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奏効率の高い第1選択薬に、第2、第3選択薬が続く

GIST(消化管間質腫瘍)の治療薬 グリベック(一般名イマチニブ)/スーテント(一般名スニチニブ)/スチバーガ(一般名レゴラフェニブ)

監修●尾阪将人 がん研有明病院消化器センター肝胆膵内科副医長
取材・文●伊波達也
発行:2016年5月
更新:2019年7月

  

GIST(消化管間質腫瘍)の治療は、手術による切除が第1選択です。発見されにくい腫瘍であるため、切除できない状態で治療を開始する場合も少なくありませんが、2003年に承認された治療薬グリベックは奏効率が8割近く、万一耐性ができても、第2、第3の選択薬が2剤あり、GIST患者の生存期間を延ばしています。

GIST(消化管間質腫瘍)の治療

GISTは、消化管にできる悪性腫瘍です。ただし、胃がんや大腸がんのように消化管の粘膜側の上皮組織にできる腫瘍(がん)とは違い、筋肉の内側から発症する肉腫(癌)です。具体的には、平滑筋の中に点在する「Cajal(カハール)の間質細胞」という消化管の蠕動運動のペースメーカー的な役割を担う神経細胞に発症します。

発症数は10万人に数人という、希少がんです。胃での発症が一番多く、約7割が胃で発見されます。次に小腸で約2割、稀に大腸や食道で発見されます。

腹腔内へ向かって成長し、消化管の内側での症状が生じにくいため、周囲の臓器や組織を圧迫するくらい大きくなるまで自覚症状がほとんどありません。かなり大きくなってから発見されることも多いです。

GISTは通常、手術が第1選択の治療です。腹腔鏡や開腹による外科手術が多く、場合によっては内視鏡と腹腔鏡両方を併用する腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(LECS)という手術を行うこともあります。しかし、腹膜播種や肝転移などがあって手術ができない場合には、薬の出番となります。

どんな薬?グリベック

■薬の特徴

グリベックは、薬物療法の第1選択薬として、診療ガイドラインで認められています。2003年にGISTの治療薬として初めて承認された薬で、遺伝子変異をターゲットとする分子標的薬の先駆けとして登場しました。奏効率も8割近くと良好です。

グリベックは、c-kitという遺伝子の変異によって作られるKITタンパクをピンポイントで狙い撃ちにして、腫瘍の増殖を抑えます。とくにc-kit遺伝子の中のエクソン11に変異があるタイプに対しては効果が高く、エクソン9に変異がある場合も、11の変異よりは奏効率は落ちますが効果があります。

GISTの症例は、エクソン11と9に変異があるタイプが約8割であるため、奏効率が高いのです。しかし、11と9に変異がない野生型の場合でも、まだ解明されていない変異の中に効果が期待できる可能性があるため、グリベックによる薬物治療は第1選択となります。

昨今、グリベックは、術前補助化学療法で腫瘍を小さくして手術を可能にする治療や、術後の補助化学療法にも使われています。術前補助化学療法については、標準治療ではありませんが、その有効性が証明されつつあります。

術後の補助化学療法は、現在、再発リスクの高い、高リスクの症例に対して3年間行うのが世界的な標準治療とされています(表1)。中リスク、低リスク、超低リスクの症例では、再発率が10%未満であるため、術後は化学療法を行わず定期的に経過観察を行います。

切除不能のGISTの場合は、効果がある限りグリベックの服用を続けます。

グリベックの無増悪生存期間(PFS)の中央値は2年です。100人服用したとすると、2年経過後も50人には効果が続いているということになります。そして、3割の人には5年間効果が続きます。

グリベックに耐性ができてしまい、効き目がなくなってきた場合には、2次治療へと移行します。

表1 GISTのリスク分類(Joensuu分類)

(Joensuu H: Hum Pathol 39: 1411, 2008; Rutkowski P. et al: Eur J Surg Oncol 37: 890, 2011)

■治療スケジュール

1日1回、4錠400mgを連日服用します(図2)。吐き気などの副作用を回避するためには、朝昼晩の食事のうち、量を一番しっかり摂れる食事の後に服用するよう決めることが勧められます。

図2 グリベックの投与法

■知っておきたい副作用

吐き気やむくみ、皮疹などの副作用がありますが、通常の化学療法ほど強いものではありません。ただし、眼瞼浮腫という目の周りがむくむ症状は、整容面からとくにつらいと言われる副作用です。QOL(生活の質)にかかわる問題なので、ときに短期の休薬期間を設けて気分転換を図るなど、治療を継続できるようにすることが大切です。

グリベック=一般名イマチニブ

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