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卵巣がん化学療法に増える選択肢 適応拡大のリムパーザと遺伝子検査なしで使える新薬ゼジューラ

監修●平嶋泰之 静岡県立静岡がんセンター婦人科部長
取材・文●半沢裕子
発行:2021年2月
更新:2021年2月

  

「ゼジューラは、遺伝子検査をしなくても1次治療で使えることが患者さんにとって大きな利点です」と語る平嶋泰之さん

分子標的薬のPARP阻害薬はここ数年の卵巣がんにおけるトピックの1つだ。日本では、2018年1月、リムパーザが初めて「プラチナ製剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」で承認された。その後2019年6月「BRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの初回化学療法後の維持療法」で、さらに2020年12月「相同組み換え修復機能欠損を有する卵巣がんにおけるアバスチン(遺伝子組み替え)を含む初回化学療法後の維持療法」に適応が拡大された。

また、同じ作用機序のPARP阻害薬ゼジューラが2020年11月から使用が可能になった。こちらは遺伝子検査なしで初回から使える強みがある。卵巣がんにおけるPARP阻害薬の位置づけや可能性について聞いた。

早期発見が難しく、再発率が高い卵巣がん

卵巣がんは早期発見がむずかしいがんの1つだ。診断時には5~6割の患者さんがⅢ期、Ⅳ期に進行していることが多く、また、他のがん種より再発率が高いといわれている。

治療はまず手術が行われ、ごく早期以外は術後に再発を防ぐため化学療法(維持療法)が行われる。その代表はタキサン系製剤とプラチナ系製剤の併用療法であるTC療法[タキソール(一般名パクリタキセル)+パラプラチン(同カルボプラチン)]だ。しかし、TC療法後でも再発の可能性はなお高く、新しい薬剤の登場が待たれていた。

そこに登場したのが、血管新生を阻害する分子標的薬アバスチン(一般名ベバシズマブ)だった。アバスチンは、がんが産生する血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体薬で、Ⅲ~Ⅳ期の進行した卵巣がんに対し、術後にTC療法+アバスチンの併用療法を行い、その治療が終った後にアバスチン単剤で維持療法を行ったところ、無増悪生存期間(PFS)が、TC療法のみに比べて有意に延長することが国際共同第Ⅲ相臨床試験「GOG-218試験」で確認された。そこで2013年、アバスチンは卵巣がんに適応になり、現在、進行卵巣がんに対する術後の初回治療の標準治療の1つとなっている。

再発した進行卵巣がんで効果が得られたPARP阻害薬リムパーザ

しかし、アバスチンを併用してもなお再発率の高い卵巣がんでは、次の薬が待たれていたところに、世界で次々承認されているのが分子標的薬のPARP阻害薬だ。

ヒトのDNAは、日々様々な刺激により傷を受けているが、正常な細胞ではその傷は修復される。PARP(ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)という酵素は、DNAの一本鎖切断(DNAの損傷のタイプ)を認識、塩基除去修復タンパクを運んで修復する働きを持ち、BRCA1、BRCA2は、相同組み換え修復に関連し、二本鎖切断(同じくDNAの損傷のタイプ)を修復する働きを持つ(図1)。

つまりDNAは、PARPとBRCA1/2の2種類の修復機能で守られているのだが、BRCA1/2が変異すると相同組み換え修復ができなくなる。そこでPARPの働きを阻害することで細胞死を誘導するというのがPARP阻害薬の主な作用機序である。

BRCA遺伝子変異陽性卵巣がんでは初回治療後の維持療法に

2018年1月、日本で最初に卵巣がん治療薬として承認されたPARP阻害薬はリムパーザ(一般名オラパリブ)で、「プラチナ製剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」が対象だった。

その後2019年6月、「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」に対し、適応が拡大された。これによりBRCA遺伝子変異陽性でプラチナ製剤が効いた患者さんに対して、維持療法に使えるようになったのだ。

この適応拡大のもとになったのは国際共同第Ⅲ相試験「SOLO1試験」で、リムパーザ投与群は無増悪生存期間(PFS)に有意な延長を示し、2018年10月時点でPFS中央値はリムパーザ投与群が未到達(生存率曲線が50%を下回っていない状態)、プラセボ投与群が13.8カ月という結果だった(図2)。

さらに2020年9月、オンラインで行われた欧州臨床腫瘍学(ESMO)では、「SOLO1試験」の5年間の追跡調査が発表された。

結果は、リムパーザは病勢進行または死亡のリスクを67%低減し、PFS中央値を56.0カ月と驚異的に延長(プラセボ投与群は13.8カ月)。

5年の時点で病勢進行が認められなかった患者さんの割合はプラセボ投与群20.5%に対し、リムパーザ投与群は48.3%。つまり、5年間がんが進行せず病勢が安定している人が半数近くに達している。

「当科では、これまでに35人の患者さんにリムパーザを投与してきました。再発時が32例、初回治療での投与が3例です。35例ではリムパーザの効果を正確に検証することはできませんが、再発例における病状増悪までの期間に着目しました。通常はこの期間は前回より短くなるのですが、リムパーザを投与した人では約35%が前回よりすでに長くなっており、効果が現れているものと考えています」と、「SOLO1試験」に参加した静岡県立静岡がんセンター婦人科部長の平嶋泰之さんは、臨床現場におけるリムパーザの効果について語った。

「副作用で多いのは貧血で、当科では臨床試験より多く出ています。しかし、それ以外の副作用は軽く、副作用による投薬中止になったのは1例のみです。貧血、倦怠感がともにグレード3で中止としました。それ以外は副作用が出ても、休薬や減薬で治療を継続しました。その後、病勢進行で投薬を中止した患者さんは15例ですが、3カ月以上投与できました」

相同組換え欠損をターゲットにした最初の標準治療薬に

実際、リムパーザではさまざまな薬剤との組合せの効果と安全性を検証する臨床試験が各国で行われており、日本でも2020年12月、「相同組換え修復欠損を有する卵巣がんにおけるアバスチンを含む初回治療後の維持療法」に適応拡大された。初回治療後の維持療法で、アバスチンとの併用が可能になったのだ。

適応拡大のもととなったのは国際共同第Ⅲ相試験の「PAOLA-1」試験。

進行卵巣がんを対象として全症例の解析ではリムパーザとアバスチンの併用療法による維持療法が、アバスチン単独療法に比べ、無増悪生存期間の延長を示した(併用群22.1カ月vs.アバスチン単独群16カ月)。またサブグループ解析では、HRD陽性症例においては無増悪生存期間の大幅な延長を示した(併用群37.2カ月vs.アバスチン単独群17.7カ月)。

相同組換え修復欠損(HRD)とは、DNAの二本鎖を修復する「相同組換え修復」に異常があることを意味し、BRCA遺伝子変異はじめ、多くの遺伝子異常を含む。HRDが認められる症例ではPARP阻害薬の効果が顕著とされている。

今回の保険適応の追加で、初回治療においてリムパーザとアバスチンの併用維持療法が可能となったが、HRDであると検査で確認できた卵巣がんに限定されている。このHRDは現在、分子標的薬の新たな標的として注目されている。

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