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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第62回 〝好き〟は世界を開く<胎児のポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2023年7月
更新:2023年7月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

実在の人物をモデルにした映画やドラマで、主人公を演じている役者より本物のほうが数段いい男、そんな例はあまり聞いたことがない。NHK朝ドラ「らんまん」のモデルになっている牧野富太郎博士のことです。

背がすらりと高く男前、何より屈託のない笑顔がチャーミングで、老若男女をひきつけ、そのフィールドワークには植物好きな市井の人々に開かれていたようで、参加者が200人に及ぶこともあったそうです。

全国の植物愛好家たちにも呼びかけ、集まった植物標本が40万点。あの南方熊楠もその1人だそうです。

小学校2年で中退という学歴はあまりにも有名ですが、たぐいまれな植物好きと独自の勉学で、海外の文献を読みこなすために英語も堪能。世界的な植物学の博識を持ち、美しく細密な植物画を自ら極細の毛筆で正確に描き、その集大成である『牧野日本植物図鑑』は今なお少しも古びない。図書館はもとより少し大きな書店では、牧野と冠せられた図鑑などの書籍がずらりと並びます。

いまなぜ牧野富太郎なのか

明治政府は明治6年に最初の学制を敷き、その顧問として来日したフランスの教育学者が、日本には寺子屋という素晴らしい教育システムがすでにあるのに、と統一的な学制度導入をいぶかしんだという逸話があります。

年齢の多様な子供たちが集まり、読み書きそろばんをそれぞれのテンポで学ばせ、その基礎学力の上に、もっと勉強したい優秀な人には、藩校への推薦などがあります。また全国の私塾の漏れ伝わってくる評判を集め、文通し、ここだと思ったらその地に足を運び、弟子入りするという江戸期の勉学スタイルがぎりぎり残っていた時代でした。

伊能忠敬を輩出した当時の天文学、幾何学や数学の知識、それらが家督を兄弟や子供に譲った「隠居」後になされたこと。あるいは本業の傍ら、ある種の娯楽道楽として学び究め競ったこと。本草学も多くの愛好家に開かれ、全国的ネットワークが形成されていたそうです。

つまりそれらの業績で社会的経済的成功を収めるといった野心とは異次元の道の究め方、人生の楽しみ方があったのだろうと想像します。

江戸期は身分社会なので、明治以降の上昇志向とは全く違います。

いま全国の小中学校における不登校児童の数は年々増加し、1,000人あたり25.7人だそうです(2022年度 文部省調査)。

親やサポートする人たちにとって気がかりなのは、不登校によって引きこもりがちになり、社会とのつながりを持てなくなるのではないか、学ぶ楽しさを体験する機会を失うばかりか、そもそも学ぶこと自体に疎外感や嫌悪感を持つようになるのではないかという危機感です。

学齢の異なった子供たちが共に学ぶフリースクールが見直されてもいます。

富太郎のドラマには、こういう選択肢もありえたのかという驚きをもたらすのかもしれません。

別次元の豊饒さ

個人的に何より驚いたのは、富太郎27歳のとき11歳年下の壽衛さんと所帯を持ち、2人の間になんと13人も子供をもうけたということです。13人ですよ。

12人の子どもを産み育て上げた与謝野晶子といい、ほんとうに明治というのは途方もない傑出した人物を生み出すのですね。

牧野富太郎には郷里に親が決めた妻がいて、家業の造り酒屋を切り盛りし、東京での富太郎のある時期まで支えたという説もあり、それはもう現代のモラルとは異次元ですが、家業の造り酒屋を清算した後、番頭と再婚したその女性もただものではありません。

あるTV番組で、富太郎を語るときの歴史学者磯田道史さんや脳科学者中野信子さんの顔が、それはそれは嬉しそうで楽しそうで、語るほどに富太郎愛があふれてくるといった風情なのがとても印象的でした。

確かに知れば知るほどたまげてしまうのです。幕末に生まれ、明治を駆け抜け、大正、昭和と生き、94歳で没します。

草木が好きで好きで、東京帝大の植物研究室への出入りを許され、植物分類学に邁進して『大日本植物志』を刊行、紆余曲折はありつつ帝大講師として学生を教え、後半生は植物学の普及に尽力し、集大成となる『牧野日本植物図鑑』を出した後も再版に向けて手を入れ続けました。

87歳のときにいったん臨終を迎え、死に水をとったところ、その水で息を吹き返したという型破りな生命力!

「雑草という名の草はない」というのは博士の有名な言葉ですが、この言葉に自分の人生を重ねた人も少なくなかったことでしょう。

今回は生命力にあふれる<胎児のポーズ>を紹介します。

「赤ちゃんのポーズ」とも言いますが、頸を起こし額と膝を近づける姿勢は頸まわりの筋肉群が使われます。羊水の中では自然な体勢ですが、重力ある世界では少しきつさを感じることでしょう。エイッ!と瞬間的に動作するのではなく、ゆっくり動作し、そのポーズを保つことが重要です。

水中でこのポーズをとるとすごく気持ちいのです。もちろん水中では自然呼吸は不可で、ゆっくり吐いていくだけですが、夏に気が向いたら試してください。気持ちいい~ですよ。

<胎児のポーズ>

 

①仰向けに寝て、両足両膝はそろえて、膝を立てます
②両腕を膝の外側に回し両手を組みます。手が届かなければ、右手で右膝、左手で左膝を持ちます
③静かに息を吸ってから、ゆっくり吐きながら上体を起こし、額を膝に近づけていきます。そのまま自然呼吸でこの姿勢を保ちます。背中は縦方向にも横方向にもストレッチされています。肛門を軽く閉じ、腹部を収縮し、顎を喉に引き寄せます。そのまま4~8呼吸自然呼吸で保ちます
④ゆっくりほどいて、背中や首を楽にして、呼吸を整えます

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
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