肝っ玉弁護士 がんのトラブル解決します 50

伯父に用立てた費用を子供に請求したい

解決人●渥美雅子
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2014年1月
更新:2014年4月

  

1人暮らしの伯父が昨年7月に亡くなりました。息子が1人いますが、20年以上英国在住です。亡くなったとき息子は帰ってきましたが、葬儀はぜず、荼毘に付してすぐ納骨しました。意見したら喧嘩になりだまって帰国しました。その後伯父に借金があり、息子が遺産相続放棄をしたことを知り、私も放棄をしました。後始末は全部私がやり、費用もかかりました。あまりのことに、医療費など伯父に用立てたお金を外国に住んでいる息子に請求できるでしょうか。

(48歳 女性 大阪府)

相続放棄したあとでは請求できない

あつみ まさこ 弁護士として家族問題、遺産相続などを専門に活躍。03年「女性と仕事の未来館」館長を務める。05年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』など著書多数

伯父さんが亡くなられたとのこと。伯父さんをめぐる家族関係を図示すと右記のようになるかと思います。

点線で囲った部分の家族関係は不明ですが、恐らくあなたの父親か母親が伯父さんと兄弟であったものの、すでに死亡しているのでしょう。それ故あちらの息子さんが相続放棄をすると、あなたが代襲相続人として浮上してきて、あなたも放棄の手続きをした、ということではないかと考えます。

さて、そこであなたが伯父さんのために立替えたお金はあなたにとって債権、叔父さんにとっては債務(負債)です。伯父さんが生きていれば伯父さんに請求できるお金です。死亡後は相続人に請求できるものです。とはいえ息子さんが相続放棄をしてしまったからには伯父さんの負っていた負債も相続しないということですから、もはや息子さんに請求することはできません。

そこでもし、代襲相続人たるあなたが相続放棄をしなかったとすると、あなたはご自身は債権者であり、それと同時に伯父さんの地位を相続した債務者でもあるということになってその債権債務は「混同(民法520 条)」という法理によって消滅します。

俗な言葉で言えばチャラになって債権も債務もなくなってしまうのです。

さらにあなたは相続放棄もなさったようですから伯父さんの財産(プラスもマイナスも含めて)に関して何ら関与できない立場になります。

一方、伯父さんのために支払った医療費であっても息子さんに頼まれて、息子さんが父親を扶養する扶養料の一環として立て替え払いをしたというのなら、債権者はあなた、債務者は息子さんということになりますが、どうもそういういきさつではないらしいので息子さんに請求することは無理でしょう。1人暮らしの老人が増えている昨今、身内であっても無くても、そういう人をどう支援していくべきか悩ましい問題です。

あとから考えれば伯父さんの窮状はむしろ生活保護につなげてあげたほうが良かったのかもしれません。せっかくの好意が息子さんの心に通じなかったのは残念ですが、「情けはひとのためならず」いつか自分に戻ってくると割り切ってしまうほうがいいような気がします。

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