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父の遺産を子どもに相続させたいが

解決人●渥美雅子
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2013年11月
更新:2014年3月

  

父が肺がんで亡くなりました。母もすでに亡くなっており、子どもは私ひとりです。父は土地家屋と数百万円の預金を残しましたが、借金もありました。相続放棄も考えたのですが、私の長男が借金を支払ってくれることになりました。私の名義になっても税負担は長男に頼るという実情もあり、私はその見返りに不動産の相続を長男にさせたいのですが、可能でしょうか?

(新潟 無職女性 68歳)


渥美雅子 あつみ まさこ
弁護士として家族問題、遺産相続などを専門に活躍。2003年「女性と仕事の未来館」館長を務める。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』など著書多数

あなたが相続放棄すれば可能

可能です。

あなたお1人が相続人であるとのこと、そうであればあなたが相続放棄をすれば、自然に相続権は息子さん世代に移ります。

もしもあなたのお子さんが、長男だけではなく他に何人かいらっしゃるのであれば、あなたが相続放棄をした後、他のお子さんたちにも同様に相続放棄をしてもらえば、長男1人が相続人となり、家も、借金も、税金の負担もすべて長男が引き継ぐことになります。

ただ相続放棄をするにはタイムリミットがあります。ちなみに相続放棄について民法ではこんなふうに定めています。

第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(後略)

第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、始めから相続人とならなかったものとみなす。

つまりお父様の死亡後3カ月以内に、あなたが家庭裁判所に出掛けて行って相続放棄をするという申述をする。するとあなたは始めから相続人ではなかったという扱いになるので、代襲相続人としてあなたのお子さんたちが浮上してくる。そのお子さんたちのうち長男を除く他の方々が、それから3カ月以内に家庭裁判所に出掛けて行って、再び相続放棄の申述をする。これだけの手続きをすれば、長男お1人が始めから相続人であったという扱いになります。

そのような手続きをとった後、それらの資料と戸籍謄本類、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書等を添えて司法書士のところへ持っていけば、土地建物を長男の名義に変えてくれます。

それと同時に債権者にもその旨、通知してあげるのがフェアでしょう。

ただ、借金にもいろいろあり、すでに時効にかかっているものとか、一身専属的なものとか、被相続人が死亡すると借金そのものも消滅する(住宅ローンなどは債権者側で生命保険をかけておく場合が多く、債務者が死亡すると残債務が保険金から補てんされるので債務が消滅する場合が多い)ものとかありますから、その辺のところを長男さん共々よくお調べになってから債権者と対応することをお勧めします。

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