知ってほしい「膵神経内分泌腫瘍」のこと 希少がんに生かされて 第4回

編集●「がんサポート」編集部
発行:2019年4月
更新:2020年2月

  

佐藤直美さん(主婦)

さとう なおみ 1962年千葉県船橋市に2人兄弟の長女として生まれる。1983年結婚。1985年双子の娘を出産。実家は金物店を営み結婚後はサラリーマンの妻としてパートで働く期間もあるが現在は専業主婦

<病歴>
1996年 「膵臓の腫瘍」で摘出手術
2000年 甲状腺右葉(良性)手術
2001年・2004年・2006年 肝臓(再発)手術
2012年 肝臓ラジオ波焼灼術治療
2013年 甲状腺右葉(2回目)手術

現在の私の病状

さて5年前の続編ですが、まず現在の私の病状からお話ししましょう。

5年前スッキリさせたと思っていましたが、肝臓に腫瘍が再発しました。数は10個近くあります。ですが、以前のようなネズミ捕り作戦はもうできないそうです。外科から内科に変更されて、現在経過観察しています。

内科の主治医からは何種類かの薬を提案されています。一度は試しに服用してみたのですが、副作用が強く口内炎(口腔粘膜障害)がこれまで経験のないほど悪化して途中で中止しました。

これは私の考え方なのですが、体内の腫瘍を消そうとする薬ですから、身体の健康な部分にも影響を及ぼすだろうと思います。肝臓の腫瘍だけを標的とする薬はないでしょうし、今は問題のないほかの臓器などに、副作用で嫌な後遺症が起きないとも言えないでしょう。事実私の内臓は不足している部分があるので、これ以上の負担は避けたいのです。

ここまで読まれると、私が治療を拒否していると感じられるかたもおられるかもしれません。ですが違うのです。

私の肝臓にできた再発腫瘍の数はいくつもありますが、肝機能や腫瘍マーカーは何ら異常のある数値ではないのです。つまりとても大人しい腫瘍なのです。

主治医は「ずっと大人しくしているかはわかりませんよ」と言われます。でも、私はこのままの状態で腫瘍と共存していきたいと思うのです。

半年に一度程度MRIを撮りチェックをしますが、今後も腫瘍に対する薬の服用は考えていません。しかし、治療を諦めたということではないのです。

糖質を摂るのを止めたらどうなるのか?

私は経過観察で病院に通う以外に、生活習慣を見直すことにしました。

膵臓を切除後、数年経過して糖尿病になり最初の頃は飲み薬(経口薬)で対処していましたが、徐々に悪化し薬では限界だということで、インスリン注射を1日に4回打っていました。糖尿病の治療はそういうものだと思って定期的にただ通院し、日々インスリン注射をしていました。

糖尿病認定医の先生は、「もう少し太っても大丈夫だから、しっかりご飯を食べなさい。血糖値は高めなので、インスリンをきちんと注射して……」と、多くの方がそのように治療されているとは思いますが、糖尿病の本質を理解すると、これまでの糖尿病治療の矛盾に気づかされたのです。

「血糖値コントロールの悪い状態が糖尿病で、高い血糖値を下げるのはインスリン」だと思っていましたが、その前に血糖値を上げるものは糖質で、「糖質を摂るのを止めたらどうなるか?」

まず、最初にこのことを考え始めたのは、「がん細胞は糖を餌にしている」という話が発端で、がん検査の1つにPET検査がありますが、ブドウ糖ががん細胞に吸収される性質を利用した検査法だと聞いたのです。

私は以前から血糖コントロールが良くなくて、健常の人が糖尿病検査で受けるブドウ糖を飲み、血糖値を測定しても具合が悪くなってしまいます。このPET検査の性質を知り、私には不向きであろうと考えました。

そしてその関連で本などを調べていくと、がんの治療・改善に糖質を制限するという方法(糖質制限食治療)があることを知ったのです。

体質の変化はすぐに表れてきた!

糖尿病の治療もそうですが、糖質を多く摂っている人に対して食事指導はカロリー制限ばかりで、糖質に関してはほとんど制限なしでした。でも、私は白米を食べるといつも体がだるくなり、動けない状態になってしまって何とかしたいといつも思っていたのです。

糖質を制限して体調変化した話を読み、即座に私も試してみようと思いました。

翌朝から糖質であるパン、ご飯、麺類、お芋やクッキーなどの菓子類を食べないようにしてみたのです。その代わりに豆腐や卵、肉や野菜などをお腹が空かない程度にカロリーは多めにしっかり摂るようにしました。

体調の変化はすぐに表れてきた。食後のだるさがほとんど起こらなくなってきたのです。身体が軽くて、庭の草むしりなどやってしまう自分がいて驚くほどの変化だったのです。

本来なら糖尿病専門医などに相談して行うべきことなのでしょうけれど、一般的な糖尿病の標準治療ではないため、糖質を制限する指導のできる先生は少ないようです。

これだけはっきり良い変化を感じられたので、これまで通っていた病院に行くのは止めました。そして糖質制限を治療に取り入れている先生を探し、そちらを受診することにしたのです。

インスリン注射をしていた頃よりかなり体調がいい

そこから本格的に糖質を摂らない生活に切り替え、インスリン注射も止めることができました。もう止めることはできないものと思い込んでいたので、背負っていた重い荷物を下ろしたような解放感があり本当に嬉しかったです。

ただし、糖質を制限することは個々人の体質や運動量、病状などで様々違った反応が起きるようです。私は長時間足が攣(つ)って大変でしたし、しばらく快調だったのが、あるときから急に元気がなくなり、やる気も起きないようなことになってきて、検査の結果、体内のミネラル不足や甲状腺ホルモンの異常などがわかりました。

それらは自己判断で対処できるレベルではなく、きちんと勉強され理解している先生のもとで身体に不足しているものをしっかり補充し、栄養状態もしっかり見直してもらいながら徐々に回復することができました。

とくに私みたいに内臓の手術をしているような場合は注意が必要なことですので、興味を持たれる方がおられましたら、まずは通院可能な糖質制限食治療に詳しい先生を探すことをお勧めします。

お米が大好き、お米を食べることをどうしても止められないという方は多いようです。でも、私の場合は長年お米など食べると不調になっていましたから、食べなくてよいと喜べるくらいのことなのです。

今のところ、以前のインスリン注射をしていた頃よりもかなり体調が良いので、このまま糖質制限する食事を続けていきたいと思っています。これが肝臓の腫瘍にどの程度影響するのか? まだわかりません。でも、きっと良い方向に行くのではないか? といまの気持ちは前向きになっているのがわかります。

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