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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第75回 誰も幸せにしない過剰な接客サービス<なんちゃってハトのポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2024年8月
更新:2024年8月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

カスタマーハラスメント(カスハラ)と呼ばれる顧客からの理不尽な要求の横行が社会問題化されるようになってきました。

「あんたじゃ話にならない、上司に替われ」「何度も言わすな」「俺を怒らせるな!」。自分の言葉にますますヒートアップしていき、聞く側が耳をふさぎたくなるような暴言や罵倒や謝罪の強要、こうしたハラスメントが対応する者の心身の健康をそこないかねません。

たとえばクレーム対応のコールセンターのスタッフがどれほど疲弊するか。目の前に顧客はいなく、したがって直接的な暴力の危険はなくても、ヘトヘトに疲れ果てるスタッフを会社は守るという常識がこれまで共有されてきませんでした。

教育や介護や医療の現場でも、モンスター化する客をどう扱うのか、これまで個々のスタッフ、従業員、職員にまかされ、時間をかけて嵐が過ぎ去るのをひたすら待つくらいしかありませんでした。

〝お客様は神様〟から〝おもてなし〟の呪縛

「お客様は神様です」という言い回しは、歌手の三波春夫さんが「歌うときは、神前で祈るときのような気持ちでないと完璧な芸は見せられない。だからお客様を神様と見立てて歌うのです」というような言葉が、独り歩きしていったものだそうです。前回の大阪万博のテーマソングを歌い、浪曲で鍛えた独特の節回しで「お客様は神様です」と唱えると、問答無用的な迫力を持ち、国民的大歌手になりました。

「お・も・て・な・し!」はまだ記憶に新しい2020東京五輪招致パフォーマンスに使われた滝川クリステルさんのキメ科白。その映像のインパクトも強くて、こちらも独り歩きをはじめ、意味不明にも「おもてなしはいいこと/受けると嬉しいに違いない」という〝おもてなし神話〟がつくられていきました。

企業間の競争が激しさを増し、顧客離れやSNS上での悪評を恐れた企業が、顧客を神様のように扱い、従業員の安全や健康を犠牲にする傾向があります。それらがようやく問題視されるようになってきたのです。

政府や企業側もこの問題に対処するため、さまざまな対策を講じています。厚生労働省が企業向けの対策マニュアルを作成し、労災の認定基準にカスハラを新たな類型として追加するなど、対応が進められています。

たった1人の客のカスハラでまわりも嫌な気分

「お客様に過剰な権威を認めすぎると、理不尽な要求や傲慢な振る舞いにつながりかねません。そういったお客様に対しては、きっぱりと対応を断る勇気が企業側に必要です。相手の非常識な言動を許容し続けることは、結果的に他のお客様の迷惑にもなります。従業員が不当な要求を丁重に断れる環境づくりが大切です」

これはある大規模な国立総合病院が、患者の尊称を「さん」から「様」に変えたところ、いまでいうところのカスタマーハラスメントが増えてしまい、数年後に「様」から「さん」に戻すことに決めたことをHPにアップした際の冒頭の文章です。

そもそも医療現場における「○○様」という呼び方は、「国立病院・療養所における医療サービスの質の向上に関する指針」の中の「患者との接遇態度や言葉使いの改善」の項目で、『患者の呼称の際、原則として姓名に「さま」を付することが望ましい』という通達があり、全国的に広まったものでした(平成13年 厚生労働省)

医師に疑問や質問は訊きにくい?

わたしどもでは、50分ヨガ + がんやそのほか何でもおしゃべりOKという会(リボンヨガ)を月に2回、定期的に開催しています。参加するがんサバイバーの方々は、主治医との関係にとても気を使っていて(大切にしていて)、それくらい主治医に訊いてみたらいいのでは? ということも、忙しい主治医に遠慮し、順番を待っている他の患者さんにも悪いような気がして、なかなか訊きかないでいます。

そういう大方の日本人が持っている他者配慮のレベルを考えると、カスハラが問題化される風潮に過剰適応してしまうのではという懸念も抱きます。難しい……。もっと楽に疑問に思うことを投げかけて、率直なコミュニケーションを願わずにはいられません。

<なんちゃってハトのポーズ>

前号の<ハトのポーズ>の動画モデルをしてくれたのは諌山敏子さん、今乗りに乗っているヨガインストラクターです。そしてとっても楽な感じでこのポーズを見せてくれたので、見ただけでは難易度が高いと感じる人は少なかったのでは?

さて自分でやってみて「あれっ?」「あれあれ~?」と困惑した人も。

なので今回改めて<初級(なんちゃって)ハトのポーズ>をとりあげます。

①正座して、腰を右にずらして座ります。両膝をぐんぐんと開きます。ここまでのアプローチは前回と同じです
②左足を床から起こし、左手で足首ないし足の甲を掴みます。左手は足の外側から回して掴んでもいいし、内側から足を掴めるとポーズはより効果的に安定します
③掴んだ足を後方に引き、つられて左肩は後ろに引っぱられ、左体側が収縮します。また左腿の表側、鼠径部から腹部までが気持ちよく伸ばされているのを味わいましょう
④右腕を上方に大きく伸ばし、次いで肘を折り、指先は肩に軽く触れるようにします。今度は右体側が伸ばされ胸が開きます。目線は肘のずっと先、斜め上方を見るようにしますこのまま自然呼吸で4~8呼吸は左キープ
⑤ゆっくり腕をほどき膝を戻し、最初の座 姿勢で呼吸を整える。次は左右を交代して同様に行います

人体でもっとも大きな関節である股関節、最も可動域が広い肩関節に働きかけ、ふだん使わない筋肉や靭帯などに働きかけていくので、ポーズになじんでくるととっても気持ちがいい。そして前号の<ハトのポーズ>にもおいおいチャレンジしてみてください。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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