ASCO2014 レポート
EGFR変異、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんでの臨床試験結果が話題に
今年で開催50回の節目を迎えた米国臨床腫瘍学会2014年年次学術集会(ASCO2014)。前号に引き続き、同学術集会での話題を拾った。
ASCOの年次学術集会では、毎年、各領域において数多く採用された演題の中から、特に話題性の高いものをセッション(領域)ごとに数題選択し、専門家が総括する「ハイライトセッション」が設けられている。これを聞くことにより、参加者は近来の研究の大まかな流れが把握できるようになっている。今号では、学術集会4日目に行われた「ハイライトセッション」の中から、肺がんに関する内容を紹介する。
LUX-Lung3およびLUX-Lung6試験の全生存期間のプール解析
LUX-Lung3(LL3)はグローバルに応募した患者345例(アジア人75%)において、*アファチニブと*シスプラチン+*ペメトレキセド併用治療群を比較。一方、LUX-Lung6(LL6)はアジア人患者364例において、アファチニブと*ゲムシタビン+シスプラチン併用治療群を比較した臨床試験。
1次解析(2012年)では、全EGFR変異陽性集団において、アファチニブは化学療法(CT)群に対して無増悪生存期間(PFS)の有意な改善効果を示した。この結果、米国食品医薬品局(FDA)はアファチニブを、一般的なEGFR変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する1次治療薬として承認した。日本でも今年1月に承認されている。
今集会では、それら患者における全生存期間(OS)のプール(統合)解析結果が報告された。報告者は国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏。
全生存期間を有意に改善
治療歴のないEGFR変異を有するステージIII/IV非小細胞肺がん(NSCLC)患者を、アファチニブ投与群または化学療法群に2対1の割合に無作為に割り付けた。
解析時(2014年1月)には、404人(64%)が死亡していた。全生存期間の追跡期間中央値は36.5カ月。増悪に伴い、化学療法群の68%はEGFR阻害薬を、アファチニブ群の70%は化学療法を受けていた。全生存期間はアファチニブ群が化学療法群に比べて有意に改善していた(中央値27.3 vs 24.3カ月、ハザード比 [HR]=0.81 [信頼区間CI 0.66, 0.99; p=0.037])(図1)。
LL3およびLL6における全生存期間に対する個々のハザード比はプール解析で一致していた。新たな無増悪生存期間および安全性の解析においても、1次解析と一致していた。
アファチニブは、一般的なEGFR変異(Del19/L858R) を有する進行非小細胞肺がん患者の全生存期間を、化学療法群に比べて有意に改善しており、本解析は、EGFR変異を有する患者に対するゲノムタイプに対する直接的治療が生存期間を改善することを示した初めてのものである。
Leora Horn氏コメント:EGFR変異陽性非小細胞肺がん患者において、1次治療薬であるアファチニブは、Del19変異を有する患者の全生存期間を有意(p=0.0001)に改善した。
*クリゾチニブ=商品名ザーコリ *アファチニブ=商品名ジオトリフ *シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ *ペメトレキセド=商品名アリムタ *ゲムシタビン=商品名ジェムザール
JO25567:オープンラベル無作為化試験
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の開発にもかかわらず、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者での無増悪生存期間(PFS)の中央値はわずか13カ月あまりである。しかし、EGFR変異患者のサブグループを対象とした研究では、*エルロチニブ+*ベバシズマブ(EB)併用によりこれらの患者での無増悪生存期間の延長する可能性が示唆されている。報告者は神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科医長の加藤晃史氏。
ステージIIIb/VIあるいは再発非扁平上皮、EGFR変異陽性、かつ全身状態(PS)0/1、化学療法歴のない非小細胞肺がん患者を、無作為にエルロチニブ+ベバシズマブ併用投与群、またはエルロチニブ(E)投与群に無作為に割り付けた、疾患増悪あるいは非忍容性毒性発現まで治療を継続した。
主要評価項目は、独立レビュー委員会が評価した無増悪生存期間。副次評価項目は、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性、QOL(生活の質)とした。
併用投与群で無増悪生存期間が有意に延長
2011年2月から2012年3月までに、患者154例が登録された(EB群77例、E群77例)。無増悪生存期間中央値はEB群16.0カ月、E群9.7カ月(ハザード比[HR] 0.54; 95%信頼区間[CI] 0.36-0.79; log-rank p=0.0015)(図2)。
EGFR エクソン19欠損サブグループでは、無増悪生存期間中央値はEB群18.0カ月、E群10.3カ月であった。
L858Rサブグループでは、無増悪生存期間中央値はEB群13.9カ月、E群7.1カ月であった。客観的奏効率はEB群69.3%、E群63.6%。完全奏効(CR)がEB群で3例、E群で1例それぞれ認められた。グレート3/4の出血がEB群においてより高頻度に認められたが、有害イベントの大半は管理可能であり、新規の安全性の面での問題は認められなかった。
EGFR変異陽性非小細胞肺がん患者において、EB投与群はE投与群に比べて無増悪生存期間の有意な延長をもたらせた。
Leora Horn氏コメント:エルロチニブ+ベバシズマブ併用はエルロチニブ単独に比べて、無増悪生存期間を改善した。
*エルロチニブ=商品名タルセバ *一般名ベバシズマブ=商品名アバスチン
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