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腹腔内化学療法の臨床試験も進行中

進行卵巣がんの治療は手術と化学療法を組み合わせて行う

監修●藤原恵一 埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2016年6月
更新:2016年8月

  

「進行卵巣がんの治療は今後さらに進むことが期待されます」と
話す藤原恵一さん

卵巣がんは早期発見が難しく、発見された時点で進行がんになっているケースが多い。その場合、治療は手術だけでなく、化学療法も組み合わせることが必要になる。手術と化学療法をどう組み合わせるのか?化学療法の有効な投与法とは?期待される腹腔内化学療法の効果は?――進行卵巣がんの最新治療について専門医に話をうかがった。

がんが発見された時点で 進行がんのケースが多い

卵巣がんは、がんが卵巣内に限局しているものがⅠ(I)期である。Ⅱ(II)期はがんが骨盤内の臓器に広がった状態、Ⅲ(III)期はがんが骨盤外に出て腹腔に広がった状態、そして腹腔を越えて転移が起きている場合がⅣ(IV)期とされている。卵巣がんの場合、Ⅱ(II)期以降を進行がんと呼んでいる(表1)。

表1 卵巣がんの進行期

埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科教授の藤原恵一さんによれば、卵巣がんは発見された時点で進行がんになっているケースが非常に多いという。

「進行がんで見つかることが多いのは、自覚症状がほとんどないのに加え、有効な早期発見の方法が今のところ開発されていないためです。多くはⅢ(III)期以降に進行した状態で発見され、そこから治療を開始することになります」

卵巣がんの病期は、実は手術をしてみないと正確にはわからない。手術をして、浸潤の状況や転移の状況が明らかにならないと、最終的な病期の診断はできないのである。

最初から大きな手術か あるいは化学療法後に手術

卵巣がんで手術を行う場合には、肉眼的に見えるがんをすべて取り除くことが求められるという。

「肉眼的にがんをゼロの状態にできれば、生存期間が延びるなど、予後が改善します。しかし、肉眼的に見えるがんが残ってしまったら、予後は手術しなかった場合と変わらない、というデータがあるのです。予後が同じなら手術しないほうがいいわけですから、手術を行うのであれば、肉眼的にゼロの状態にしなければなりません」

しかし、卵巣がんは、腹膜播種のように広い範囲に転移するケースが多くあり、大腸などに浸潤することもある。肉眼的に見えるがんをすべて取り切るとなると、相当大きな手術になることもあり得る。

「卵巣がんは腹腔全体に広がってしまうので、手術で見えるがんをすべて取り除くとなると、腸を切除したり、横隔膜を剥がしたりと、とても大きな手術になってしまいます。当然、合併症は多くなります。さらに、進行がんなので手術だけで治療が終わりになるわけではなく、抗がん薬による化学療法がどうしても必要です」

手術が大きくなると、その後に化学療法を行うのは大変そうだ。実際、手術による負担が大きいために、狙い通りの化学療法ができない場合が出てくる。

「ここでよく考えなければならないのは、手術が大切なのか、化学療法が大切なのか、ということです。再発が起こるのは、目に見えない微小ながんが全身に行っているためですから、化学療法は必ず行わなければなりません。患者さんにとって負担の大きな手術を行うことで、全身状態(PS)が悪くなり、抗がん薬が投与できなくなるような事態だけは避けなければならない、と私は考えています」

最初からがんを最大限に切除する手術を、初回腫瘍減量手術(プライマリー・デバルキング・サージャリー:PDS)という。これだと大きな手術を行うことになるので、術前化学療法でがんを小さくしてから手術するというやり方もある。この手術は中間腫瘍減量手術(インターバル・デバルキング・サージャリー:IDS)と呼ばれている。

中間腫瘍減量手術を行う場合には、まず小さな開腹手術を行い、そこで卵巣だけ摘出するか、あるいはがんの一部を切除する。その組織を調べてがんの組織型を明らかにし、術前化学療法を開始するのである。それでがんを小さくしてから、中間腫瘍減量手術が行われる。この方法だと、比較的小さな手術で済むことが多い。

「初回腫瘍減量手術を行った場合と、術前化学療法を行ってから手術した場合の比較試験では、予後はまったく変わらず、QOL(生活の質)は術前化学療法を行ったほうが高くなるという結果が出ています」

頑張って大掛かりな手術を行っても、生存期間は全く延びず、むしろQOLを低下させてしまうという結果が出ているのである。

術前・術後の化学療法は 効果の高い併用療法を選ぶ

術前化学療法で行われるのは、「タキソール+カルボプラチン併用療法」である。術前に3~5コース行い、がんが十分に小さくなった時点で、中間腫瘍減量手術を行う。そして、手術後も3コースほど行うのが一般的だ。

タキソールとカルボプラチンの併用療法には、2通りの投与方法がある。1つは、両方の薬剤を3週間毎に投与するTC療法。もう1つは、タキソールを毎週投与し、カルボプラチンは3週間毎に投与するdose dense TC療法(ddTC療法)である(表2、図3)。

表2 TC療法とdose dense TC療法

[参考]日本婦人科腫瘍学会 編. 卵巣がん治療ガイドライン 2010年版(金原出版) p48-51, 2010
図3 dose dense療法の考え方

密度の濃い投与でがん細胞を効果的にたたく

「この2つの投与方法を比較する臨床試験が行われていますが、無増悪生存期間(PFS)でも、全生存期間(OS)でも、dose dense TC療法のほうが優れていることが明らかになっています。生存期間を延長した治療法は尊重されるべきだと思います」

できることならdose dense TC療法を受けたほうが良い、ということである。

TC療法の場合には、分子標的薬のアバスチンを併用することができる。TC療法とTC療法+アバスチンの比較試験も行われていて、アバスチンを併用することで、無増悪生存期間が延びるという結果が得られているのだ。ただし、アバスチンを加えても、全生存期間は延長しなかった。

「TC療法よりも優れているdose dense TC療法にアバスチンを加えれば、もっと良いのでは、と考える人がいますが、実際はそうではありませんでした。dose dense TC療法と、dose dense TC療法+アバスチンを比較した臨床試験の結果が出ていますが、アバスチンを加えても予後は変わらなかったのです。効果があるもの同士を組み合わせても、もっとよくなるとは限りません。アバスチンは再発の治療では有効なのですが、dose dense TC療法に組み合わせても役に立たないのです」

手術で肉眼的に見える腫瘍を取り除き、化学療法を終えたところで、初回治療は終了となる。

タキソール=一般名パクリタキセル カルボプラチン=商品名パラプラチン アバスチン=一般名ベバシズマブ

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