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患者さんが知っておくべき知識として役立ててほしい
「卵巣がん治療ガイドライン」のポイントをわかりやすく

監修:鈴木光明 自治医科大学産科婦人科学講座教授
取材・文:高田昌彦
(2007年10月)


鈴木光明さん
自治医科大学
産科婦人科学講座教授の
鈴木光明さん

「卵巣がん治療ガイドライン」は2004年版を一部改定し、新しく2007年版が発刊された。今回、作成委員会の委員長である自治医科大学産科婦人科教授の鈴木光明さんに、患者として知っておくべきガイドラインのポイントについて、2007年版に即して解説していただいた。

卵巣がんは早期発見が難しい

[卵巣の構造]
図:卵巣の構造
[女性骨盤内部と子宮付近]
図:女性骨盤内部と子宮付近

卵巣は子宮の左右に一対ある親指くらいの大きさの楕円形の臓器だ。周期的に女性ホルモンを分泌し、卵子はここで成熟する。妊娠出産に不可欠な臓器である。卵巣がんに罹患する人の数は、日本では年間6000人~8000人と推定されている。毎年4000人以上が亡くなっている死亡率の高いがんである。

卵巣の細胞はひとの体のもとになる細胞であるから、様々な腫瘍が発生する。そのため卵巣がんは数10種類もあり、それぞれが固有の特徴をもっている。そのうちの8割くらいを占めるのが、卵巣の表層上皮に由来する「上皮性卵巣がん」だ。この上皮性卵巣がんの発症年齢のピークは50~60歳にあるので、卵巣がんは更年期から閉経後の女性に発症しやすいがんといえる。

卵巣がんの死亡率が高いのは、早期発見が難しく、転移してから受診する方が多いためだ。5年生存率をみると、1期で90パーセント、2期で70パーセントくらいだが、骨盤外の転移が認められる3期では35パーセント、4期になると25パーセントと急落していく。3期、4期になってから、卵巣がんに気がつくケースが過半数なのだ。

なぜ早期発見が難しいのだろうか。

鈴木さんによると、卵巣がん特有の性質のためだそうだ。

「子宮がんなら不正出血、大腸がんだったら血便、あるいは胃がんならむかむかする、食道がんだったら食べ物が喉につっかえるといった特徴的な自覚症状がありますね。しかし、卵巣がんはただお腹が大きくなるだけなんです。女性は妊娠によりおなか(子宮)が大きくなる経験をしていますので、卵巣が10センチあるいは20センチくらい大きくなってもほとんどの場合、何も症状を感じないのです」

早期発見、早期治療ががん医療の最大の戦略であるが、卵巣がんはそうはいかないらしい。腫瘍がかなり大きくなってから、おなかが張る、チクチクするなどの腹部の違和感が出てくる。不正性器出血や性器周辺の不快感を伴うこともある。子宮がん検診のときに内診も行い、卵巣が腫れていないかどうか確かめていくことで、少しは早期に発見できる可能性もあるかもしれない、と鈴木さんは言う。


数カ月で進行がんに

もう1つ、早期発見しにくい理由に卵巣がんの進行速度がある。

「子宮がん、胃がん、大腸がんは、段階を踏んで進行していきます。前がん病変があって初期のがんになり、それから進行がんになる。進行がんになるまでに何年もかかることもあり、早期発見が可能です。ところが卵巣がんの場合は、半数以上が初期の病変を経由せずに、いきなり進行がんになってしまいます。卵巣がんは種類が非常に多いので例外もありますが、大半の卵巣がんは、数カ月の間にお腹のなかに転移のある進行がんなのです。」

1年前に検査(内診)したときは何でもなかったのに、1年後には大きながんになってお腹が腫れていたなんてことは、卵巣がんに関してはありうるのだそうだ。

[婦人科がんにおける死亡数]
図:婦人科がんにおける死亡数
[卵巣がんの進行期別の5年生存率
図:卵巣がんの進行期別の5年生存率

卵巣がんの診断

内診や超音波などで卵巣の腫瘍が疑われた場合は、CTMRIなどの画像診断によって、腫瘍の位置、大きさ、腫瘍内部の構造、両側性腫瘍かどうか、転移、腹水の有無などを詳しく検査する。良性か悪性かの判別のためには腫瘍マーカーも参考にする。卵巣がんのなかで最も多いタイプの漿液性腺がんはCA125という糖タンパクを産生するので、血液中に微量に存在するCA125を測定することで判定することができる。転移した卵巣がんではCA125が陽性であることが多く、血液検査だけで卵巣がんであることが確定できるが、早期がんではむずかしい。

卵巣がんの腫瘍マーカーは、さまざまなタイプのがんの特異性に合わせていくつもの種類があり、種類の違う腫瘍マーカーを組み合わせて検査を行うこともある。

画像診断や腫瘍マーカーで悪性か良性かの判別がつかない場合は、迅速病理検査ができる施設で、検査のための手術を受けることが必要となる。

[卵巣がんの治療フローチャート]
卵巣がんの治療フローチャート
[卵巣がんの病期]
病気
(ステージ)
診断
1期 a 片方の卵巣内にがんがとどまっている
b 両方の卵巣内にがんがとどまっている
c 片方または両方の卵巣内にがんがとどまっている。被膜が破綻し卵巣表面に腫瘍がある。腹水などに悪性細胞がみられる
2期 a がんは卵巣の周囲(卵管や子宮)に浸潤し、腹腔内にはがんがない
b 他の骨盤組織にがんが浸潤している
c 骨盤内にがんが浸潤し、腹水などに悪性細胞がみられる
3期 a 顕微鏡下で、骨盤外の腹腔にがんが転移している
b 肉眼で骨盤外の腹膜に転移している。がんの大きさは2センチ以下
c がんの大きさは2センチ以上で、骨盤外の腹膜に転移している。近くのリンパ節にも転移がある
4期 遠隔転移(肝臓など)している

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