効果を確認

初となる治療薬登場の可能性 肺がんに対するがん悪液質対策

監修●横山琢磨 杏林大学医学部付属病院呼吸器内科助教
取材・文●池内加寿子
発行:2016年3月
更新:2016年5月

  

「がん悪液質に対する新たな治療手段が出てくることを期待しています」と語る横山琢磨さん

肺がんの進行期でしばしば見られることの多いがん悪液質。現在のところ有効な治療法はなく、この病態になると、食事が食べられなくなり、どんどん体重が減少し、それに伴い倦怠感も出現してきて、QOL(生活の質)が著しく低下してしまうのが問題になっていた。そうした中、新たな薬の開発が進んでいる。臨床試験においてQOL改善効果も認められたという。

がん悪液質とは?

「肺がんでは、手術可能な場合は治癒を目指すことができ、予後も良好ですが、手術が困難な進行がんの場合は楽観視できない状況に陥ることが多いと言えます。とくに、手術不能の進行がん(主にⅢ(III)期またはⅣ(IV)期)の6割程度に〝がん悪液質〟を伴うと言われています」

と、肺がん治療に取り組む杏林大学医学部付属病院呼吸器内科助教の横山琢磨さんは指摘する。

よく耳にする「悪液質」とは、そもそもどういう状態を指すのだろうか。

「悪液質はがんだけではなく、呼吸器の病気ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)でも起こりますし、その他慢性腎不全でも起こることがあり、がんの場合は〝がん悪液質〟と言います。悪液質とは、経口摂取が困難となり、点滴等の栄養サポートでは改善できない進行性の機能障害、とくに〝筋組織の減少に伴う体重減少の病態〟を指します」

つまり、食欲不振となって食事が食べられなくなり、点滴等の栄養補給をしても改善されず、筋肉が落ちて体重が減っていく病態だ。

では、がんの場合、なぜ悪液質に陥るのだろうか。

「近年の研究で、がんの進行に伴う代謝異常に加えて、腫瘍組織が産生するインターロイキン-6(IL-6)などの炎症性サイトカインの関与が解明されてきています。炎症性サイトカインにより、発熱、食欲不振、体重減少などの全身炎症が引き起こされ、タンパク合成ができなくなり、採血検査をするとアルブミン(タンパク質の指標)低下や、CRP(C反応性タンパク)値(炎症反応を調べる指標)の上昇などが見られます。

さらに骨では破骨細胞が活性化して骨転移が進み、骨髄では貧血等が起こり、進行していきます。食欲不振や発熱があれば倦怠感も出てきますし、患者さんのQOL(生活の質)も低下してきます」

がん悪液質の診断基準

悪液質の診断には、EPCRC(ヨーロッパ緩和ケア共同研究)による診断基準が用いられることが多いという(図1)。

図1 EPCRCによるがん悪液質の診断基準

出典:Fearon K, et al. Lancet Oncol. 2011;12:489-495 改訂

「この診断基準によると、実は悪液質になる前の段階があり、体重減少が5%以下で、食欲不振、代謝異常を伴う病態は〝前悪液質〟と呼ばれています。そして〝悪液質〟とは、❶5%以上の体重減少、または❷体重減少(2%より大)+BMI(ボディー・マス・インデックス)が20%未満、または❸体重減少(2%より大)+サルコペニア(骨格筋量の減少、骨格筋力の低下)のいずれか1つに、経口摂取不良や全身炎症を伴う状態です。

さらに、〝難治性悪液質〟という段階まで進むと、治療が困難で生命予後も3カ月未満という状況になります。

この3つの段階ははっきり分けられるわけではありませんが、一般的には前悪液質、悪液質までの段階では可逆的(治療が可能)であるのに対して、難治性悪液質になると不可逆的(治療は難しく元に戻ることが不可能)と言われています」

がん悪液質が進んでくると患者さんは、倦怠感が強くて動けなくなる、歩行が困難になるなど、段々と日常生活に支障を来してしまうことも多いという。

がん悪液質の治療には、ステロイドを投与

がん悪液質の治療の手立てはあるのだろうか。

「前悪液質、悪液質までの段階なら、抗がん薬や分子標的治療薬などで可能な限りの治療を行います。抗がん薬等でがんの勢いを止めることで、悪液質の状態から脱することができる方もいます。例えば、非小細胞肺がんでEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異陽性の場合は、イレッサなどの治療介入により、生命予後が18カ月程度まで延びるという報告もあります」

抗がん薬治療を行う場合には体力が必要なので、一般的には全身状態(PS:パフォーマンスステータス)が0~2(症状がない~日中の半分以上は起きて過ごす)の状態で、通院可能な場合に治療可能となる。EGFR陽性の場合は、PS3~4でもイレッサなどの分子標的治療薬による治療が可能になることもある。

「〝難治性悪液質〟の状態のような、炎症性サイトカイン過剰のがん悪液質に対して有効とされているのは、現在のところ、抗炎症薬のステロイド(経口または点滴)だけです。ステロイドで炎症を抑えると、発熱や倦怠感、食欲低下を改善できることがあります。

ただ、長期のステロイド投与は免疫力の低下等につながり、また、がんも進行してくるため限界があると言えるでしょう。難治性悪液質の段階では、治療できる体力はなく、ステロイドで多少改善できても、栄養が入らないので回復は困難です」

この他、悪液質を改善させる栄養成分としてEPA(エイコサペンタエン酸)や栄養補助食品などが検討されているが、エビデンス(科学的根拠)を得られる結果は出ていないそうだ。

家族としては、体力がなくなっていく患者に対して何かしてあげたい、少しでも体に良いものを食べさせてあげたいと思うものだが、それに対して横山さんは「悪液質に陥った患者さんには、ご本人が食べたいと思うものを、食べたいときに食べていただくのが良いでしょう」と話す。悪液質は患者のQOLを著しく低下させてしまう病態なので、たとえエビデンスが確立していなくても何か食べられるものを食べることで、「低下しているQOLの中で、何らかの満足感を感じてもらうことが大事です」と話す。

イレッサ=一般名ゲフィチニブ

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