死からの生還に感謝感謝の毎日です。 オプジーボと樹状細胞ワクチン併用で前立腺PSA値が劇的に下がる・富田秀夫さん(元・宮城リコー/山形リコー社長)

取材・文●髙橋良典
撮影●「がんサポート」編集部
(2018年7月)

  
とみた ひでお
1941年愛知県稲沢市生まれ。私立東海高校卒。同志社大学法学部卒業後、64年リコー入社。86年山形リコー社長、95年宮城リコー社長を経て01年~07年まで経営コンサルタントとして宮城、山形、新潟、青森、福島の20数社の経営者、管理職に指導を行う。野田一夫ファンクラブ会長。同志社大学校友会宮城県前支部長

がんの治療は現在「手術」「化学療法」「放射線治療」が主流で第4の治療である「免疫治療」はエビデンス(科学的根拠)に乏しくその治療を否定する医師は多くいる。

しかし近年、オプジーボに代表される免疫チェックポイント阻害薬の登場で免疫治療に対する評価が変わりつつある。そんな折、前立腺がんステージⅣbと告げられ、「これは治りませんよ」と医師から告げられた男が選択した治療法とは――。

「これは治りません」と医師から告げられる

現在77歳になる富田さんは、夜中に1~2度尿意を覚えて起きることもあった。年のせいで頻尿になったのだろうと思い、サプリメントを3年ぐらい前から飲むのが習慣になっていた。ところが2017年10月17日の夜に、いつもなら1~2回程度の尿意が5~6回も続いて目が覚めた。

「何かおかしい」と思った富田さんは早速、近所の泌尿器科を受診する。

すると、前立腺がんの腫瘍マーカーであるにPSA(前立腺特異抗原)値が774と異常に高かった。基準値が4以下であるからべらぼうな数値である。

医師から「前立腺がんの疑いがある」と、大学病院を紹介され、11月8日紹介状を持って大学病院に行き、そこでCT検査と生検を受けた。

CT画像を見た担当医はやにわに、「これは治りませんので、延命治療をやります。前立腺がんはホルモン治療が基本です。それと抗がん薬を使った治験をしませんか?」と富田さんに勧めた。

以前から、抗がん薬治療には抵抗があった富田さんは、その提案を受け入れられなかったので、返答を保留した。

「治りませんよ」と医師から告げられた富田さんは、東京にいる次女に連絡を入れた。それまでは、次女に心配をかけたくなかったので秘密にしていた富田さんだが、さすがに医師から「前立腺に4㎝もの腫瘍があり、末期で助かる見込みがない」と告げられ、連絡せざるを得なかった。

話を聞いた次女は、富田さんに強く免疫治療を勧めてきた。彼女の夫(久保田晃祥さん)が樹状細胞ワクチン療法を行なっているクリニックの培養責任者をやっていて、普段からそんな話を聞かされていたからだった。

ただ、免疫治療を勧められた富田さんには迷いがあった。富田さんは長女を4年前に乳がんで亡くしていた。その長女が乳がん闘病中、次女が当時交際していた久保田さんに免疫治療について訊ねたことがあり、「延命はできるかもしれないが、完治するのは難しい」と聞かされていたからだった。

しかし、今回は娘婿の久保田さんは、「実の親なら首根っこを掴んでも、東京のクリニックに連れて来ますよ」と、強く免疫治療を勧めてきた。富田さんは長女のこともありなお懐疑的だったが、久保田さんが自信を持って勧めてきたこともあり、次女もまた強く勧めるので同意しないわけにはいかなかった。

その久保田さんは、「私がクリニックに来たのが昨年(2017年)の1月で、今の先生が同じ3月に院長になられてから治療成績が格段に向上してきたのです。お姉さんのときにはまだ治療成績はそれほどでもなかったので、強くは勧められなかったのです」と言う。

大学病院でのCT検査の初見

娘さんと娘婿の強い勧めで、樹状細胞ワクチン療法を選択

では、久保田さんが富田さんに強く勧めた樹状細胞ワクチン療法とはどんな治療なのか。

「樹状細胞とは体内にある免疫細胞の1つで、木のように伸びた突起の形状から樹状細胞と呼ばれています。樹状細胞は自ら直接に異物やがん細胞を攻撃することはできません。その代わりリンパ球などにがんの特徴を教え込み(抗原提示能力)目標を攻撃させる司令塔の役割を担う免疫細胞です。

