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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第78回 「呼吸に注意を向ける」ってどういうこと?<マインドフルネスの実習2>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2024年11月
更新:2024年11月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

今回は、前号の続きです。

マインドフルネスの実習では、「呼吸に注意を向けること」を1つの軸とします。何か特別の呼吸ではなく、〝今している〟自分の呼吸に注意を向けます。

でも、それはそれほど簡単ではありません。何か特別の呼吸法ではなくて、「今している自分の呼吸に注意を向ける」と言われると困惑します。呼吸はふだん半ば無意識的に行っているものだからです。私たちは呼吸に注意を向けなくても呼吸している。眠っているときだって呼吸は続いています。

あまりに当たり前にやっていることなので、今している自分の呼吸に注意を向けようとすると、〝あれっ、今、息を吸っていたんだっけ、それとも吐いていた?〟 わからなくなって、ちょっと息を止めていたり……。それでいいのです。今日という日まで生きてきたのですから、今生きている人は誰でも呼吸の達人です。

呼吸が浅い気がする

呼吸の達人といわれても、「そんなことはない。いつも呼吸が浅くて、止めちゃっているときだってある」とおっしゃる人もいます。

そう、だから呼吸に注意を向けて、〝浅く吸っている〟というそのプロセスに気づく。吐いているこの息のプロセスに注意を向ける。健康的だとか望ましくないとか、そういう価値判断(ジャッジ)をしないで、現在進行形の自分の息に注意を向け続ける。

〝ああじれったい〟と投げ出したくなる人もいます。

「ああじれったいと思った」と、自分の中に自動的に起きたその考えに気づくこと、それがマインドフルネスの実践です。いいも悪いもない。だから〝投げ出す〟のではなくて、〝投げ出したい〟気持ちに気づき(あ、そうなんだと受けとめて)、また呼吸に注意をもどします。

雑念を消したい?

呼吸が、目覚めているときも半ば無意識的に続くように、脳の働きも自律的に自動的に続いています。

〝ああじれったい〟は自動思考ですが、自動思考は次の自動思考を引き起こします。〝これ、何か本当に役にたつ?〟とか〝ごはん、なに食べよう〟とか〝銀行○○時までにいかなくちゃ〟と次々とわいてきます。

よく〝雑念〟とまとめるけれど、梅干を見たら口の中に唾液が出てくると同じこと。脳という臓器は一度に膨大な情報を処理しながら、大脳新皮質に自動思考を次々と上げています。

だから自動思考をなくすことを目指すのではなくて、「瞬間瞬間に気づいて、呼吸に戻す」その繰り返しです。雑念はダメではなくて、雑念の1つひとつに気づいて、また呼吸に注意を戻すだけ。

「雑草という名の草はない」とは牧野富太郎博士の名言ですが、雑念もそうなのですね。丁寧に扱っていくことで雑念ではなくなります。

そして呼吸に注意を向けて、そのプロセスを味わうようにしていくと、不思議なことに呼吸が落ち着いてきます。肝心なのは、呼吸を落ち着かせるために行うのではないこと。ただ呼吸に注意を向けていくうちに、呼吸が静かに深くなってくることが多いのです。

<マインドフルネスの実習2>

今回は栗木登志子さんのマインドフルネス実習を紹介します。栗木さんはがんサバイバーです。当センターで月2回行っている「ヨガとトーク」のリボンヨガの世話役もしています。

①ストップウォッチか時計を用意して、スイッチをオンにするか時刻を見ておきます
②楽な姿勢で両足を組み、脊柱をスーッと立てます
③マインドフルネス実習の前に片鼻呼吸をします(2022年12月号参照
片鼻呼吸を行うと、息が鼻腔の中を流れる感覚がわかりやすく、それが気持ちよく感じられます。1~2セット行うことで、呼吸に注意集中します
④それからふだんの自分の呼吸に戻しますが、鼻の穴を通る空気の感覚に注意を向けます。吐く息と吸う息で温度や湿度の違いなどに注意を向けると、自然と〝今ここ〟でしている自分の呼吸のプロセスに注意を向けています
⑤たとえば、呼吸が浅いことに気づいたとき、ただ〝そうなんだ〟と受けとめる。〝本当はもっと深く長くしたほうがいいのに〟とかは思考です。思考に乗っかっていくと、自動的に思考がわいてきて、思考の渦に呑まれていきます。気づいたときに、鼻の穴を通る空気の流れに注意を戻す、そうすることで今この瞬間に意識をもどすことになります
⑥そうやって一定時間ただ座り、今日はこれでいいかなと思ったところで、前回紹介した手順で覚醒します。目をゆっくり開き、「両手を握って開く」を数回行い、両手を上方にぐ~っと伸ばして
⑥時計を見て、どれくらい時間が経過していたか記録します。行っても行わなくてもいいのですが、記録することがマインドフルネス実習を続けるモチベーションを高めることもあります。面倒なら記録はやめておきます

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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