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全身療法の1次治療薬が登場

皮膚T細胞リンパ腫の新治療薬 タルグレチン(一般名ベキサロテン)

監修●舩越 健 慶應義塾大学病院皮膚科専任講師/病棟医長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2016年9月
更新:2016年9月

  

慶應義塾大学病院皮膚科専任講師/病棟医長の舩越 健さん

皮膚リンパ腫は、悪性リンパ腫の1つで、通常の皮膚がんとは区別され、皮膚組織の中のリンパ球ががん化したものです。その1つである「皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)」は発症数が少なく、年間の新規患者数は10万人あたり0.4人ほどです。皮膚T細胞リンパ腫の代表的な疾患である菌状息肉症に対する全身療法として、これまでレチノイド系薬剤のチガソンを光線療法と併用するRe-PUVA療法が行われてきました。2016年6月に新しく発売されたタルグレチンは、欧米などではすでに診療ガイドラインで推奨されている治療薬です。今回、日本でもこの治療薬が使えるようになり、一部の皮膚T細胞リンパ腫の有力な治療選択肢が増えたことになります。

進行の緩やかな疾患と早い疾患で治療法が異なる

皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、T細胞性のリンパ腫のうち、皮膚に最初に症状が現れる皮膚原発のリンパ腫の総称です。

CTCLは数多くの疾患に細分類化されますが、症例割合が最も高いのが菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)で、全体の8割以上を占めています。このほかに、セザリー症候群、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、CD30陽性未分化大細胞性リンパ腫などがありますが、発症割合は菌状息肉症に比べてごくわずかです。

菌状息肉症は、「紅斑(こうはん)期」「扁平浸潤期」という緩慢に経過する時期を経て、多発性皮膚腫瘤を主体とする「腫瘍期」に至ります。一般的には極めて緩徐に進行し、症状が皮膚のみに留まる期間も長い疾患です。早期に治療を開始でき、経過も良好な症例では、余命に影響を及ぼしません。30代で発症しても40年間以上を皮膚への局所療法のみで対処できる例もあり、いわば慢性の進行性疾患として、治療しながら病気と共存することが可能な疾患です(図1)。

ただし、同じCTCLでも、悪性度が高く進行の早い疾患もあり、そのような場合、治療選択は大きく異なります。セザリー症候群は、数カ月単位で進行する疾患で、早期から抗がん薬の多剤併用による強力な全身治療を行い、場合によっては造血幹細胞移植も検討します。

CTCL=Cutaneous T-cell Lymphoma

「菌状息肉症」が主な治療対象

新しく登場したタルグレチンは単剤で使われる薬剤で、CTCLの中でも進行が緩徐な疾患について、局所療法で制御できなくなった際に、全身療法として用いられます。タルグレチンの適応疾患として代表的なのは、菌状息肉症です。このほか、CD30陽性未分化型大細胞性リンパ腫などの治療選択肢として期待されています。

タルグレチン=一般名ベキサロテン

紅斑期・扁平浸潤期では、ステロイドや光線療法などの局所療法

菌状息肉症の「紅斑期」では紅斑と呼ばれる皮膚の赤い発疹が現れるのが特徴です(図2)。紅斑は境界が比較的明瞭で、表面がカサカサと平らであるため、乾癬(かいせん)や湿疹と間違われることもあります。

「扁平浸潤期」になると、発疹は次第に硬さを伴って、ごりごりとした扁平のしこりとして厚みをもつようになります。この段階では症状は皮膚に留まっています。

さらに「腫瘍期」になると、患部が隆起して、びらんを伴ったり、潰瘍化してきます。この病期になると、リンパ節が腫れたり、遠隔転移が生じることが多く、一方で稀に、全身の皮膚の80%以上に紅斑が広がる紅皮症の病態になる場合もあります。

紅斑期・扁平浸潤期では、皮膚の症状を落ち着かせる局所療法を行います。まずは、ステロイド外用薬や、紫外線を用いた光線療法を行います。これらの治療法で、数年から10年以上の長期にわたり症状が安定するケースも比較的多くみられます。これらの治療で症状が制御できなくなった場合には、放射線の部分照射を行ったり、外科的な切除が可能であれば手術も選択されます。

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