しかし、がん細胞が増えすぎると樹状細胞の働きが追いつかなくなり、がん細胞が増殖してしまいます。そこで患者さん自身のがん細胞や、人工的に作成したがんの特徴を持つがん抗原を使用して、患者さんの樹状細胞にがんの目印を認識させて体内に注入します。するとリンパ球が樹状細胞からがんの目印を教わって、がん細胞を攻撃するのが樹状細胞ワクチン療法です」(久保田さん)

言うまでもないが、樹状細胞ワクチン療法は保険適用された標準治療ではなく、自由診療で全額自費負担である。

次女と久保田さんの強い勧めもあり、樹状細胞ワクチン療法を受ける決心をした富田さんは、仙台から成分採血を行うため11月10日に上京した。その際、測ったPSAの数値は820もあった。

成分採血を終え仙台に戻った富田さんは、11月13日に大学病院で再度CT検査を受ける。その結果、がんが全身の骨や頭蓋骨、リンパ節に転移していたことが判明した。

この頃から骨に転移したがんが痛み出し、頭蓋骨に転移したがんにより頭痛に悩まされ、食欲もなくなり体重も5㎏減ってきた。毎日毎日いつ死ぬだろうか、骨がんの痛みは激しいだろうな、死が脳裏から消えることはなく鬱(うつ)病に罹ったようだった。

免疫治療をするなら、もう治療はできませんよ

11月17日に再度上京した富田さんは、クリニックで1回目の樹状細胞ワクチンを直接、鼠径部(そけいぶ)に注射で投与された。

11月24日に大学病院を訪れた富田さんは、そこで改めて前立腺がんステージⅣbと告げられ、完治不可により抗がん薬による治験を再度勧められた。

すでに樹状細胞ワクチン療法を始めていた富田さんは、その旨を担当医に告げた。すると驚くべき言葉が担当医から返ってきた。

「免疫治療をするなら当院では治療は出来ない、そしてもしその後、症状が悪化して当院に来られても治療は出来ませんよ」

富田さんは大学病院や大病院では免疫治療にいい顔をしない医師が多くいることは知っていたが、ここまで言うのかと心底驚いた。

その言葉を聞き、改めて樹状細胞ワクチン療法に懸けてみようと思った富田さんだが、がんの遠隔リンパ節転移の代表的なウィルヒョウリンパ節転移が左鎖骨上窩リンパ節に起っており3㎝大のコブ状になっていた。このコブは以前からあり痛くもなかったので、まさかがんが転移したものだとは思いもしなかった。

11月25日に樹状細胞ワクチンを、直接そのコブ状に膨らんだ部位に注射した。それまでクリニックでは、3~4カ月の間に脇の下に樹状細胞ワクチンを投与するのが一般的な治療で、がんの部位に直接ワクチンを注射することはしていなかった。

現在の院長が1年半前に院長になってから樹状細胞ワクチンの投与の仕方が変わり、格段に効果が出てくるようになったのだと久保田さんはいう。

樹状細胞ワクチンとオプジーボを併用する

インタビュー中の富田さん

樹状細胞ワクチンをコブに直接投与した翌日39.3度の高熱が出たが、翌々日には驚いたことに首にできたコブは全く消滅していた。12月6日、クリニックで首のリンパ節にあった2個目のコブに、樹状細胞ワクチンを再び直接投与した。

そのときに、免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボと骨の痛みの軽減や骨折予防のためのゾメタも投与した。翌7日にはやはり39.6度の高熱が出た。今回はコブは消滅こそしなかったが3分の1にまで縮小していた。

オプジーボは現在、メラノーマ(悪性黒色腫)、非小細胞肺がん2次治療、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、胃がん3次治療以降で保険が適用されているが、前立腺がんには適用されていない。だからクリニックでのオプジーボ使用は当然、自由診療の範疇(はんちゅう)である。

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