肝っ玉弁護士 がんのトラブル解決します 45

相続放棄で家は?

解決人●渥美雅子
イラスト●小田切ヒサヒト
発行:2013年7月
更新:2014年3月

  

父親が大きな負債を抱えたまま、がんで亡くなりました。残された親族は相続放棄をしたいのですが、母と私たち兄弟2人だけが放棄しても、遠い親族にも迷惑がかかるとも聞きました。音信のない親族もおり、困っています。また、今住んでいる家だけでも手放さずにいることは可能でしょうか?

(新潟県 会社員 45歳)


2013_05_20_011[1]解決人 渥美雅子 あつみ まさこ
弁護士として家族問題、遺産相続などを専門に活躍。2003年「女性と仕事の未来館」館長を務める。20405年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』など著書多数

放棄したら無理。「限定承認」という方法も

民法では相続人になる順位を次の様に定めています。

第1順位 被相続人の子

第2順位 被相続人の直系尊属

     (普通は親)

第3順位 被相続人の兄弟姉妹

そして被相続人の配偶者は常に相続人となる、とされています。第2順位の相続人は第1順位の相続人が誰もいないときに相続人になり、第3順位の相続人は、第1順位の相続人も第2順位の相続人も誰もいないときに相続人となってきます。この順位は先順位者が相続を放棄した場合も同様に扱われます。

あなた方兄弟とお母様は第1順位者ですが、その3人が放棄をすれば、次はお父様の親が相続人となり、親がいなければお父様の兄弟(あなたにとっては叔父、叔母にあたる人)たちが相続人となります。

お父様が負債を遺したまま亡くなったとすればあなた方は3カ月以内に家庭裁判所に放棄の申述をするのがいいでしょう。その結果、第2、第3順位にあたる人々も「自己の為に相続の開始があったことを知った時」から3カ月以内に同様に放棄の申述をします。こうして次々と放棄の手続をとれば誰も借金を背負い込むことはありません。ですからあなた方は自分たちが放棄をしたら、どうぞ次の順位の人たちにそのことを知らせてあげて下さい。それが親族に迷惑をかけない方法です。

今住んでいる家だけでも手放さずにいることはできないか、とのお尋ねですが、「相続放棄」というのはプラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することです。どれかひとつだけとか、一部分だけ放棄するわけにはいきません。

ただ放棄とは別に「限定承認」という制度もあります。これはプラスの財産を相続する限度においてマイナスの財産も相続する、というものです。ですから家を相続するなら家の価格の限度迄は負債も相続せざるを得ません。それでも家だけは自分たちのものにしたいとお考えなら、やはり3カ月以内に家庭裁判所にその旨の申述をして下さい。これは単純な相続放棄と違って共同相続人全員でやらなければならないとされています。

ですからあなたの場合、あなた方兄弟とお母様の意見が同じでないとできません。単純な放棄手続は個々バラバラにできますが、限定承認は全員一致でないとできません。

さあ、それを前提にご家族全員で対応策をご検討下さい。負債が営業上のものだったり、無碍に支払いを拒絶しにくいものだったりするならば、一概に単純放棄をするよりも限定承認して家を残し、それを担保に長期支払いの方法を考えるのもいいかもしれません。

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