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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第33回 運動が苦手な人が知らないこと <英雄のポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2021年2月
更新:2021年2月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

「毎日欠かさず行っていると、癖になる。癖になると、今度は好きになる」

奇跡の大復活を遂げた照ノ富士関が、相撲の基本動作「すり足」や「てっぽう」について語った言葉です。すり足やてっぽうというのは基本中の基本ではあっても、時間をかけて繰り返し丁寧に行うのは、相当根気がいるものらしい。それにどう取り組んだかというのが冒頭の言葉です。

大相撲史上3番目という超スピードで大関に駆け上がった後、ケガと病気で序2段まで転げ落ちた天才力士。序2段というのは一番下から2番目、もちろん無給です。そこまで落ちる前に、ふつうは引退する。

偉いのは伊勢ケ濱親方で、まず病気とけがを治そう、相撲をやめるかどうかはそれから考えればいいと言い続け、励まし続けたそうだ。

病気を治し、膝の再建手術を行い、再スタートするにあたって、すり足やてっぽうなどの基本を1年365日欠かさず続けた。その過程で、この上なく単調な稽古について受け止め方、心境の変化をこう語ったのでした(NHK「逆転人生」より)。

「癖になると好きになる」まで

わたしはかねてからプロのアスリートの言葉は、運動適性も運動経験も乏しい普通の人が、中高年になって健康を維持するために運動する際には、ほとんど役に立たないと思っていました。

しかし、この照ノ富士関の言葉には、引退しかないと思い詰めるほどの大ケガを負ったプロアスリートが、いうことを利かない体とどうつき合っていくのか、自分を奮い立たせていけばいいのかの極意が秘められています。

そして運動嫌いな凡人にとっても、何をやっても長続きしない飽きっぽい人にとっても、実に役に立つ言葉です。

「癖になると好きになる」、というのがとりわけ深い。

運動嫌いな人は、一定量の運動が健康のために必要とわかっていても、それは頭で納得したことで、成功体験が乏しいので、気持ちがなかなか続きません。

成功体験などというと大げさですね。

運動中に「ちょっときつい」「ちょっと痛い」「なんだか退屈」いう瞬間が訪れると、すぐに「嫌だなあ」「だめだ」と思って気持ちが続かなくなる。あともう少し、もうほんのしばらくやっていくと、その「ちょっときつい」「痛い」「なんだか退屈」という感覚・感情は、一本調子にそのまま続くのではなく、変化していくのです。

運動が好きという人は、今、ちょっときつくても、やがて(10秒後か20秒後か長くても1分後には)変化していくことを体験的に知っています。それだけの違いです。

マインドフルネスを取り入れて

ウォーキングでもジョギングでも同じ。基本的動作を繰り返すエクササイズは、始めて少し経つと苦しくなってきます。思うように体が動かないきつさもあるし、呼吸が苦しくなったりもします。しかもわくわく感もないしスリリングでもない。

そんな単調さも、好きな音楽を聴きながら行うと楽しくなるという人も少なくありません。指導者がいれば、今起きている「きつさ」や「痛み」について、的確にアドバイスしてくれることでしょう。

もし独習しているなら、例えばここで扱っているヨガを実践している人なら、当然マインドフルネスを取り入れてほしい。

その「きつさ」や「痛み」に注意を向けて、できるだけリラックスして、体のどこがどういうふうに痛みを感じるのか注意深く観察していく。吸っているときと吐いているときはどう違うか。起こっていることを価値判断しないで、ありのまま感じていこうとする向き合い方。すると微妙な、しかし、決定的な変化が起きます。

「痛み」は「痛み」として、感じたままに受け止めることが可能になります。「嫌だ」「やめようか」はそれに伴って起こる思考だということです。しかもその思考は、価値判断やこれまでの経験によってほとんど自動的に起こっています。いってみれば「決めつけ」なのです。

コロナ禍にあって自粛生活が長くなっています。よほど意識してないと、体を動かす機会が減って、運動機能が衰えていることにさえ気づきにくくなっています。

今月紹介する<英雄のポーズ>は難易度高めです。途中でふらついたり、ポーズをキープできないこともあります。

しかし、全身的なポーズで、続けていくと体幹が鍛えられ、バランス感覚もついてきます。とにもかくにも続けてください。毎日行っていると、癖になってきます。癖になると好きになってくる、のですよ。

今月は人気インストラクターの東優子さんに、ポーズも説明も行ってもらいました。

<英雄のポーズ>

両脚を前後に大きく踏みしめ、体幹を安定させながら、両腕とともに腹部ごと上方に引き上るダイナミックなポーズです。足腰や体幹が強化され、上肢下肢の柔軟性、とくにふくらはぎのしなやかさや、全身のバランス力が求められます。

①床の上に立った姿勢からはじめます。両足の間を1足分くらい開けて立つとバランスを保ちやすくなります。足先を正面に向ける

②右足を大きく1歩前に(このとき、右膝は曲がってよい)、左足を軽く1歩引き、両足を前後に大きく開く

③臍(へそ)を正面に向け、重心は身体の真ん中に落ちている。このとき左足のふくらはぎは張るくらいになる。両手を胸の前で合掌。これがスタートの姿勢。

息を静かに吐いて、お腹を軽くひきしめる。目は正面を見る

④ゆっくり息を吸いながら両腕を上方に上げる。両足はしっかり床を踏みしめ、上体は上方に引き上げ伸ばしていく。そのままこの姿勢でできる楽な呼吸をしながら8呼吸キープ

⑤余裕があれば、胸をしならせ、腕を後方まで引き上げ、目は上方を見るようにしてみよう。後方の左足踵(かかと)から両手の指先までのラインが大きく弧を描くようなイメージを思い浮かべる

⑥ゆっくり③、②、①と戻し、立位のままくつろぎ、呼吸を整えてから、今度は反対の足で同様に行う。左右交互に2セット

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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