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再発・難治例にアーゼラ、マブキャンパスが保険適用に

慢性リンパ性白血病の治療薬 FCR療法(フルダラ+エンドキサン+リツキサン)/アーゼラ(一般名オファツムマブ)/マブキャンパス(一般名アレムツズマブ)

監修●塚崎邦弘 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科科長
取材・文●半沢裕子
発行:2016年4月
更新:2016年7月

  

高齢者に多く、進行が緩やかで、早期発見されることも多い慢性リンパ性白血病(CLL)。早期は経過観察が標準治療ですが、病気が「活動性徴候」を示したら治療を開始します。このとき、「通常量多剤併用療法可能」と判断された場合は、FCR療法が標準治療になっています。また、再発・難治例に対しては、2013年にアーゼラが、2014年にはマブキャンパスが、保険で使えるようになりました。

慢性リンパ性白血病(CLL)の治療

■早期の標準治療は経過観察

慢性リンパ性白血病(CLL)は日本では全白血病の1~3%を占める希少な疾患で、高齢者に多く、進行の比較的緩やかながんです。加えて、最近は検診や他の病気治療時の血液検査で早期発見される患者が増えています。

発見されれば治療をしたくなりますが、早期の場合には、治療を開始しても生存期間を延ばすことにつながらないので、「活動性徴候」がなければ標準治療は経過観察となります。診断後10年、15年と経過観察の続く場合もあります。

治癒は困難であり、病状はゆっくりながら進展しますが、進展後も長期生存が可能なことが多いので、治療は症状緩和や病勢コントロールが目的となります。

■進行期に入ったら薬物治療

表1 CLLの活動性病態

Eichhorst B, et al :Ann Oncol. 2010 ; 21 Suppl 5 : v162-4.(ESMOガイドライン)

薬剤による治療開始の基準は「進行期に入ったとき」。日本血液学会造血器腫瘍診療ガイドラインには2つの病期分類が掲載されていますが、改訂ライ(Rai)分類の高リスク(Ⅲ(III)期、Ⅳ(IV)期)、あるいは、ビネ(Binet)分類のC期、進行B期と診断されると進行期とみなされます。

臓器腫大や骨髄機能低下(造血不全)に伴う症状(白血球減少、貧血、血小板減少など)が現れるなど、「活動性徴候」が見られたときが治療開始のサインです(表1)。

FCR療法――治療開始時の薬物療法

「活動性徴候」が見られた段階で、年齢、症状、合併症の有無などにより治療可能判定が行われ、「通常量多剤併用療法可能」と診断されたら行われる標準治療が、FCR療法(フルダラ+エンドキサン+リツキサン)です。

フルダラとエンドキサンは抗がん薬の1種。フルダラは遺伝子の合成を助ける酵素の働きを阻害してがん細胞の増殖を抑える代謝拮抗薬の中でも、プリン代謝を阻害する薬剤(プリンアナログ)の1種です。エンドキサンは遺伝子の二重鎖を解けなくし、遺伝子の複製を妨げるアルキル化剤の仲間です。

この2剤併用のFC療法は、長らく「通常量多剤併用療法可能」な症例の標準治療でしたが、2013年、ドイツのCLL研究グループによる第Ⅲ(III)相試験で、分子標的薬リツキサン併用のFCR療法が無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)とも延長し、日本の2013年版ガイドラインでもFCR療法が初回治療(がん診断後の最初の治療)の標準治療になりました。

免疫細胞であるリンパ球にはB細胞、T細胞、NK細胞がありますが、CLLは成熟したB細胞のがんです。リツキサンは、B細胞表面に存在するタンパク質CD20を標的にしてB細胞を攻撃する薬剤(CD20抗体製剤) です。CLL患者はほぼ100% CD20陽性であり、CD20陽性かどうかは病気の確定診断時の指標にされています。

■投与法――リツキサンは欧米より少用量

リツキサンはCD20陽性のリンパ腫に保険適用されていますが、実は白血病には適用されていません。CLLには末梢血と骨髄だけでなくリンパ節にも病変があり、その病変は小リンパ球性リンパ腫と診断されるので、保険上問題はありませんが、日本での1回量は375mg/m2と欧米(1回量500mg/m2)より少なくなっています。

FCR療法は28日を1サイクルとし、1~3日目にフルダラ25mg/m2とエンドキサン250mg/m2を、1日目(1サイクル目では0日目)にリツキサン375mg/m2を静注し、6サイクル行います(図2)。

図2 FCR療法の投与法

■副作用と他の治療法

病勢を抑えられる期間は平均的には5年くらいで、注意すべき副作用としてはリツキサンによる輸注反応(後述)に加えて、フルダラとエンドキサンによる骨髄抑制が強いことです。感染症のリスクも若干高くなると考えられています。高齢者や全身状態(PS)のよくない人には、エンドキサンを抜いてFR療法にするなどの調整も行われています。

一方、「通常量多剤併用療法不可能」と診断された症例には、フルダラ、エンドキサンなどの単独療法や減量FC療法(リツキサンを加える場合もあり)などの治療を行います。再発・難治の場合は、アーゼラやマブキャンパスが使われることもあります(後述)。

フルダラ=一般名フルダラビン エンドキサン=一般名シクロホスファミド リツキサン=一般名リツキシマブ アーゼラ=一般名オファツムマブ マブキャンパス=一般名アレムツズマブ

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