肝っ玉弁護士 がんのトラブル解決します 47

大きくはみ出す隣家の木の枝

解決人●渥美雅子
イラスト●小田切ヒサヒト
(2013年9月)

  

在宅治療となった末期がんの老父を引き取りました。戸建1階の南向き和室を療養部屋としたのですが、隣家のキンモクセイが手入れなく繁茂し、日照がさえぎられていることがいらだちにつながっているようです。日照だけでなく、こちらの敷地に枝が2m近く覆いかぶさっています。隣家に木を切ってもらうことは可能ですか? 費用は負担しても構いません。

(埼玉県 会社員 45歳)






渥美雅子 あつみ まさこ

弁護士として家族問題、遺産相続などを専門に活躍。2003年「女性と仕事の未来館」館長を務める。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』など著書多数

隣家の承諾得て切ることも可能

まず、日照が遮られていることについてですが、これを法律問題として隣人に「木を切ってくれ」と請求することはかなり難しそうです。

例えば、境界線ギリギリの所に建物を建てたり、こちらのプライバシーを侵害するような窓や縁側を作ったり、池や穴蔵を掘ったりすることは民法で禁じられていますが、境木を植えたり、生垣を作ったりすることは禁じられてはいません。最近ではむしろフェンス等に植物の葉を繁らせてグリーンカーテンとし、これで夏の直射日光を避け、涼をとるというような緑陰の活用法が盛んになっているくらいです。

判例を調べてみましたが、隣家の樹木が日照被害をもたらしている例は見当たりませんでした。日照被害だけではなく、騒音被害、電波被害など複合被害をもたらしているものでも、被害者側にある程度の受忍義務があることを前提として慰謝料を算定し、その額は数十万円程度でした。

そうはいっても程度問題です。日照が遮られ、昼間でも電気をつけなければ新聞も読めないというような状況なら、お隣さんに申出て、少し手入れをしてもらってもいいかと思います。

次にこちらの敷地にはみ出している枝の処理ですが、これはどうぞ隣家の人に遠慮なく申出て、枝を切ってもらって下さい。

民法233条には、「隣地の竹木の枝が境界線を越える時は、その竹木の所有者にその枝を切除させることができる」とあります。

無論、その場合の費用は隣地の人の負担です。

ただ申入れをしても切ってくれないときはどうするか、こちらで切ってもいいか、というとそうではありません。法律上はあくまでも隣地の人の承諾が必要です。

とはいってもその承諾を得るためだけに調停や裁判を起こすのも大仰なことですから、あなたのほうから穏やかに申出て、先方の承諾を得てこちらで切ることにしたらどうでしょうか。

費用まであなたのほうが負担する前提なら(法的には負担する必要はない)先方は拒みきれないと思います。

これらの問題を法的に解決しようとすると、どちらもなかなか難しいところがあります。それよりもお隣さんにこちらの事情をよく話し、お父様の療養のために協力してほしい旨頼んでみたらどうでしょうか。そのほうが後々までもいい人間関係を保ち、いい交際をしていけそうに思います。

寝たきりのお父さんにいやな思いをさせず看病を続けていくためにもここはあなたが大人の対応をなさるのがいいと思います。

関連記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート12月 掲載記事更新!