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今ある治療薬の有効活用を促進

子宮体がんの治療は遺伝子診断による個別化治療へ

監修●織田克利 東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座生殖腫瘍学准教授
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2016年6月
更新:2016年8月

  

「患者数の増加と基礎研究の進歩により子宮体がんに対してより効果のある治療薬、独自の治療薬を模索する時代になりました」と
語る織田克利さん

子宮がんといえば子宮頸がんをイメージする人々が多い。しかし、現在は年間罹患数では子宮体がんが子宮頸がんを上回っている。以前はスポットライトが当たらなかった進行・再発がんに対する化学療法の考え方も変わり、柔軟な治療薬の使用と新薬に向けての遺伝子レベルの研究が進んでいる。

罹患数は右肩上がりで上昇中

図1 子宮の内部と周囲の臓器

(がん情報サービス「子宮体がん」一部改変)

「子宮体がんの罹患は右肩上がりで増えており、浸潤がんでは子宮頸がんを上回っています。子宮体がんが多い状況であることを、広く知っていただきたいと思います」

婦人科がんを専門とする東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座生殖腫瘍学准教授の織田克利さんは子宮がんの構成が変わったことを指摘する。

子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれ、胎児が育つ子宮体部の内腔を覆う子宮内膜から発生するがん(図1)。子宮頸部で発生する子宮頸がんとは性質も治療法も大きく異なる。年齢的には40歳代から多くなり、閉経を迎える時期以降の発症が多い(図2)。

国立がん研究センターの統計によると、子宮がん罹患者数の内訳は1975年ころには8:2ほどの割合で子宮頸がんが多かったが、子宮体がんが1990年代から急激に増え始め、2000年代に入ると子宮頸がんを追い抜いた。現在では子宮がんになる人は年間約21,000人で、子宮体がんが11,000人、子宮頸がんが10,000人という状況だ(図3)。

図2 子宮頸がんと子宮体がん:年齢階級別罹患率2011年

国立がん研究センターがん対策情報センター
図3 子宮頸がんと子宮体がん:罹患者数の年次推移

国立がん研究センターがん対策情報センター

高齢者に増えた予後の悪いタイプ

子宮体がんが増えた理由は、生活スタイルの変化が大きい。食生活の欧米化や肥満などでホルモンのバランスが崩れると、女性ホルモンのエストロゲンの作用が過剰になることがある。子宮内膜に対するエストロゲンの持続的な刺激があると、細胞の異常増殖によりがん化につながる。さらに織田さんは指摘する。

「もともと欧米では子宮体がんが多かったのですが、日本でも増えてきました。生活環境の変化という点で、忙しい女性が増えたこともあり、生理不順を放置することや、妊娠年齢が高齢化したり、出産しないで閉経を迎えたりするとリスクにつながります。

また、別の要因として〝顔つき〟の悪い、いわゆる予後の悪いタイプである漿液性腺がんが高齢者に増えています。高齢者の子宮体がんはホルモンに関係しないものが多いです。女性の寿命が伸びるのはよいことですが、高齢になるとどうしてもがんを発症しやすくなります。その流れで子宮体部のがんも増えています」

注目され始めた化学療法

子宮体がんの治療は、手術が第1選択となる。子宮とともに卵巣や卵管も含めて切除し、多くの場合、骨盤などのリンパ節も摘出する。放射線治療と化学療法は、手術ができないほど進行した場合や、手術後に再発のリスクを減らす目的で行われる(図4)。日本では主として化学療法が行われている。

図4 子宮体がんの病期と治療方法

日本婦人科腫瘍学会編「子宮体がん治療ガイドライン2013年版」(金原出版)一部改変

織田さんは、この中で化学療法に対する見方が近年変わってきたことを指摘する。

「子宮体がんは手術の治療成績がとてもよく、子宮を早い段階で摘出してしまえば手術だけでかなり治っています。手術の予後が良いから、化学療法を必要とするケースが多くないという現実があり、体がんに特化した薬剤の臨床試験、独自の治療というのがあまり注目されていませんでした。それが、患者数の増加と基礎研究の進歩により、子宮体がんに対してより効果のある治療薬、独自の治療薬を模索する時代になりました」

卵巣がんの治療薬を使えないか

現在、子宮体がんで承認されている抗がん薬は、タキソール、タキソテール、アドリアマイシン、シスプラチン、パラプラチンなど。織田さんはここに問題を指摘する。

「子宮体がんと卵巣がんはかなり似ていることが分かっています。遺伝子の基礎的研究でも、病理診断で形態(顔つき)を見ただけでも似ている組織型がたくさんあります。しかし、卵巣がんでは使えて、子宮体がんでは承認されていないという治療薬がたくさんあるのです」

卵巣がんだけで承認されているのは、イリノテカン、ドキシル、ハイカムチン、ジェムザール、アバスチンなど。逆に子宮体がんに使えて、卵巣がんに使えないという抗がん薬はない。

「卵巣がんのみで使用されている抗がん薬にも、子宮体がんに有効なものがあると思われます。しかし、適応拡大のための臨床試験が少ないのが実情です。子宮体がんでも使用しているタキソールにしても、卵巣がんで適応されてからしばらく経ってようやく適応拡大されました」

タキソール=一般名パクリタキセル タキソテール=一般名ドセタキセル アドリアマイシン/ドキソルビシン塩酸塩=商品名アドリアシン シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ パラプラチン=一般名カルボプラチン イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン ドキシル=一般名ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤 ハイカムチン=一般名ノギテカン ジェムザール=一般名ゲムシタビン アバスチン=一般名ベバシズマブ

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