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免疫チェックポイント阻害薬との併用療法で大きく前進 新たな進行期分類が登場した子宮体がんの現在

監修●山上 亘 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2024年6月
更新:2024年6月

  

「POLE変異だけを調べる検査が必要なのです。悪性度が高そうながんでも、POLE変異を持っていれば術後化学療法が必要ない場合もあります。見つけたいのは、そういったケースです」と語る
山上さん

子宮体がんの新しい進行期分類「FIGO2023」が公表されました。がんの広がりだけでなく、組織型や分子遺伝学的分類も加えたことで、予後をより正確に予測できるようになっています。しかし、分子遺伝学的分類のための検査が保険で行えないなどの問題点もあって、新しい進行期分類が日本でどのように使われるかは、まだ明らかにされていません。

進行再発子宮体がんの薬物療法は、LP療法が承認され、大きく変わりました。現在、免疫チェックポイント阻害薬を含む新たな併用療法の臨床試験が、複数進行中です。

子宮体がんは進行期がそのまま予後に直結しないのですか?

2023年に、子宮体がんの新しい進行期分類が、FIGO(国際産婦人科連合)により公表されました。それが「FIGO2023進行期分類」です。どこが新しくなったのかについて、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授の山上亘(やまがみ わたる)さんは次のように語っています。

「がんの進行期分類は予後(よご)に直結するもので、Ⅰ期なら予後がいいし、Ⅲ期、Ⅳ期なら予後が悪いと考えるのが普通です。ところが子宮体がんは、もともと組織型も重要な予後因子とされていて、進行期だけがそのまま予後に直結するとは限らないがんなのです」

子宮体がんには、類内膜がん、漿液性がん、明細胞がん、がん肉腫など、多くの組織型がありますが、類内膜がんが全体の8割ほどを占めています。この類内膜がんは、G1(高分化がん)、G2(中分化がん)、G3(低分化がん)に分類されますが、G1とG2は予後が良いことが知られています。それに対し、漿液性がん、明細胞がん、がん肉腫などは予後が悪いのです(図1)。

「組織型の影響が大きいため、たとえばⅠ期のがん肉腫のほうが、Ⅲ期のG1の類内膜がんより予後が悪かったりします。進行していても予後が良いがんもあれば、進行していなくても予後が悪いがんがある、というのが子宮体がんの特徴なのです」

新しい進行期分類「FIGO2023」とはどのようなものですか?

昨年公表された「FIGO2023進行期分類」は、こうした子宮体がんの特徴を究極まで反映させた進行期分類になっています。通常、がんの進行期分類といえば病変の広がりを示すものですが、「FIGO2023進行期分類」では、従来の病変進行に、「組織型」「脈管侵襲の程度」「分子遺伝学的分類」も盛り込んで、進行期が決定されるようになっています。

組織型」では、高分化で低リスクの組織型と、低分化で高リスクの組織型で、進行期を大きく変えるようになっています。「脈管侵襲」に関しては、転移しやすい因子の1つであるリンパ管侵襲や静脈侵襲は、予後に影響するので、進行期分類に反映させようということです。さらに、がんの遺伝子変異も予後に影響するので、「分子遺伝学的分類」も反映させた進行期分類になっています。

「予後に関係するものは全部入れるというのが、今回のFIGO進行期分類の基本的な考えです。そのため、予後をより正確に反映している進行期分類だと言えるでしょう」

従来の進行期分類と比べ、「FIGO2023進行期分類」がどのように新しくなったのか、具体的に見ていくことにしましょう。前述したように大きく変わったのはⅠ期とⅡ期で、Ⅲ期とⅣ期に関しては、細かい分類が少し変わっていますが、大枠は従来とほぼ一緒です。

従来ならⅠA期だったものが、組織型が高悪性度だということで、ⅡC期になっていたりします。また、高悪性度ではなくても、脈管侵襲があるとⅡB期になります。

「唯一の例外と言えるのが卵巣転移です。卵巣転移があると従来はⅢA期でした。ただ、類内膜がんのG1のようなおとなしいがんの場合、卵巣転移があっても、手術後の再発はほぼ起こりません。そうしたこともあって、卵巣転移があっても、ある条件を満たしていればⅠAとなっています」

日本では「FIGO2023進行期分類」は採用されるのですか?

日本で「FIGO2023進行期分類」を正式に採用するかどうかについてはまだ明らかになっていません。採用するのが難しいのは、分子遺伝学的分類が日本では保険収載されていないからです。

子宮体がんは、分子遺伝学的に4つに分類すると、きれいに予後が分かれます。

TCGA分類では図2のように分類します(図2)。

これを調べることができれば、予後がかなり正確に予測できることがわかっています。しかし、そのためには、POLE変異、MSI、コピー数変化など、遺伝子を細かく調べる必要がありますが、日常臨床で行うのは現実的ではありませんでした。

そこで、代替手段として出てきたのが、「ProMisE分類」です(図3)。

免疫組織化学染色検査で組織を染めることで、一部は遺伝子を調べなくても4つに分類できるようにしました。p53抗体と、MSIを調べるのに必要なMMRタンパクの免疫染色を行うことで、ある部分がクリアになるのです。

「ただ、このProMisE分類には問題があって、POLE変異の有無を調べるのに、どうしても遺伝子検査が必要なのです。POLE変異があるがんは最も予後がよく、ほぼ再発することはないため、術後の化学療法は必要ないことが多いと考えられています。ただ、POLE変異を調べるには、次世代シーケンサーで調べるか、遺伝子変異のホットスポットを狙い撃ちで遺伝子のシーケンスを調べる必要がありますが、これらの検査が保険に通っていません。それ以外の部分は保険が通っている免疫染色で対応できるのですが、POLE変異だけ分類できないのです」

POLE変異の検査ができないと、どのような場合に困るのでしょうか。

たとえば、p53抗体、MMR変異がすべて陽性になることがあります。このような場合でも、POLE変異さえ陽性なら予後は良好ですが、POLE変異を調べられないと、再発防止のための余剰な治療が行われることになってしまいます。

「たとえば、遺伝子パネル検査を全例で行うことができればPOLE変異はわかるのですが、子宮体がんは比較的予後が良いがんなので、遺伝子パネル検査を患者さん全員に行ったりするのは、医療費の無駄遣いと言えます。日本では、子宮体がんに対しては、腹腔鏡下手術やロボット支援手術といった低侵襲手術が広く行われていて、6割ほどの患者さんは術後化学療法を受けていません。そういった患者さんも含めて遺伝子パネル検査を実施するのは過剰診療になってしまうので、POLE変異だけを調べられる検査が必要なのです。形態学的に悪性度が高そうながんであっても、POLE変異を持っていれば、術後化学療法は必要ないケースが多いです。見つけたいのは、そういったケースです」

そのためにも、POLE変異の検査が保険収載されることが望まれています。

POLE(ポルイー)=DNAポリメラーゼℇのサブユニットで、DNA修復及び染色体DNA複製に関与する

MSI=マイクロサテライト不安定性。DNA複製時に生じる塩基配列の間違いを修復する機能低下により正常細胞と異なる反復回数を示す

MMR=DNA複製時に生じるミスマッチを修復して正常な遺伝子情報を維持する。MMR遺伝子に異常が生じるとMSIやがん化すると考えられている

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